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文化施設の更なる進化 シン・コンセッション ⑮

【内容】

  1. 世界目線の必要性

  2. 街の DNAに磨きをかける

  3. 街(私たち)に自信を取り戻す

 

 

1.世界目線の必要性

これまでの「文化施設」は、主に住民の文化啓蒙を目的に作られてきました。

ですから、都市公園などの一部に独立して建設され、施設構成も展示室や劇場などの機能施設に特化していました。

日本人にとっての美術館は、人気のある印象派の絵画など、「西洋、近代、名画」を中心とした企画展を鑑賞しに行く場所だったわけで、その建築デザインも、閉鎖的で重厚感を重視する傾向がありました。

京都市京セラ美術館のリニューアル設計を担当し、館長に就任した建築家:青木淳氏によると「美術館=ちょっと怖い空間」だったそうです。

近年 「もっと街に開かれるべき」という傾向に沿って、国立新美術館や金沢21世紀美術館のように、「オープン感」を重視するようになっています。

これからの文化施設のあり方を考えるときに、インバウンド客など世界集客を視野に入れるべきではないでしょうか。

私たちが海外旅行に行く際に、地域のミュージアムに足を運ぶ観光行動を踏まえると、地方においてはインバウンド対応の拠点として、文化施設は大きな役割を担うことになると考えます。

文化施設の建築には、「日本らしさ」もっと言えば、「その街らしさ」が求められるのではないでしょうか。

赤みを帯びた石州瓦を多用した「島根県立芸術文化センター」や、木材を巧みに生かした「高知県立植物園の牧野富太郎記念館」など、内藤廣氏が設計する文化施設に好例があります。

 

2.街のDNA に磨きをかける

インバウンドをはじめとした世界目線で考えると、展示物にも工夫が必要です。

従来の「近代、西洋、名画」中心の企画展で、地域の住民を集客するだけでなく、地域(=日本)に根ざした文化を顕在化させていく必要があるのではないでしょうか。

参考事例とした「大阪城公園」では、国際観光拠点として、日本文化の発信や忍者アトラクションを展開したいと妄想していました。

さらに橋爪先生は、「大阪城天守閣は、豊臣時代・徳川時代に次ぐ3代目のもので、1931年に市民の寄付金によって鉄筋コンクリートで復興されました。現在まで90年の時を刻み、国の登録文化財にも指定されています。市民民主主義のシンボルとしての価値を再認識してはどうか?」とコメントされます。

京都市京セラ美術館では、京都画壇の拠点として、関西のアーティストのコレクションを続けることで、「次世代の大和絵のメッカ」としての地位を高め、インバウンドがアートを楽しむ文化拠点にしたいと意欲を見せています。

各々の未来を開くため、自らのDNA に磨きをかけ、オンリーワンの存在を目指していくべきだと考えます。

 

3.街(私たち)に自信を取り戻す

行ってみたい旅行先として人気のある日本ですが、地方へ行って、地元の人たちの口から出るのは「ウチの街には、自慢できる物なんかない」という言葉です。

イタリアなど欧米の街の人たちが、「私はシエナの街を愛している」「私が住むリヨンは、最高にイカしてる」「私はナッシュビルを誇りに思う」などと自慢するのとは、対照的です。

もちろん日本人独特の謙遜嗜好もあるのでしょうが、そもそも「街」に対する興味や知識が不足しているのではないでしょうか。

編集者の佐渡島庸平さんが「関心の強さ=コンテンツの質×親近感」だと指摘していました。

コンテンツの質は、身近かになればなる程、関心が沸き、興味・愛着が高まるのではないでしょうか。

文化施設を「街のハートプレイス」として再生することの一番の効用は、街の人たちが、「街の学芸員、研究員」になることによって、街の歴史や風土、文化を調べ、発信していく立場と仲間を得ることだと考えます。

文化施設改革の普及を通じて、日本の街のシビックプライドが向上し、街づくり活動が、継続して行くことを期待したいと思います。

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