地方拠点駅ビルの現状と可能性 ローカルリンクステーション ⑤
- admin
- 9月17日
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地方拠点駅ビルの現状と可能性 ローカルリンクステーション⑤
【内容】
【第1章】 かつての「顔」が、いま苦境に
【第2章】 駅ビル苦境の背景
【第3章】 駅ビルの「再定義」が不可避に
【第1章】地方拠点駅ビルの現状:かつての「顔」が、いま苦境に
地方主要都市の中心駅に直結する駅ビルは、かつて“その街の玄関口”としてにぎわいを見せ、通勤・通学・買い物・観光と、多様な利用者が行き交う商業のハブとして機能していました。
しかし近年、こうした駅ビルの集客力は確実に低下しています。
館内を見渡せば、空き区画が目立ち、物販テナントの撤退が相次ぎ、飲食ゾーンですら活気を欠く様子が目立ちます。
コロナ禍を経てピーク時と比較して、乗降客数が1〜2割減少しているケースも多く、賑わいが戻りきらないまま推移しているのが実情です。
また、館の老朽化が進む一方で、内装更新や業態刷新のスピードは都市部に比べて遅く、魅力的な新規テナントの誘致が困難になっている点も指摘されています。
【第2章】 駅ビル苦境の背景
地方駅ビルの不振は、一過性の現象ではなく、複数の構造的要因が複雑に絡み合った結果といえます。代表的な要因は以下の3つです。
① 郊外型商業施設の台頭とクルマ社会の再強化
地方都市では、自家用車利用が日常生活の基本となっており、郊外に立地する大型ショッピングモールが圧倒的な集客力を誇っています。
広大な駐車場を備え、ファッション・グルメ・映画・家電・スーパーが揃うモールは、「1日中楽しめる消費空間」として存在感を増しています。
これに対して、駅前に位置する駅ビルは、駐車場の不便さや施設規模の限界から、比較優位を失いつつあるのが現実です。
② 駅利用者数の減少と通勤スタイルの変化
コロナ禍をきっかけにテレワークが浸透し、「駅を毎日使う生活」そのものが変化しました。
地方都市でも在宅勤務やハイブリッド勤務が一般化することで、駅の通勤需要は元に戻らず、駅ビルの「ついで利用」も減少傾向にあります。
また、地方の若年層の流出や高齢化の進行も、駅周辺の賑わい減少に拍車をかけています。
③ 消費ニーズと駅ビル機能のミスマッチ
現代の消費者は「体験」「共感」「ストーリー性」を求める傾向が強くなっています。
これに対し、多くの地方駅ビルは依然として物販中心・従来型のテナント構成にとどまり、飲食やサービスの領域でも目新しさに欠けています。
また、施設全体のデジタル対応や、SNS時代に即した仕掛けが弱く、若年層の心をつかめないという課題も浮き彫りになっています。
【第3章】 駅ビルの「再定義」が不可避に
今後、地方駅ビルは単なる商業施設という役割を越えて、「地域の価値を編集・発信する拠点」への進化が求められると予想されます。
物販だけに頼らず、地元食材の魅力を生かした飲食体験、伝統工芸や地場産業と連携した展示・販売・ワークショップ、地域のプレイヤーとの共創による文化発信など、駅ビルが果たすべき役割は多岐にわたります。
また、単なる「買う場」から「滞在・交流・創造の場」へと機能転換を図ることができれば、駅という立地の強みを再び活かすことも可能です。
地元の人が集い、訪れる人が地域を深く知るための“ハブ”としての駅ビル再定義は、今後の方向性として不可避といえるでしょう。
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