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コミュニティを育むリアルな「都市(まち)」FIACS常務理事 小林洋志

 今年2月に発刊されたFIACSの2冊目の単行本、「beyondeコロナの都市づくり」には、「Socio Ecological Development(SED)」という副題がある。

直訳は「社会生態学的な開発」だが、この副題には、これからの時代、自然の生態系と人間の社会システムを不可分な社会生態系としてとらえ、持続可能な都市づくりを目指すべきだとの意味を込めている。昨今、頻繁に目にするSDGsや、ESG経営も、基本的な考え方は同じではないか。

 地球環境の中で生かされている人類が、この先も生き延びていくためには、温室効果ガスの削減など環境との共存が必須であり、さらには、人種や民族という多様性を保持し、それぞれの生息領域をお互いに尊重しあう平和な世界の維持が必要だ。

 この考え方を到達目標としてブレイクダウンしたのが国連のSDGsであり、その達成を、資本の論理を超えて企業の目標とする考え方が、ESG経営といえるだろう。

 SEDも同様に、都市を一つの社会生態系として捉えたとき、その存続には、地球環境への配慮とともに、立場の異なる多様なコミュニティが共存できるような社会システムが構築されることが必要条件となる。

 さて、私が設立に関わり、現在評議員を拝命している一般財団法人世田谷コミュイティ財団では、「まちを支える生態系を作る」というミッションを掲げている。

 財団の主な活動は、市民や企業から寄付を集め、その資金を、社会課題の解決に取り組んでいるNPOなどの団体に交付し、活動を支援するというもので、」行政がカバーしきれない社会課題に市民の力で対応しようという試みである。

 人間は一人では生きていけない、社会との関わり、他者との相互の関係があって、初めて生き続けることができる。

様々な背景を持つ個人が、多様に存在する組織の中で、互いに影響しあい、各人の知恵や経験が共有され、交換され、有機的に結びつき、コミュニティが生まれ、コミュニティは次々と増殖し、相互に関係しながら共存していく。

 「まちを支える生態系をつくる」という財団のミッションは、多彩なコミュニティが多数共存しているまちが、人々の生活を豊かにするという考え方が前提となっている。

 リアルな世界としての「都市」では、人間は五感を通じて、その都市の文化や個性を直接感じとることができる。街を歩けば、商店に並ぶ多様な商品や、飲食店、イベントに集う様々な人々との偶然の出会いが、新しいアイデアを生み、コミュニティが誕生するきっかけとなる。リアルな都市には、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見できる「セレンディピティ」が満ちているのだ。

 オンラインの世界でも、偶発的な出会いが生まれることはあるが、その可能性はまだリアルな世界には及ばない。

 自然界から発生したコロナウイルスの感染拡大は、リアルな世界としての都市の機能を抑制し、人と人との繋がりのベースとなるコミュニティを破壊してしまった。

 偶然の出会いや、人と人が繋がり、共振する、コミュニティを育む母体としてのリアルな都市の機能を取り戻すことが、今、まちづくりには求められているのではないか。

 そのための手法と指標を明らかにすることを、FIACSの今後の活動テーマとして取り組んでいきたい。


小林洋志氏のプロフィール:

1981年早稲田大学を創業後、大手広告会社にて、大型の都市開発やイベントをプロデューサーとして担当。近年は地域産業の活性化や地域振興に取り組むほか、日本食文化会議、ミュージックダイアローグ、AOAartなどの団体を立上げ、役員を兼務している。

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