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方策2 地域の記憶と暗黙知の継承 シン都市経営 ⑧

  • 2025年8月29日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. 地域の記憶が失われる危機

  2. 問題の背景と構造

  3. 都市経営的視点からの処方箋



1.地域の記憶が失われる危機

近年、都市の再開発や新たな施設整備が活発に進む一方で、その土地に根付いた伝統や人々の暮らしから生まれる「語り継がれない知」が消失しつつあります。

職人技や祭りの運営ノウハウ、商店街を成り立たせてきた秘訣など、地域に受け継がれてきた暗黙知が途絶えることで、多くの街は特色や物語性を失い、同質化へと向かっているのです。

このような状況を放置すると、「その街ならでは」の魅力が埋もれてしまい、どこを訪れても同じような景観と体験しか得られない都市になってしまいます。

さらに、高齢の名人やベテラン事業者が持つ長年のノウハウは、形式知化されないまま消えてしまう恐れがあります。

こうした事態は、街のにぎわいや伝統行事の存続にも影響を及ぼし、地域コミュニティの持続可能性を脅かす大きな課題となっています。

 

2.問題の背景と構造

この課題の背景には、都市部における移動・流動性の高さがあります。

転勤や進学などで人々の出入りが激しい都市では、地元に根ざした知識や技術が継承されにくくなります。

また、暗黙知の価値を十分に可視化する仕組みが不足していることも見逃せません。

職人技や地域の祭りの運営方法などは、実際に体験したり、長年培われた勘所を共有したりすることで初めて伝わるものが多く、教科書やマニュアルだけでは伝承が難しいのです。

さらに、地域自体を「学ぶ対象」として扱う文化が根付いていないことも、暗黙知の継承が進まない要因といえます。

都市に暮らす人たちが、地元の暮らしや文化を学び、誇りを持つ機会が乏しければ、得られるはずの貴重な知見は埋もれたままになってしまいます。

 

3.都市経営的視点からの処方箋

こうした状況を打開するためには、まず「地域を学びの場」に再編集する視点が重要です。

たとえば山形県の鶴岡ナリワイプロジェクトでは、地域の知恵や文化を仕事につなげる仕組みを整え、若者が地元に根を張るきっかけを生み出しています。

畑仕事や祭り運営を「学びのカリキュラム」として位置づけることで、伝統の継承と新たな担い手育成を両立しているのです。

東京の下町でも、月島や谷中などの地域文化や技能をワークショップや滞在型プログラムとして提供し、都市生活者が学ぶ形に変換することが考えられます。

次に、地域住民の声や背景を蓄積する「ナラティブアーカイブ」の構築が有効です。尾道の空き家再生プロジェクトでは、住民のストーリーを写真やインタビューで残し、空き家そのものが持つ記憶を新たな価値として再編集しました。

都市再開発が進む地域でも、開発前に住民の声をデジタルやリアルな形で記録し、施設の案内やAR体験などで共有すれば、地域の過去と未来をつなぐ架け橋となるでしょう。

さらに、世代を超えた対話の機会を意図的につくる仕組みも不可欠です。

全国的に行われる「聞き書き甲子園」は、高校生が漁師や職人の話を聞き書きし、伝統的な知恵を学ぶと同時に記録として残しています。

都市版としては、大学生や若い社会人が高齢者や地域事業者にインタビューし、その内容を地域メディアとして公開する仕掛けが考えられます。

 

こうした試みによって、若者は従来の知恵や地域の魅力を身近に感じられ、高齢者にとっても自身の経験が社会に活かされる喜びを得ることができます。これらの施策を総合的に組み合わせることで、都市の新陳代謝を維持しつつ、「まちの記憶」を継承する道が拓けます。

街に住む人々が地域を学び、暗黙知を共有し、受け継ぐ仕組みを育むことこそが、これからの都市経営において欠かせない視点であると考えます。

 
 
 

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