医療モールは膨張する医療費の削減策、及び限られた大病院と過剰な零細クリニックからなる日本の医療システムの溝を埋める存在として期待されました。
2000年代に第一次ブームとして、郊外の土地有効利用の観点から医療モールが大量に供給されましたが、立地選定や事業見通しの甘さから淘汰・撤退が相次ぎブームは終焉を迎えました。今回の第二次ブームですが、都心の土地利用上のニーズの変遷が大きく影響していると言えます。今回の都心型医療モールの進展には、モータリゼーションの進展により、市街地のスプロール化と都心部商業の衰退を招き、駅を中心としたコンパクトシティを目指す行政や、さらにコロナ禍に伴うEコマースの浸透に対応する商業ディベロッパーの大きな期待がありました。
行政としては、都心居住の促進に向けて高度な医療ニーズがある事は認識しているものの、中心市街地への大規模な病院の誘致は、敷地制約や財政的にも難しいのが実情です。医療システムの中継点としての医療モールであれば、比較的取り組み易いという認識のようです。
不動産的には乗降客の減少に悩む鉄道事業者が、駅の目的機能を向上させ、集客策として医療モール誘致を企画し、商業ディベロッパーはシャワー効果を期待して上層フロアへの誘致を図っています。生活者にとってもわざわざ出向く立地の病院やクリニックよりも、日常動線上への開業は好都合な訳です。
さらに調剤薬局の積極的な支援も大きな要因でした。医療施設の出す処方箋を受けて患者に薬を出す調剤薬局にとって、医療施設の近接立地さらには医療施設の集積は、安定した収入源の確保を意味し、医療モールの積極的な開発に関与するようになりました。因みに処方箋の面で調剤薬局にメリットの大きい科目順に並べると①内科②耳鼻科、小児科③皮膚科、眼科となり、これに起因した診療科目の偏りが課題になっています。
それぞれの立場の思惑で医療モールの都心進出が加速しているのです。
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