top of page
検索

東京ワンピースタワーの教訓 ライブミュージアム ④

【内容】

  1. ワンピースのテーマパーク@東京タワー

  2. ストーリーとして体験できない

  3. ライブと展示との溝

 

 

1.ワンピースのテーマパーク@東京タワー

「東京ワンピースタワー」は、2014年に東京タワーに開設したマンガの「ONE PIECE」を題材にした屋内型テーマパークです。

私は初期の立地選定段階から関わり、プロジェクトマネジャーとして、開業まで携わりました。

累計発行部数が5億冊を超える大人気マンガを題材にしたテーマパークを、東京観光の目玉の一つである東京タワーで開発するのだから、「ハズれる」はずがない。

事業主体のアミューズも本腰を入れ、テーマパークのスペシャリストたちをアサインして、計画を進めました。

マンガの名場面が散りばめられた入口コーナーをはじめとして、ゾロ、サンジ、ナミ、ロビン、ウソップ、チョッパー、ブルック、フランキーなど麦わらの一味のキャラクターを活かしたアトラクションで構成しました。

原作者の尾田栄一郎氏の最終チェックでも「これまでにないテーマパークになっている」と、お墨付きをもらい開業したのです。

ところが当初こそ行列ができましたが、期待したほどの「大成功」とはなりませんでした。

インバウンドを中心に一定数の集客はありましたが、コロナ禍で苦境に陥り、閉館になりました。

一番人気があったのは「ルフィーのライブシアター」で、あとのアトラクションの評価はそれほど高く無かったのです。

この時に、シアター系施設で開催される「ライブ」と、ミュージアム系施設での「展示」との整合の難しさを痛感しました。

 

2.ストーリーとして体験できない

ワンピースのテーマパークは、何がダメだったのでしょうか?

それまでもサンシャインシティの「ナンジャタウン」で開催された、少年ジャンプの人気漫画を題材にしたテーマパークも、成功したとは言えないですし、手塚治虫や石ノ森章太郎をはじめとした、マンガミュージアムなどもコケているという状況です。

さらに石原裕次郎記念館、美空ひばりミュージアムなども、閉館されてしまいました。

マンガやアニメ、映画などを題材にした「(ライブ)ミュージアム」は、どこもうまくいっていないようです。

以前、劇画作家の講演で、「映画の上映時間が平均2時間なのは、俳優が登場してストーリーを展開し、共感を得るまでには約2時間が必要だからです。マンガでは、その前段のキャラクターの描き込みが必要なので、お客が没入するためにはさらにプロセスと時間が必要です。」とコメントされたことを思い出します。

ミュージアムの限られたアイテムによる展示では、どうしても表面的な解説になってしまい、ファンからすると「ストーリーとして体験できない=物足りない」ということになってしまうのではないでしょうか。

 

3.ライブと展示の溝

マンガやアニメ、映画は広義のライブ・エンタテイメント(以下ライブエンタメ)だと言えます。

ワンピースのテーマパーク事業を通じて、ライブエンタメの醍醐味である「感動と興奮・熱狂」を、テーマパークのアトラクションとして再現・体験できるようにする事は、非常に難しいということを痛感しました。

アトラクションそのものの完成度の高さはもちろんのこと、映画が2時間必要なように、感情を高めて没入していくための時間・プロセス(規模)が、必要だということではないでしょうか。

「ストーリーを再現」するのか?あるいは「ライブの感動を補完」するのか?

ライブと展示との溝の存在を踏まえた、ライブミュージアムの位置付けの確認と計画方針とが必要になります。

最新記事

すべて表示

築地再開発との調整 築地アップデート ⑥

【内容】 神社隣接の超高層ビルへの対応 主導線への対応 連絡デッキの調整     築地再開発との連携を図るためには、ハード・ソフト両面での調整が必要です。 超巨大開発とのハード面の調整から確認していきます。 1.神社隣接の超高層ビルへの対応...

基本方針 築地アップデート ⑤

【内容】 論点整理 街づくりは「地力作り」 「築技を活かした食体験」による地力づくり     1.論点整理 これまでの論点を整理します。 築地場外市場(以下「築地」)は、関東大震災で被災した「日本橋魚河岸」の移転に伴う「築地市場」に付帯した...

「築地」の課題 築地アップデート ④

【内容】 オーバーツーリズムに伴う「老舗専門店の疲弊改善」 午後3時以降の「賑わい時間の延長」 そして築地再開発との連携         「インバウンド客でごった返す『築地』に課題なんてあるの?」と、私も最初はそう思っていました。...

Commentaires


bottom of page