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都市公園の未来 ③ 公園の歴史と変遷

公園の歴史を振り返ってみると、その起源とされるのはイギリスのバーケンヘッド・パークで、1847年に急激な人口増加に対応するための都市計画の一環として開発されました。イギリスでは市民革命を通じて、「公園」という概念が形成されます。市民が持つべき当然の権利として、「心身共に衛生的な環境での生活」が主張され、それまでの貴族の私的な領地であった狩猟用の土地が公衆に開放されます。これによって利用者は制限と制約がなく、平等に公園を利用する機会を得た訳で、公園は近代社会化の証といえます。

一方日本では、明治6年に「人々が楽しめる場として、公園にふさわしい土地があれば申し出るように」という太政官布達が公布されました。これによって寛永寺(上野公園)増上寺(芝公園)の境内などが、日本初の公園に指定されます。1956年の都市公園法の制定によって「都市公園」の設置と管理の方針が明確化され、整備目標も設定されます。現在に至るまで日本の公園はこの都市公園法をベースに整備されてきました。

国が主導しながら、欧米諸外国並みの公園数・公園面積の確保が目標として定められ、児童公園(現在の街区公園)にはすべり台、ブランコ、砂場の「三種の神器」が整備され、1960年当初3500箇所程度だった都市公園は、現在では10万箇所を超えています。

公園の「量の整備」が進められる一方で、公園整備・管理の主体は国から地方自治体に移行します。これに従い各地域の特性や課題に対応して公園の役割は多様化し、安全・安心への意識の高まりを基本に、複合遊具や防災対応器具、高齢者対応の健康器具など、公園設備もより多様化し高機能なものが求められるようになります。

少子高齢化が加速し、財政課題を抱える自治体が増え、公園の整備や維持管理の予算も厳しくなってきました。公園の量として一定のストックがなされてきたことを踏まえ、2017年に都市公園法が改正され、これまで整備してきた公園を「質の重視」にシフトしながら、柔軟に使いこなしていくために、市民や民間企業の力を積極的に活用する方針に転換されました。

10万箇所あまりの都市公園の8割は、小規模な街区公園が占めています。この街区公園を地域の課題解決の機会として生かしていこうとしています。従来のように受け身ではなく、地域社会で公園を作り、支えるために主体的に関わっていく、地域の共創舞台としての公園運営が求められているのです。

「民度」という言葉は好きではありませんが、共同体(社会)における権利と責任をバランスさせる能力水準だとすると、民度によって公園のゴールは大きく変わってくるのです。これを高次・積極的にバランスさせ、自己実現と生活の質の向上につながる舞台にするのか?疑心・消極的にバランスさせ、誰も何もできない空地にするのか?は、近隣住民次第です。「最もソフトな公共空間として、公園は民主主義の鑑」と言えるかも知れません。




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