top of page

東京ワンピースタワーの教訓 ライブミュージアム ④

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2024年8月19日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. ワンピースのテーマパーク@東京タワー

  2. ストーリーとして体験できない

  3. ライブと展示との溝

 

 

1.ワンピースのテーマパーク@東京タワー

「東京ワンピースタワー」は、2014年に東京タワーに開設したマンガの「ONE PIECE」を題材にした屋内型テーマパークです。

私は初期の立地選定段階から関わり、プロジェクトマネジャーとして、開業まで携わりました。

累計発行部数が5億冊を超える大人気マンガを題材にしたテーマパークを、東京観光の目玉の一つである東京タワーで開発するのだから、「ハズれる」はずがない。

事業主体のアミューズも本腰を入れ、テーマパークのスペシャリストたちをアサインして、計画を進めました。

マンガの名場面が散りばめられた入口コーナーをはじめとして、ゾロ、サンジ、ナミ、ロビン、ウソップ、チョッパー、ブルック、フランキーなど麦わらの一味のキャラクターを活かしたアトラクションで構成しました。

原作者の尾田栄一郎氏の最終チェックでも「これまでにないテーマパークになっている」と、お墨付きをもらい開業したのです。

ところが当初こそ行列ができましたが、期待したほどの「大成功」とはなりませんでした。

インバウンドを中心に一定数の集客はありましたが、コロナ禍で苦境に陥り、閉館になりました。

一番人気があったのは「ルフィーのライブシアター」で、あとのアトラクションの評価はそれほど高く無かったのです。

この時に、シアター系施設で開催される「ライブ」と、ミュージアム系施設での「展示」との整合の難しさを痛感しました。

 

2.ストーリーとして体験できない

ワンピースのテーマパークは、何がダメだったのでしょうか?

それまでもサンシャインシティの「ナンジャタウン」で開催された、少年ジャンプの人気漫画を題材にしたテーマパークも、成功したとは言えないですし、手塚治虫や石ノ森章太郎をはじめとした、マンガミュージアムなどもコケているという状況です。

さらに石原裕次郎記念館、美空ひばりミュージアムなども、閉館されてしまいました。

マンガやアニメ、映画などを題材にした「(ライブ)ミュージアム」は、どこもうまくいっていないようです。

以前、劇画作家の講演で、「映画の上映時間が平均2時間なのは、俳優が登場してストーリーを展開し、共感を得るまでには約2時間が必要だからです。マンガでは、その前段のキャラクターの描き込みが必要なので、お客が没入するためにはさらにプロセスと時間が必要です。」とコメントされたことを思い出します。

ミュージアムの限られたアイテムによる展示では、どうしても表面的な解説になってしまい、ファンからすると「ストーリーとして体験できない=物足りない」ということになってしまうのではないでしょうか。

 

3.ライブと展示の溝

マンガやアニメ、映画は広義のライブ・エンタテイメント(以下ライブエンタメ)だと言えます。

ワンピースのテーマパーク事業を通じて、ライブエンタメの醍醐味である「感動と興奮・熱狂」を、テーマパークのアトラクションとして再現・体験できるようにする事は、非常に難しいということを痛感しました。

アトラクションそのものの完成度の高さはもちろんのこと、映画が2時間必要なように、感情を高めて没入していくための時間・プロセス(規模)が、必要だということではないでしょうか。

「ストーリーを再現」するのか?あるいは「ライブの感動を補完」するのか?

ライブと展示との溝の存在を踏まえた、ライブミュージアムの位置付けの確認と計画方針とが必要になります。

 
 
 

最新記事

すべて表示
基本方針 共体験デザイン ⑤

【内容】 第1章 「共体験デザイン」の視点 第2章 「共体験デザイン」の基本方針 第3章 「共体験デザイン」の具体化方策     第1章 「共体験デザイン」の視点 都市開発において「共体験」を軸にした計画を進めるためには、空間・社会・時間・経済という四つの視点から捉えることが重要です。 ⑴空間の視点 都市の価値は「建物」そのものではなく、「建物と建物の間に生まれる生活」に宿ります。ベンチや段差、可

 
 
 
共体験の課題 共体験デザイン ④

【内容】 第1章 都市開発における「共体験」研究の現在地 第2章 都市開発における共体験研究の課題 第3章 展望に向けた問いと今後の方向性   第1章 都市開発における「共体験」研究の現在地 「共体験(Co-experience)」はもともとHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)の分野で定義された概念ですが、現在では都市デザイン、社会学、文化研究、心理学など幅広い領域で活用されていま

 
 
 
共体験研究の変遷 共体験デザイン ③

【内容】 第1章 共体験研究の萌芽と概念の確立 第2章 共体験の社会的接合と都市研究への展開 第3章 共体験の測定・検証と都市開発への統合   第1章 共体験研究の萌芽と概念の確立 都市開発における「共体験」の研究は、1960年代から80年代にかけて、公共空間における人々の行動観察から始まりました。 ウィリアム・ホワイトの『The Social Life of Small Urban Spaces

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page