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関連研究の変遷 日本バリュー都市 ④
【内容】 第1章 国家ブランドとクールジャパンの萌芽(2000年代前半) 第2章 政策実装と事業化の進展(2010年代) 第3章 体験価値と定性的解像の時代(2020年代) 第1章 国家ブランドとクールジャパンの萌芽(2000年代前半) 2000年代前半、日本のブランド価値研究は「国家ブランド」という国際的な概念と連動して広まりました。 当時はグローバル競争が激化し、モノづくりだけでなく文化・イメージの重要性が認識されるようになりました。特に「クールジャパン」という表現が政策言説に登場し、日本のアニメ、マンガ、ファッション、食文化などが国の競争力を高めるソフトパワー資源として注目されました。首相官邸や経済産業省の知財戦略では、文化を知的財産として位置づけ、国家戦略の柱に据える試みが始まりました。 ここでの議論は、まだ「概念」や「方向性」の域を出ていませんでしたが、日本ブランドを文化と結びつけて語る基盤が整った時期といえます。 第2章 政策実装と事業化の進展(2010年代) 2010年代に入ると、「日本再興戦略」や2013年のクールジャパン機構
18 分前読了時間: 3分
日本ブランドの価値 日本バリュー都市 ③
【内容】 第1章 日本ブランド価値の4象限と精神的基盤 第2章 エンゲージメント階層と「恋に落ちる」瞬間 第3章 都市に求められる役割とブランド価値の可視化 第1章 日本ブランド価値の4象限と精神的基盤 前述の報告書において日本のブランド価値は、海外ユーザーの調査において大きく4つの象限に整理されています。 第一に 「心が落ち着く体験(Calming)」 であり、自然や静けさ、余白を大切にする文化が生み出す安心感です。 第二に 「遊び心ある多様な体験(Playful)」 で、マンガやアニメ、ゲームをはじめとした創造的で自由な文化に象徴されます。 第三に 「健康的な暮らし(Healthy Living)」 で、食習慣や身体活動、長寿文化が支持されています。 第四に 「丁寧な暮らし(Careful Living)」 で、細部までこだわり抜いた職人技や日常の規律性が評価されています。 さらに、これらの象限を支える深層には「日本的精神性」が存在します。 禅に代表される静謐の美学、アニミズム的な自然観、そして「未完の美」に象徴される余白を残す価値観
3 日前読了時間: 3分
元研究の整理と確認 日本バリュー都市 ②
【内容】 第1章 調査内容とアプローチ 第2章 主な知見と発見 第3章 提言と政策的な示唆 今回の検討の元になっているのは「Japan Brand Image Research」(令和4年度 海外需要拡大事業/国際競争力強化に向けた日本ブランド力に関する調査研究事業)で、経済産業省(METI)が事業主体であり、 クールジャパン政策課 のもとで企画・実施されたものです。以下に要点を整理します。 第1章 調査内容とアプローチ この調査は、海外都市における日本ブランドへの評価を「生活者の視点」から深く理解し、今後のブランド価値拡大のための知見を得ることを目的としています。 具体的には、ロンドン、ベルリン/パリ、ニューヨーク、シンガポールという世界の主要都市5拠点を対象に、専門家インタビュー(エキスパート)、ユーザーヒアリング(現地生活者)、現地施設の観察(サイトビジット)、SNS・オンライン上のビジュアル調査などを組み合わせて実施されています。 さらに、定性調査の成果を基に、将来的な量的調査(アンケート等)で測定すべき指標・調査項目も提案されており
5 日前読了時間: 4分
なぜ今日本バリューなのか? 日本バリュー都市 ①
【内容】 第1章 国際的な日本バリューの追い風と都市開発の接続性 第2章 体験価値志向と日本文化の親和性 第3章 観光・就労・居住のハイブリッド時代における都市の役割 第1章 国際的な日本バリューの追い風と都市開発の接続性 近年、都市開発の文脈で「日本のブランド価値(=日本バリュー)」を活用することの有効性が一層高まっています。 その背景には、 まず国際社会における日本の評価の上昇があります。 Anholt-Ipsos Nation Brands Index 2023 では、日本が初めて総合1位を獲得しました。これは「信頼できる国」「独自性を持つ国」としてのイメージが世界的に確立されたことを示しており、都市開発においても大きな“下駄”を履ける状況にあります。 都市間競争が激化する中で、開発の担い手は単なる不動産価値の向上だけでなく、「日本という国民ブランドの力」を戦略的に活かすことができるのです。 さらに 注目すべきは、ブランド価値が「都市」というスケールで最も体感されやすい点です。 国際的に訪れる人々にとって、街の景観や施設は日本の信頼性や
12月22日読了時間: 4分
共体験の未来 共体験デザイン ⑩
【内容】 第1章 都市の日常が「共体験」で彩られる未来 第2章 個人と都市が結びつき、多様性が溶け合う未来 第3章 文化と経済が循環し、都市ブランドが共体験で定義される未来 第1章 都市の日常が「共体験」で彩られる未来 これからの都市は、ただの移動空間や消費の場ではなく、「常に誰かが何かを共にしている舞台」として姿を変えていきます。 駅前広場や商業施設の前のスペースは、これまで通過点として扱われることが多かった場所ですが、未来の都市ではそこが人々の共体験の場へと変化します。 例えば、朝には市民が集まってヨガを行い、昼にはフードシェアを通じて多様な料理を囲み、夜には小規模コンサートや一斉乾杯イベントが催されます。 こうした活動は特別な祭りや記念日だけでなく、日常的に繰り返されます。 その結果、市民や訪問者は「今日はどんな共体験があるだろう」と期待を抱いて街に足を運ぶようになり、都市の暮らしそのものが祝祭性を帯びるのです。 このような都市の日常化された共体験は、住民同士の顔見知り関係を生み、孤立や分断を防ぐ効果もあります。 人々が自然に関わり合う
12月19日読了時間: 4分
共体験デザインの効果 共体験デザイン ⑨
【内容】 第1章 共体験がもたらす社会的・心理的効果 第2章 共体験がもたらす経済的・文化的効果 第3章 共体験がもたらす都市ブランド・政策的効果 第1章 共体験がもたらす社会的・心理的効果 都市における共体験の最も大きな効果は、社会的な結束を育む点にあります。 広場やマイクロ・パブリックのような小さな共体験スポットは、日常的に人々が顔を合わせ、自然に会話を交わすきっかけを提供します。エリック・クリネンバーグが指摘するように、こうした場は「社会インフラ」として機能し、災害時には助け合いや高齢者の見守りにつながります。 孤立や分断が課題となる現代の都市において、共体験は社会的な安全網の役割を果たすのです。 また、共体験は多文化共生を促進します。 シェアテーブルや共食プログラムは言語や文化の壁を越え、人々が自然に交流する環境をつくります。都市研究者アッシュ・アミンが提唱した「マイクロ・パブリック」が街の中に点在すれば、異なる文化的背景を持つ人々が日常的に接触し、相互理解を深めるきっかけとなります。 心理的な側面でも効果は顕著です。Shteynbe
12月17日読了時間: 4分
方策3:マイクロパブリック 共体験デザイン ⑧
【内容】 第1章 マイクロ・パブリックの基本発想 第2章 具体的な仕掛けと設計要素 第3章 実装プロセスと効果測定 第1章 マイクロ・パブリックの基本発想 都市の開発や再生において注目されているのが、街区の中に「小さな共体験スポット」を配置するという考え方です。 これは「マイクロ・パブリック」と呼べる取り組みであり、大規模な広場や再開発のような華やかなプロジェクトではなく、街のあちこちに小規模で親しみやすい場を点在させることを狙いとしています。 この考え方の基本には二つの特徴があります。 一つは「多文化・多世代が自然に混ざる仕掛けをつくること」です。 都市は多様な人々が行き交う場所であり、世代や国籍を問わず一緒に過ごせる小さな空間が求められています。 もう一つは「小規模改修や低コスト施策から始められること」です。 つまり、大きな開発投資を待たずに、仮設ベンチやシェアテーブルの設置といった身近な取り組みから始められる柔軟性を持っているのです。 マイクロ・パブリックの導入は、都市を「豪華な箱もの」で彩るのではなく、誰もが気軽に立ち寄り交流できる「
12月15日読了時間: 4分
方策2:共体験アーカイブ&データ還元 共体験デザイン ⑦
【内容】 第1章 共体験アーカイブ & データ還元の基本発想 第2章 共体験アーカイブの具体的要素 第3章 効果測定と都市開発への意義 第1章 共体験アーカイブ & データ還元の基本発想 都市は単なる建築物や交通の集積ではなく、人々が日常やイベントを通じて共に体験し、その記憶を積み重ねていく舞台です。 近年の都市開発では、この「共体験」をどのように記録し、再提示していくかが重要なテーマとなっています。 その背景には二つの流れがあります。 一つは「関与型消費」へのシフトです。 人々は体験を一度きりで終えるのではなく、自らの参加を可視化し、記録し、再び振り返ることに価値を感じています。 もう一つは「データ活用」の進展です。 共体験の発生をデジタルで捉えることにより、スポンサーや行政に対して都市空間の価値を具体的に提示できるようになってきました。 この考え方を整理したものが「共体験アーカイブ & データ還元」という仕組みです。 都市で生まれる共体験を記録・蓄積し、訪問者自身に還元すると同時に、そのデータをスポンサーや地域に提供することで、経済的・社
12月12日読了時間: 4分
方策1:共体験広場 共体験デザイン ⑥
【内容】 第1章 共体験広場プログラム化の基本発想 第2章 共体験広場の具体的なデザイン要素 第3章 効果測定と広場の価値創出 第1章 共体験広場プログラム化の基本発想 これまで広場や駅前空間、商業施設の共用部は「人が集まる場所」として位置づけられてきました。しかし近年の都市開発においては、単なる集客空間ではなく「人が共に過ごし、体験を分かち合う場」への転換が求められています。 言い換えれば、広場を「イベント開催地」ではなく「共体験が日常的に生まれる舞台」として設計することが重要になっているのです。 この背景には、モノの消費からコトの消費へと価値観が移行し、人々が都市に求めるものが「何を買うか」よりも「誰とどんな時間を過ごすか」に変わってきたことがあります。 したがって、広場は「特別な日だけ訪れる場」ではなく、「いつ来ても誰かと何かを共有できる場」であることが望まれます。 共体験広場のプログラム化は、都市を「滞在と交流の舞台」へと進化させる基本方針なのです。 第2章 共体験広場の具体的なデザイン要素 共体験広場を実現するためには、いくつかのデ
12月10日読了時間: 4分
基本方針 共体験デザイン ⑤
【内容】 第1章 「共体験デザイン」の視点 第2章 「共体験デザイン」の基本方針 第3章 「共体験デザイン」の具体化方策 第1章 「共体験デザイン」の視点 都市開発において「共体験」を軸にした計画を進めるためには、空間・社会・時間・経済という四つの視点から捉えることが重要です。 ⑴空間の視点 都市の価値は「建物」そのものではなく、「建物と建物の間に生まれる生活」に宿ります。ベンチや段差、可動椅子、食の屋台やテラス席、緑や光といったデザイン要素は、人々の滞在を促し、偶然の出会いや会話を生み出します。 したがって都市開発では、移動のための通過空間を「滞在と交流の場」へ転換することが求められます。 ⑵社会の視点 共体験は人と人の相互作用によって成立します。多文化や多世代が自然に混ざり合える仕掛けを都市のプログラムに取り入れることが鍵となります。 共食や共同制作、音楽や乾杯のような同期的アクティビティは、異なる背景を持つ人々を結びつけ、都市の文化を豊かにします。 ⑶時間の視点 一過性の大型イベントだけでは都市に根づく共体験は生まれません。むしろ毎
12月8日読了時間: 4分
共体験の課題 共体験デザイン ④
【内容】 第1章 都市開発における「共体験」研究の現在地 第2章 都市開発における共体験研究の課題 第3章 展望に向けた問いと今後の方向性 第1章 都市開発における「共体験」研究の現在地 「共体験(Co-experience)」はもともとHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)の分野で定義された概念ですが、現在では都市デザイン、社会学、文化研究、心理学など幅広い領域で活用されています。 都市開発の実務においては、Whyte や Gehl の公共空間観察研究と接続し、「空間やプログラムをどう設計すれば人々が自然に共体験を生むのか」という問いが中心になっています。 さらに今日では、共体験は単なる心理的な現象ではなく、都市の価値を測る指標のひとつとして位置づけられています。 体験経済やプレイスメイキングの潮流により、共体験は都市ブランドを高め、経済的な効果を生み、同時に社会的包摂を評価する基準としても注目されるようになりました。 特にスマートシティ技術やSNS分析の進展によって、共体験の発生を可視化し、定量化することが可能になりつつあり
12月5日読了時間: 4分
共体験研究の変遷 共体験デザイン ③
【内容】 第1章 共体験研究の萌芽と概念の確立 第2章 共体験の社会的接合と都市研究への展開 第3章 共体験の測定・検証と都市開発への統合 第1章 共体験研究の萌芽と概念の確立 都市開発における「共体験」の研究は、1960年代から80年代にかけて、公共空間における人々の行動観察から始まりました。 ウィリアム・ホワイトの『The Social Life of Small Urban Spaces』(1980)は、小さな広場や街角に人が集まる理由を映像記録し、日照や椅子、食の存在、偶然の出会いが人々を引きつけることを示しました。 また、ヤン・ゲールは『Life Between Buildings』(1971/英訳1987)において、都市の価値は「建物そのもの」ではなく「建物の間に生まれる生活」にあると強調しました。 この時期には「共体験」という言葉自体はまだ使われていませんでしたが、人々の偶発的な交流や短い会話が都市の魅力を形づくることが強調されており、共体験の原型を抽出する研究が積み重ねられたのです。 1990年代から2000年代初頭にかけ
12月3日読了時間: 4分
共体験の定義 共体験デザイン ②
【内容】 第1章 「共体験」とは何か 第2章 都市開発における共体験の広がり 第3章 都市開発での実践方法 第1章 「共体験」とは何か 「共体験(Co-experience)」とは、複数の人が同じ時間や場所で体験を分かち合い、その中で互いに感情や意味を育てていくことを指します。 例えば、一人で食事をするのと、友人や家族と一緒に食事をするのとでは、同じ料理でも感じ方が違います。 それは、周りの人とのやりとりが体験の意味を変えるからです。 学術的にも、共体験は「体験が個人の中だけにとどまらず、他者との関わりを通じて深まっていくもの」と定義されています。 つまり都市における共体験とは、単なる「個人の楽しみ」ではなく、「人と人がつながり、記憶や価値を共有するプロセス」だと定義できるのではないでしょうか。 第2章 都市開発における共体験の広がり 都市の中で共体験を考えるとき、大きく4つの要素が重要になります。 ①空間性 広場、公園、フードホールなど、 人が同じ場所に集まれる空間が必要です。 場所を共有することで「同じ時間を過ごしている」という実感が生ま
12月1日読了時間: 3分
今なぜ 共体験なのか? 共体験デザイン ①
【内容】 第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 第2章 経済的・技術的背景からみる共体験デザインの価値 第3章 多様性・実務性を踏まえた都市開発の新たなインフラ 第1章 社会的背景と都市における共体験の必要性 現代の都市は、人の数こそ多いものの、匿名性が強まり個人は孤立しがちです。 都市生活者の多くは、道を行き交う群衆の中で互いに接触することなく、ただ通過していく日常を過ごしています。 都市研究者ヤン・ゲールやウィリアム・ホワイトが強調する「建物の間の生活(Life Between Buildings)」は、今や失われつつあり、広場や街路といった公共空間も人と人をつなぐ場ではなく「移動の通り道」と化しています。 しかしエリック・クリネンバーグが『Palaces for the People』で指摘するように、図書館や公園などの“出会いの場”は地域の絆やレジリエンスを高め、都市の安全性や持続性を支える重要なインフラになっています。 つまり、分断や孤立が進む時代において、都市開発が目指すべきは単なる建築物の整備ではなく、共体験を生み
11月28日読了時間: 4分
AI共創オフィスが拓く未来 ─ 人とAIが“共に働く”社会のビジョン AI共創オフィス ⑩
【内容】 第1章:オフィスの役割は「作業場」から「意味場」へ 第2章:企業文化が“見えないOS”として浮上する 第3章:本社とサテライトの分担による「立体的オフィス戦略」 第1章:オフィスの役割は「作業場」から「意味場」へ かつてオフィスは、社員が集まり、情報をやり取りしながら仕事を進める「作業の場」でした。しかし、AIが高度に発達し、検索・提案・要約・意思決定の一部を代替するようになった今、人が集まることの意味が根本的に変わりつつあります。 特に、 AIによる「優秀な常識人の標準答案」の量産 が進む中で、企業間の差がつきにくくなっています。この均質化の時代においては、 「なぜそれを選ぶのか」「どのような意味を込めて判断するのか」という人間特有の解釈力と文化的文脈が重要な差異要因 となります。 そのため、オフィスは単に情報処理や会議をする場所ではなく、「企業文化を体感・再認識し、意味を共有しながら判断を行う空間=意味場(place of meaning)」へと進化する必要があるのです。 第2章:企業文化が“見えないOS”として浮上する
11月26日読了時間: 3分
戦略③:企業文化の拡張を担うサテライトオフィス AI共創オフィス ⑨
【内容】 第1章 サテライトオフィスの再定義が求められる背景 第2章 サテライトオフィスが担うべき2つの新機能 第3章 街の中ににじむ「文化と共創の拠点」へ 第1章 サテライトオフィスの再定義が求められる背景 近年、リモートワークや駅ナカワークスペースの普及により、オフィスは「仕事をする場所」から「意味を共有する場所」へとその役割が変わりつつあります。 AIの活用が進むことで、物理的に集まる必要性はますます薄れてきました。しかし同時に、AIには再現できない「文化的共感」や「判断の文脈」が、組織において一層重要になってきています。 このような環境変化の中で、これまで本社の補完機能とされてきたサテライトオフィスの役割も、大きく進化する必要があります。 単なる作業の分散拠点ではなく、「企業文化の拡張点」かつ「AIとの共創空間」として位置づけ直すことが、今後の戦略的なオフィス設計の鍵となるのです。 第2章 サテライトオフィスが担うべき2つの新機能 サテライトオフィスには、次の2つの機能を掛け合わせることが求められます。 ① AIと人間の共創を
11月21日読了時間: 3分
戦略②:企業文化を醸成・継承するオフィス─ 企業文化を形式知に変えるオフィスづくり AI共創オフィス ⑧
【内容】 第1章 なぜ今、企業文化の「意味共有空間」が求められるのか 第2章 意味共有空間の3つの設計要素 第3章 文化がにじみ出す日常を設計する 第1章 なぜ今、企業文化の「意味共有空間」が求められるのか リモートワークやフリーアドレスの浸透により、私たちの働き方はここ数年で大きく変化しました。 どこでも仕事ができる便利な時代になった一方で、オフィスという「場」が担っていた目に見えない価値――つまり企業文化の共有や共感の機会が希薄になりつつあります。 企業文化とは、その会社らしい価値観や判断基準、行動様式のことで、日々の挨拶や言葉遣い、会議の進め方、意思決定のクセなど、組織内に無意識に染み込んだ「らしさ」そのものです。 これまでオフィスという物理空間は、企業文化の醸成と伝達において重要な役割を果たしてきました。 社員同士の雑談や表情の変化、廊下ですれ違う瞬間の空気感の中に、言語化されない文化が息づいていたのです。 しかし、分散ワークによってこうした“にじみ出る文化”は可視化されにくくなっています。 結果として、企業理念や価値観を共有しに
11月19日読了時間: 4分
戦略①:共創インフラとしての空間設計 ─ 人間とAIの知的対話を支える“場”のつくり方 AI 共創オフィス ⑦
【内容】 第1章 なぜ今、「AI共創オフィス」が必要なのか 第2章 AIとの共創を実現する3つの空間設計 第3章 共創を支えるデザインとインフラの工夫 第1章 なぜ今、「AI共創オフィス」が必要なのか 生成AIの進化とともに、私たちの働き方や意思決定のプロセスは大きく変わりつつあります。 AIが提案するのは、過去の知識や統計に基づく「整合的で常識的な回答」です。非常に優秀で実用的ではありますが、どの企業でも似たようなアウトプットになりやすく、意思決定が標準化・没個性化するリスクをはらんでいます。 一方、オフィスワークの分散が進む中でも、企業オフィスの価値が見直されています。 もはやオフィスは「作業をする場所」ではなく、「人とAIが共に問い、意味をつくり出す場所」へと再定義される必要があります。 こうした背景から、AIを活用しながらも人間らしい創造性を引き出すための「AI共創オフィス」という新たなオフィス機能が求められているのです。 第2章 AIとの共創を実現する3つの空間設計 AI共創オフィスには、大きく3つの機能ゾーンがあります。そ
11月17日読了時間: 3分
基本的な視点と三つの戦略 AI共創オフィス ⑥
【内容】 第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 第2章 AI時代の競争力を支える「企業文化」という内的OS 第3章 AI×文化の共創拠点としての企業オフィスとサテライトオフィスの連携 第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 生成AIの進化とリモートワークの定着により、私たちの「働く場所」の概念は大きく変わりました。 業務の多くはオンラインで完結でき、駅ナカや自宅、カフェなどでの作業が一般化しています。このような状況下で、従来の企業オフィスの「集まって仕事をする場」という役割は大きく変容しつつあります。 一方で、すべての仕事がどこでも完結するわけではありません。 AIによって情報と作業が平準化されるほど、むしろ人間にしかできない意味づけ・共感・文化の共有といった活動の価値が浮かび上がります。 そうした“非定型で人間的な営み”にこそ、企業オフィスの再定義が求められているのです。 第2章 AI時代の競争力を支える「企業文化」という内的OS AIの提案は非常に優秀で合理的ですが、それゆえにどの企業も“似たような意思決
11月10日読了時間: 3分
AI時代における企業オフィスの課題と方向性 AI共創オフィス ⑤
【内容】 第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 第2章 意思決定の“軽さ”がもたらす成長の喪失 第3章 “唯一無二”の判断軸を生むのは、企業文化である 第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 現代は、AIの進化とリモートワークの普及によって、私たちの意思決定のあり方が大きく変化しています。 とりわけAIは、「優秀な常識人の標準答案」とも言うべき、整合的で倫理的かつ網羅的な回答を高速で提示できるようになりました。誰が使ってもそれなりの答えが得られるこの特性は、業務効率やリスク回避の面では非常に有効です。 しかし一方で、これまで人が担ってきた「問いを立てる」「覚悟をもって決断する」「他と違う選択肢を取る」といった、思考の“重み”が軽減されつつあります。 Google検索によって“選ぶ”ことに慣れ、さらにAIによって“承認・追認”するだけで事足りるようになることで、意思決定は「軽く・速く・無難に」なってきました。 このような状況が組織に蔓延すると、社員は自ら考えることをやめ、AIの提案を鵜呑みにする傾向が強まります。...
11月7日読了時間: 3分
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