【内容】
1.接客業が発達する江戸時代
2.茶道文化の影響
3.米国式オペレーションの導入
1.接客業が発達する江戸時代
接客の起源は「接遇」にあると言われます。
接遇とは、日本国語大辞典によると、「もてなす事、接待、応対」と解説されています。
「接遇」という言葉は、飛鳥時代からありましたが、大きく発達・進化したのは、「江戸時代」になります。
江戸時代には、日本に多くの都市が生まれ、人が集まり、商業が盛んになります。
特に「江戸」は、当時100万人が住む世界最大の都市でした。
参勤交代制度により、江戸の町には武士という非労働者が集まりました。
そしてこの武士を対象にして、沢山の店が生まれ、芝居小屋、小料理屋・蕎麦屋、遊郭なども存在したのです。
当然、店舗の間には、競争原理が働きます。
お客様にどれだけ満足して頂き、贔屓にしてもらえるかが重要だった訳です。
江戸時代には、日常では味わえない、サービスを提供して、商売が成立してきます。
そのような市場環境で、接客が洗練されていった事は当然と言えます。
2.茶湯文化の影響
さらに、古くからあった「おもてなしの文化」が、これを後押ししたと推察できます。
千利休により「茶道」が確立され、もてなしの心得として、「利休七訓」がまとめられます。
①茶は服の良きように立て:事を行うには、相手の気持ち・状況を考えて
②炭は湯の沸くように置き:準備・段取りは要となるツボを押さえて
③花は野にある様に:ものの表現は、本質を知り、より簡潔に
④夏は涼しく冬暖かに:もてなしは相手を思う心で、互換を使って工夫して
⑤刻限は早めに:ゆとりは、自らの心がけ次第である
⑥降らずとも傘の用意:備えは、万人の憂いを想定して
⑦相客に心せよ:何事に接するにも、無垢の心で、素直な態度で
また「主客一如:もてなす主人ともてなされる客人の双方が、互いの気持ちになり、立場になる」や「一期一会:生涯に一回しかないと考えて、そのことに専念する」などの重要性についても説かれています。
その上で、「お客様の想像を超えるもてなしを、対価を求めずに提供する事」が良しとされました。
この辺りの奉仕精神が、欧米の「ホスピタリティ=サービスは買うもの」との違いになっているのではないでしょうか。
3.米国式オペレーションの導入
近年に入り、接客業は3つのステージで、「合理化」が進みます。
1970年代:日本の小売業に米国式のチェーンストア理論が導入されます。
スーパーマーケットなどのセルフサービスが普及し、ファミリーレストランでは、接客マニュアルやセントラルキッチンが整備され、規模による合理化が図られます。
2000年代:商品管理にPOSシステムや RFID データが導入されます。
ファーストフードショップでは、厨房シュミレーションによる店舗設計が定着し、データによる合理化が進みます。
2020年代:ネットショッピングなどの通信販売が普及します。
これに対抗するため、リアル店舗では、 AI やサービスロボットなど、自動化による合理化が求められるようになります。
このように現在の接客業は、奉仕の精神を持つ「もてなしの文化」と、合理化を進める「米国式オペレーション」とが混在した状況にあると言えます。
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