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AKBの競創モデル 共創から競創へ ⑧

【内容】

1.AKB 旋風

2.プロデューサーの狙い

3.「競創」コミュニティとしてのAKBビジネス

 

 

 1.AKB旋風

「コミュニティの進化」を語る上で外せないのが、「AKB48」です。

2010年、2011年の「AKB総選挙」は、Twitterへのつぶやき数を大きく跳ね上げ、テレビのワイドショーでも取り上げる様になりました。

AKB以前は、ファンの応援目的は、発売されるグループの曲をヒットさせる事でした。

ところが AKBでは、アイドル個人のグループ内でのランキングを上げる事が、ファンのミッションになっていました。

総選挙で投票するために 複数の投票権付きCDを買うので、売り上げは伸びますが、曲をヒットさせるためではなくて、握手会の列に並ぶために、さらには「推し」ている子のランキングを上げるために、買うのです。

2010年代に入って、AKBグループの CD販売数は爆発的に増え、一時は、シングルのミリオンセラーは、全てAKBグループという様相になりました。

CDの販売数を伸ばすために、さまざまなセールス手法が駆使されます。

  1. 同一タイトルシングルの複数仕様:初回限定盤や劇場盤と通常盤など、複数の仕様とノベルティの違う商品を発売します。

  2. 生写真の封入:CDの特典として、メンバーの生写真を封入します。ランダムに封入される為、お目当てのメンバーの写真を手に入れる為、」複数枚の CDを購入することになります。

  3. 各種投票権:選抜総選挙や各種ランキングイベントに参加する為に、 CD購入します。所定の CD一枚につき一票を投票できます。

  4. 握手会:イベント前後で、商品一点あたりメンバー一人と握手できる権利です。

 

 

2.プロデューサーの狙い

AKB48はテレビ中心のアイドルシーンに対して、「毎日劇場で公演をして、成長の過程が見えるアイドルが、面白そう」という秋元康氏の着想から生まれました。

2005年12月に秋葉原の専用劇場がオープンし、最初の観客は7人とごく少数でしたが、3ヶ月後には劇場がいっぱいになります。

「成長するアイドルに対するシンパシー」は、ネット上の口コミ力で、一気に拡散していきます。

AKBとは、各メンバーが多様な成長をみせ、ファンとの関係を作っていくための、プラットファームだったのです。

これは先述したプロ野球や Jリーグ、Bリーグなどと同様の仕組みだと考えます。

このプラットフォームは、ファンに対して、チーム全体を推すと同時に、メンバー一人を決めて推す、競技場の役割も担っています。

そしてファンが推す特定のメンバーを応援する中で、彼女たちが鎬を削り、成長する姿が、ファン自身の応援との相関関係で「競創コミュニティ」を作り上げます。

それを具現化する仕組みが、総選挙や握手会というわけです。

他の歌手たちが、歌唱力やメロディで一生懸命に勝負していたのに対し、メンバー同士、チーム同士が競うリーグ戦方式の全く異なるエンタテイメントに仕立てあげたのが、プロデューサーの手腕だと言えます。

 

3.「競創」コミュニティとしてのAKBビジネス

かつては、 CDのセールスと世間の流行は、ほぼイコールであり、ヒットチャートに乗り曲は、若者を中心に一定の認知度を得ているものでした。

しかし、」 AKB商法の台頭により、この法則は崩壊し、マイナーな曲でも、溶け天目当てで、 CDを買いまくればセールスに結びついてしまう為、ヒットチャートは世間が知らない曲で溢れることになります。

その結果、音楽から「流行の象徴」としての側面が消え、拝金主義的な要素が多く現れる様になったと言えます。

「会いに行けるアイドル」として人気を得ていた AKB48は、ファンの多くが音楽やダンスよりも、メンバー個人のパーソナリティと、ファンとの直接的なコミュニケーションに関心を持っていました。

中心メンバーの卒業やコロナ禍でのライブ・イベントの中止などが相まって、 AKBビジネスの下火になっていきますが、「競創」コミュニティを仕組み化した事例として、非常に参考になると思います。

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