top of page

都市経営への応用 シン都市経営 ⑥

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 8月25日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. 都市政策の視点転換

  2. 都市プレイヤーの民主化

  3. 具体的な3方策

 

 

1.都市政策の視点転換

岩尾俊兵さんが提唱する「人間性や内省を重視した経営教育」のエッセンスは、都市政策においても大いに活かせる視点だと考えます。

都市経営とは、市民一人ひとりが経営者的視点を養い、自治体や企業だけでなく多様なステークホルダーが協働して都市の価値を創造・更新していく取り組みと定義されます。

その基盤となるのが経営教育であり、市民が自ら戦略的な思考を学ぶことで、まちづくりを“自分ごと”として捉え、意思決定やアイデア創出に積極的に参画できるようになります。

また、価値創造の民主化により、地域の商店主や学生、子育て世代、高齢者など、多様な人々が専門家や行政に依存せず企画・運営に参加し、新たな都市の魅力を育むことが可能になります。

都市経営の特徴としては、トップダウンとボトムアップを掛け合わせたハイブリッド型のアプローチが挙げられます。

これは、大局的な経営戦略の視点と、現場・生活者の知恵を融合させる方法です。

さらに、経営教育を通じて得た知見を地域で実践し、そこで得られた学びを再び教育に反映させる循環を生み出すことも重要です。

「誰にとってどんな価値を目指すのか」という問いを共有し、多様な価値観を尊重しながら共創する姿勢こそが都市経営の要となります。

 

2.都市プレイヤーの民主化

このアプローチは、都市計画のプロセスにも影響を与えます。

従来のトップダウン型で制度や施策を決定するのではなく、住民一人ひとりの声を拾い、彼らがどんな思いで地域に暮らしているのかを丁寧に紡ぎ出すことが大切です。

そのためには、住民と行政、さらには民間企業やNPO、大学などの都市のプレイヤーが「共に学び、共に考え、共に成長する:民主化の仕組み」を設計する必要があります。

これは単なる協議会の設置だけにとどまらず、地域の暗黙知や伝統、失敗事例などを共有し合い、深い対話を通じて新たな合意形成を図る試みでもあります。

岩尾さんの「経営=生き方」という捉え方に倣えば、都市政策は「都市をどう生かすか」だけでなく、「そこで暮らす人々の生き方をどのように豊かにするか」を問い直す営みになるはずです。

働き方改革やコミュニティ再生、子育て支援など、都市をフィールドとする多岐にわたる課題は、すべて「人がどのように生き、共に成長できるか」という視点から眺め直すことで、新たな解決策が見えてくるかもしれません。

効率・利便性や経済効果だけでなく、人間同士のつながりや物語の重みを評価に取り込むことで、住民の帰属意識や誇りが育ち、それが地域の自信回復や持続的発展にもつながるのではないでしょうか。

 

3.具体的な3方策

このような視点をもとに、具体化方策として、下記の3つを提案します。

方策1:都市の共創空間づくり

方策2:地域の記憶と暗黙知の継承

方策3:「個」の創造力を活かせる構造

詳細は、次稿以降で述べますが、「経営教育」で培われる人間性や内省、対話を重んじる姿勢は、都市政策に新たな風を吹き込むと考えます。

都市を単なる数値目標の達成や経済の活性化のためだけではなく、「そこに生きる人々の人生をともに紡いでいく場」と捉えることができれば、多様な世代や背景をもつ人々が関わり合いながら、豊かな未来を共創する可能性が広がるのです。

日本社会の再生には、一人ひとりの物語とそこから生まれる学びや気づきを都市政策にも反映させることが欠かせないのではないでしょうか。

 
 
 

最新記事

すべて表示
関連研究の変遷 日本バリュー都市 ④

【内容】 第1章 国家ブランドとクールジャパンの萌芽(2000年代前半) 第2章 政策実装と事業化の進展(2010年代) 第3章 体験価値と定性的解像の時代(2020年代)   第1章 国家ブランドとクールジャパンの萌芽(2000年代前半) 2000年代前半、日本のブランド価値研究は「国家ブランド」という国際的な概念と連動して広まりました。 当時はグローバル競争が激化し、モノづくりだけでなく文化・

 
 
 
日本ブランドの価値 日本バリュー都市 ③

【内容】 第1章 日本ブランド価値の4象限と精神的基盤 第2章 エンゲージメント階層と「恋に落ちる」瞬間 第3章 都市に求められる役割とブランド価値の可視化     第1章 日本ブランド価値の4象限と精神的基盤 前述の報告書において日本のブランド価値は、海外ユーザーの調査において大きく4つの象限に整理されています。 第一に 「心が落ち着く体験(Calming)」 であり、自然や静けさ、余白を大切に

 
 
 
元研究の整理と確認 日本バリュー都市 ②

【内容】 第1章 調査内容とアプローチ 第2章 主な知見と発見 第3章 提言と政策的な示唆   今回の検討の元になっているのは「Japan Brand Image Research」(令和4年度 海外需要拡大事業/国際競争力強化に向けた日本ブランド力に関する調査研究事業)で、経済産業省(METI)が事業主体であり、 クールジャパン政策課 のもとで企画・実施されたものです。以下に要点を整理します。

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page