top of page

文化観光に関する政策 シン文化観光 ④

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2024年6月5日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. 文化観光推進法

  2. 「文化資源の高付加価値化」の事例

  3. モデル事業の成果と今後の展開

 

 

1.文化観光推進法

2020年(令和2年)に、文化の振興を、観光振興と地域活性化に繋げ、その経済効果を文化に再投資される好循環の創出を目的にした「文化観光推進法(文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律)」が成立しました。

文化観光推進法は、拠点施設では、ストーリー性を考慮した解説・紹介を行うとともに、地域と一体になって、積極的な情報発信、交通アクセスの向上、多言語対応、 Wi-Fi・キャッシュレスの整備などに取り組みます。

「文化」と「観光」とを両輪にして、地域の活性化を図ろうというものです。

この視点を基にして、「文化資源の高付加価値化」に向けて、先進モデル事例を造成・検証してきました。

 

2.「文化資源の高付加価値化」の事例

文化庁の助成事業で、観光地における経験価値の向上策が例示されましたので、いくつか事例をあげてみます。

  1. 熱海の花火

静岡県熱海市は首都圏有数の温泉地として有名です。集客方策として夏から秋にかけて、海上花火を打ち上げてきました。花火というと「無料が当たり前」というイメージがありますが、これに「一万円払ってでも行きたい高付加価値」をつけようという試みでした。

具体的には和太鼓演奏をはじめとしたステージ演目を充実させ、ゆったりしたリクライニングシートで、地元産品とドリンクサービスを楽しめるようになっています。熱海には高級旅館も多く、特別感のあるサービスは好評だったといいます。従来の「良い花火を作り続ければ良い」ではなく、「ブランディングを通じて需要を作り出す大切さ」が、学びであったとまとめられています。

 

  1. 妙心寺の夜拝観

京都・妙心寺という由緒ある寺院ながら、立地の悪さで苦境にあった状況を、「夜」を主題にして高付加価値商品化した試みです。アイドルタイムである、夜に拝観できるだけでなく、邦楽演奏のイベントや「京都吉兆」のお弁当というわかりやすい特典を加えて、2万円を超える客単価を実現しました。

 

  1. 高千穂のプレミアム体験

天孫降臨の地として知られる高千穂の夜神楽を高付加価値化する企画です。単品ではなく、天岩戸ツアーや郷土料理のスペシャルディナーなどを組み合わせた、2万円のプレミアムな体験プランとして企画・実施していました。

 

  1. 茅野の「泊まりに行きたい山小屋」

コロナ禍で悪化した山小屋経営の活性化を目的に、山小屋の個性を生かした高付加価値の滞在プランを企画していました。八ヶ岳周辺の「苔」に焦点をあて、苔の森ツアーや苔のテラリウムづくり教室、独自のおにぎり開発など、単に休憩するだけの山小屋から、レストラン整備を含めた「滞在環境」にアップデートしていました。

 

3.モデル事業の成果と今後の展開

「文化資源の高付加価値化」モデル事業では、いずれの場合も、従来は「保存」に重きが置かれてきた文化資源や、「収益が直接還元されにくい」祭りや花火などを題材にして、収益モデルを模索しています。

「単品」の体験ではなく、ツアーや教室・飲食を含めた「複数のプログラム」に組成すること(特に飲食サービスとのコラボが有効)によって、高付加価値化する事に、手応えを感じているようです。

ただ現状では、単発イベントとして企画されているため、周辺環境やしつらえを含めた「認知向上」によって、継続性のある事業モデルに仕立てていく必要があると考えます。

 
 
 

最新記事

すべて表示
基本的な視点と三つの戦略 AI共創オフィス ⑥

【内容】 第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 第2章 AI時代の競争力を支える「企業文化」という内的OS 第3章 AI×文化の共創拠点としての企業オフィスとサテライトオフィスの連携     第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 生成AIの進化とリモートワークの定着により、私たちの「働く場所」の概念は大きく変わりました。 業務の多くはオンラインで完結でき、駅ナカや自宅、

 
 
 
AI時代における企業オフィスの課題と方向性 AI共創オフィス ⑤

【内容】 第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 第2章 意思決定の“軽さ”がもたらす成長の喪失 第3章 “唯一無二”の判断軸を生むのは、企業文化である     第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 現代は、AIの進化とリモートワークの普及によって、私たちの意思決定のあり方が大きく変化しています。 とりわけAIは、「優秀な常識人の標準答案」とも言うべき、整合的で倫理的かつ網羅

 
 
 
オフィス研究の変遷 AI共創オフィス ④

【内容】 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の時代(1900〜1950年代) 第2章:人間中心のオフィス ― 働きがいと組織文化の時代(1960〜1980年代) 第3章:知識と多様性の時代 ― IT革命と新しい働き方(1990〜2010年代)     ここでオフィスの進化を先導してきた「オフィス研究」の変遷について、お整理しておきます。 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page