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地方と都市の課題をマッチング ローカルリンクステーション ⑥

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 9月19日
  • 読了時間: 4分

【内容】

第1章:交わりつつある「地方の危機」と「都市の資源」

第2章:マッチングが進まない3つの理由

第3章:マッチングに向けた3つの課題

 

 

第1章:交わりつつある「地方の危機」と「都市の資源」

日本では現在、二つの大きな社会的課題が進行しています。

ひとつは、地方における深刻な後継者不足です。中小企業や老舗商店、町工場では、高齢の経営者が後継者を見つけられないまま廃業に追い込まれるケースが増加しています。

実際、2024年には福島県や群馬県などJR東日本管内の各地域で、黒字経営のまま閉店を選ぶ事業者が相次ぎました。これは単なる経済損失にとどまらず、地域の雇用・文化・産業が同時に失われていくことを意味します。

もうひとつの課題は、都市部における「高スキル退職者」の力の未活用です。

毎年数十万人の規模で、大企業や官公庁から豊富な知見と経験を持った人材が定年退職を迎えています。健康寿命が延び、彼らにはなお10〜15年の社会的活躍の余地がありますが、その多くが「役割がない」「貢献の場がわからない」と感じながら、力を持て余しています。

本来であれば、この二つの課題は補完関係にあります。

地方には“知恵の担い手”が必要であり、都市には“役割を求める人材”が余っています。両者がうまく接続されれば、地域再生と個人の自己実現が同時に達成できるはずです。

 

第2章:マッチングが進まない3つの理由

理屈としては整合性があるこのマッチングですが、現実にはなかなか進展していません。その背景には、制度・意識・文化の3つの障壁が存在します。

第一に、制度の不在または不十分さです。

現在、全国に「事業承継・引継ぎ支援センター」や「地域人材バンク」などが整備されつつありますが、都市部の退職者と地方の企業を広域的・実務的につなぐ仕組みとしてはまだ発展途上です。

そもそも、事業承継の相手として「第三者」や「都市部の元企業人」を想定していない中小企業も少なくありません。

第二に、スキルのズレと現場感覚のギャップがあります。

都市部の退職者は、経営企画・人事・財務などの管理部門出身者が多く、地方の現場で求められるのは「営業力」「顧客対応力」「機械の前に立つ技術」など、より泥くさい領域である場合が多々あります。

その結果、「自分の知見が本当に役に立つのか」という不安や、「思ったより通用しない」という違和感が生まれることがあります。

第三に、双方の心理的な距離も大きな障壁です。

高スキル退職者の側には、「どこで、どんな形で、誰に貢献できるのか分からない」という迷いがあり、地方側には「敷居が高い」「どう関わってもらえばいいのか分からない」という戸惑いがあります。

お互いが“声をかけにくい”“踏み出しにくい”状態のまま、機会が流れていくのです。

加えて、既存のシルバー人材センターの仕事とのミスマッチも顕著です。

高スキル退職者の多くは、「書類整理」「草むしり」などの作業よりも、「相談される役割」や「知見を活かす場」を求めています。

しかし、今の制度ではそのような“知的貢献型の役割”が体系的に用意されていないため、多くが登録しても稼働しないまま埋もれてしまっています。

 

第3章:マッチングに向けた3つの課題

このように、地方の後継者不足と都市の高スキル退職者の潜在力は、本来相性のよい組み合わせでありながら、現状では制度・感覚・関係性の面で“かみ合っていない”のが実情です。

今後、これらのマッチングを機能させるには、少なくとも次の3つの課題に取り組む必要があります。

1つ目は、制度・場の設計です。

地域と都市を結ぶ広域的な人材マッチング機能、特に非親族による承継や短時間型の支援参加を支える柔軟な制度設計が不可欠です。現状の「雇用」や「業務委託」に限定された仕組みではなく、「越境的な学び合い」や「限定的な顧問参加」のような多様な関わり方が求められます。

2つ目は、関係性のデザインです。

単に人材を配置するのではなく、尊重と信頼を前提とした関係性づくりが必要です。そのためには、退職者と地域との間に立つ“コーディネーター”や“翻訳者”の存在が重要となります。

3つ目は、本人側の意識変容を支援する仕掛けです。

過去の肩書きから脱却し、「今、誰に、どう役立つか」を再定義できるようなワークショップやリフレクションの場が求められます。名刺のない場所で、自分の価値を語れるようになることが、新たな役割への第一歩です。

以上のような課題を乗り越えることで、はじめて“地方の存続”と“都市の知恵の活用”という二つの目標は交差し、新しい社会のかたちをつくっていけるのではないでしょうか。

 

 
 
 

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