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都市の拡大と分断 「関わり資本」による都市再生 ②

  • 2025年6月20日
  • 読了時間: 3分

【内容】

第1章 歴史と生活が息づく「旧市街」の誇り

第2章 新市街の台頭と「都市の分断」

第3章 郊外化と「三重の分断」

 

 

第1章 歴史と生活が息づく「旧市街」の誇り

日本の多くの地方都市は、城や寺社を核として発展してきた旧市街を起点としています。

金沢のひがし茶屋街、松本の城下町のように、江戸時代以前の都市構造が今も生活空間として息づいている例は少なくありません。

これらの旧市街は、細やかな町割りや人にやさしい街路スケールを持ち、徒歩による回遊に適した空間です。観光地であると同時に、住民の生活圏として文化と日常が共存する場であり、地域の誇りとアイデンティティが息づいています。

しかし近代に入ると、鉄道の整備により都市構造に変化が生じます。駅が旧市街の外に設けられたことで、駅周辺に新たな拠点=新市街が生まれ、次第に都市の重心は旧市街から離れていきます。

とはいえ当初は、旧市街には歴史と文化の重みが、新市街には交通と利便性という特性があり、両者はある程度のバランスを保っていました。


第2章 新市街の台頭と「都市の分断」

戦後の復興と高度経済成長は、その均衡を大きく揺るがします。

駅前再開発によるバスターミナル、高層ビル、百貨店の整備が進み、「駅前」が都市の新たな顔となっていきました。加えてモータリゼーションの進展により「広幅道路+駅前」という都市設計が主流化し、旧市街は次第に都市機能の中心から後退していくようになります。

こうした中で深刻化したのが、旧市街と新市街を隔てる「中間地帯」の問題です。

本来、両者を接続するはずのこのエリアは、実際にはオフィスビルや駐車場などが点在する、無機質で通過されるだけの空間となってしまいました。

都市の核が旧市街、新市街と分裂し、その間をつなぐはずの中間地が機能不全に陥ったことで、都市全体に「線」や「面」の連続性が失われたのです。


第3章 郊外化と「三重の分断」

さらに追い打ちをかけたのが、1970年代以降の郊外化です。

生活拠点はマイカーでアクセス可能な郊外へとシフトし、日常の買い物も郊外型ショッピングセンターへと移行。結果として、旧市街も新市街も都市機能の停滞に直面します。

旧市街はインフラの老朽化と駐車場不足で衰退し、新市街も歩行者中心の設計ゆえに車社会に対応しきれず、機能の限界を露呈します。

1990年代のバブル崩壊以降、経済停滞によって再開発も停滞し、旧市街では老舗の閉店や建物の空き家化、新市街では百貨店の撤退と空洞化が進行。中間地は殺風景な「都市の隙間」として完全に孤立します。

こうして「旧市街(歴史と文化)」「新市街(交通と利便性)」「中間地(無機質な空間)」という三重の分断が定着し、都市の魅力とにぎわいが大きく損なわれました。

このような構造的劣化を克服するには、単なる施設整備やイベント誘致といった対症療法では限界があります。

旧市街・新市街・中間地を一体として再接続する空間設計と運用の発想が必要です。歴史と現代性、徒歩と車、文化と経済が交錯する「再結合型の都市再生」こそが、分裂した都市を再びひとつに束ねる鍵になるのではないでしょうか。

 
 
 

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