今 なぜ 岩尾俊平なのか? シン都市経営 ①
- admin
- 8月8日
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【内容】
日本社会の生きづらさ
「経営」発想の重要性
「どん底」からの実践経験を持つ岩尾さん
1.日本社会の生きづらさ
慶応義塾大学商学部准教授の岩尾俊平さんの著書「経営教育」は、「誰もが『みんな苦しい』の謎」という問いかけから始まっています。
誰かが楽をしているわけではなく、「みんな苦しい」。
経営者も従業員も、高齢者も若者も、男性を女性も。。。。
実際、経営者の方々は毎晩のように資金繰りの悪夢にうなされ、厚生労働省の自殺死亡統計における「管理的職業従事者」の自殺率が非常に高いことも、その苦悩を示す一端といえます。
一方で、従業員の多くは理不尽な上司に振り回され、給料も上がらず、働きがいを見いだせずに搾取されているとまで感じているケースもあるようです。
さらに、現役世代は多くの実質的な税収負担を強いられて将来を悲観する一方、日本経済を支えてきた高齢者は「早く退場してほしい」といった風潮に傷ついています。男性は逃げ場のない働き方を強いられ、女性も周囲の無理解に苦しむなど、誰もが追いつめられがちな状況にあるといいます。
こうしたなか、経営者が「従業員は気楽でいいよな」と考えるようになると、従業員の給料を引き上げる発想にはなかなか至りません。そのうえ「どうせサボるに違いない」という疑いから監視や管理を強化する傾向が高まれば、結果として従業員側の困窮も深刻化していくことになります。
まるで利害関係者が敵対し合う構造が定着してしまったかのようですが、そこには「価値あるものはそう簡単には創れない」だから「誰かから奪うことでしか豊かになれない」という思い込みがあるのではないか、というのが岩尾さんの指摘です。
2.「経営」発想の重要性
「価値あるものは無限に創造できる」という信念を持てたならば、経営者、従業員、顧客、株主、銀行、政府などの利害関係者を「価値を創り合う仲間」と見なすことができるはずです。
そのように考える企業は、ヒト重視で共に成長できる人材を大事にし、知識と知恵の源泉である人間を尊重するために取締役会も能力を基準に編成し、利害関係者との関係を守るために法令や社会規範を厳格に守ろうとします。
さらに建設的なコミュニケーションを求めて情報開示にも積極的になり、ムダな書類や会議は廃して不正を最大の害悪とみなすことで、公明正大な組織づくりに励むでしょう。
そうした組織であればあるほど、「互いに価値を創る仲間」であるという信頼感が高まり、さらに大きなイノベーションへとつながっていくのではないでしょうか。
岩尾さんは、経営とは「他者と自分とを同時に幸せにする道を見つけ出す価値創造」であると定義しています。
ブランド品を買うか買わないかの争いは、単なる「家計の奪い合い」に過ぎません。しかし、誰もが同じ目的を持つ「仲間」なのだと気づけば、そこに新たな創造の余地が広がります。
経営とは会社の中だけにとどまらず、家庭や友人関係など、あらゆる共同体。社会を豊かにしていく試みなのです。
3.どん底からの実践経験を持つ岩尾さん
著者である岩尾俊平氏の経歴をご紹介いたします。
岩尾氏は現在、慶應義塾大学商学部准教授であり、専門はビジネスモデル・イノベーション、オペレーションズ・マネジメント、経営科学など多岐にわたります。
決してエリート街道を歩んできたわけではなく、むしろ「ドン底」から這い上がったと言える経歴です。
1989年に佐賀県有田町で生まれ、幼少期は比較的豊かな家庭環境で過ごしたものの、父親の事業失敗によって高校進学を断念せざるを得なくなりました。
中卒で単身上京し陸上自衛隊に入隊。その後は肉体労働等に従事ながら高卒認定試験(旧・大検)を経て大学に進学します。
大学でも学問と生活費の両立のために、個人事業主として医療用ITおよび経営学習ボードゲーム分野で起業し、大学院で法人登記しています。
研究活動とビジネス活動の二刀流で、慶應義塾大学商学部卒業、東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程を修了し、東京大学初の博士(経営学)を授与されたという実績をお持ちです。
明治学院大学や東京大学大学院での研究・教育活動を経て現職に至り、現在は大学教員としての活動と会社再建実務家としての取り組みを両立されている方でもあります。
このように実践経験を積み上げてきた岩尾さんだからこそ、彼が説く「経営教育」には、非常に説得力があるのではないでしょうか?
本シリーズでは、岩尾さんの「経営教育」を起点にして、「シン都市経営」を検討していきたいと思います。
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