第5章 参加デザインとは何か 参加デザイン ⑤
【内容】
1.設計するのは「イベント」ではなく「関係性」である
2.参加には「深さ」がある
3.参加デザインは、あらゆる「場」に応用できる
1.設計するのは「イベント」ではなく「関係性」である
「参加デザイン」と聞くと、多くの人は参加型イベントやワークショップを思い浮かべるかもしれません。
しかし、本シリーズでいう参加デザインは、それらとは少し意味が異なります。
参加デザインとは、人と場との関係が、一度きりの利用で終わるのではなく、少しずつ深まり、やがて主体的な参加や共創へと発展していくプロセスを設計することです。
つまり、設計する対象はイベントそのものではありません。
人と場との「関係性」です。
従来の集客では、「イベントを成功させること」が目的でした。
魅力的なプログラムを企画し、多くの人を集め、満足して帰っていただくことが評価されてきました。
もちろん、それは今でも重要です。
しかし参加デザインでは、その先を考えます。
イベント終了後にも、「また来たい」「もっと関わってみたい」「誰かに紹介したい」という気持ちが生まれ、人と場との関係が少しずつ育っていくことを目指します。
つまり、イベントはゴールではなく、新しい関係の始まりなのです。
2.参加には「深さ」がある
従来の集客では、「参加した」「参加しなかった」という二つの状態で考えられることが多くありました。
しかし実際には、人との関わり方はもっと多様です。
街を歩いて雰囲気を楽しむ人。
カフェだけ利用する人。
展示を見る人。
イベントに参加する人。
ボランティアとして支える人。
企画そのものを一緒につくる人。
これらはすべて、その場との関わり方です。
参加には、「ある・ない」ではなく、「深さ」があります。
そして、その深さは一度に変わるものではありません。
最初は少し立ち寄るだけだった人が、何度も訪れるうちに顔なじみになり、イベントへ参加し、やがて地域活動を支えるようになることもあります。
つまり、参加とは階段を一段ずつ上がるように育っていくものなのです。
参加デザインとは、この成長のプロセスを意図的に設計することにほかなりません。
3.参加デザインは、あらゆる「場」に応用できる
参加デザインは、イベント運営だけの考え方ではありません。
スポーツ施設では、観戦するだけでなく、街を歩き、応援し、ファンになり、地域活動へ参加する流れを設計できます。
文化施設では、公演だけでなく、カフェや展示、ワークショップを通じて文化との接点を増やし、やがて支援者や共創者を育てることができます。
商業施設では、買い物だけでなく、マルシェや地域イベントを通じて街との関わりを生み出すことができます。
オフィスでは、働く場所から、人と人が出会い、新しいプロジェクトが生まれる共創の場へ発展させることもできます。
つまり、参加デザインは特定の業界だけの手法ではありません。
スポーツ、文化、商業、教育、観光、街づくりなど、人が集まり、関わりを持つあらゆる「場」に応用できる設計思想です。
これからの時代に求められるのは、人を一度だけ集めることではありません。
人と場との関係を育て、その関係が新しい活動や新しい価値を生み出していく循環をつくることです。
参加デザインとは、その循環を生み出すための設計思想であり、本シリーズではその基本原理を「グラデーション型参加デザイン」として整理していきます。
次章では、従来の「参加する・しない」という二元的な考え方と、「少しずつ関わりが深まる」グラデーション型参加デザインとの違いを比較しながら、その設計原則について詳しく見ていきます。
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