top of page

基本視点 健康経営ビル ③

2024年5月20日
読了時間: 4分

【内容】

  1. 既存指標のレビユー

  2. 経営者目線の重要性

  3. 健康経営ビルディングの視点

  4. 類例サービスの確認

 

 

1.既存指標のレビュー

健康や環境に配慮した建築物の認証制度として、「CASBEE」と「LEED認証」「WELL認証があります。

  1. CASBEE:認証:2001年に国交省が主導し設置された委員会によって開発された、建築物の環境性能評価システムです。

利用者の快適性を満たしつつ、ランニングコストの無駄や地球環境・周辺環境への配慮などを、客観的に評価・表示するために活用されています。

公共施設の設計における前提条件として利用されることもあり、建築分野における標準指標として定着しつつあります。

  1. LEED認証:人や環境について考慮したグリーンビルディングを評価する国際認証制度です。

立地や材料など評価項目は多岐に渡り、認証費用も高額のため、日本における認証取得数は、223件(2022年末時点)に留まっています。

  1. WELL認証:環境性能に加えて、建物利用者の健康快適性を評価する国際認証制度です。

その取得基準及び費用は、 LEED 認証よりもさらに複雑・高価になっているため、日本での取得件数は27件(2022年末)と言う状況です。

千葉大学大学院建築コース准教授の林立也氏のコメントでは、「LEED認証やWELL認証は、自動車で言えば、フェラーリのような超高級車に当たるもので、「移動」を目的にするならCASBEE認証の取得が現実的だ」とのことです。


2.経営者目線の重要性

 加えて、いずれもが「環境・エネルギー」を中心とした評価指標のため、気候変動が世界的な課題になる中で、必要性は理解されているものの、建築部門での認識に留まっています。

前述の林准教授の見立てでは、「経営者のオフィスに対するコスト感覚は、人件費:家賃:光熱費=7:2:1で、光熱費を半減することよりも、人材獲得や生産性を向上させることを重視するのだ」と言います。

環境・エネルギーコストを50%削減させても、全体コストに対するインパクトは「5ポイント(10×0.5)」であるのに対して、生産性を20%アップさせると「14ポイント(70×0.2)」改善されると言う訳です。

その点で、「労働者の健康を経営資源」として、経営部門の重要ミッションに位置付けた「健康経営」の視点は秀逸だと言えます。

 

3.健康経営ビルディングの視点

「健康経営」の考え方は、経営層にも認知され、中小企業を含む広い範囲で定着しています。

「健康経営」の考え方をビル全体、さらには街づくりにまで拡大するには、どのようなステイクホルダー?に対して、どんなインセンティブを提供すれば良いのか?を検討しようと言うのが、「健康経営ビルディング」の視点です。

着目点として、現状の「健康経営」に関する評価ポイントは、「自社オフィス内」に留まっていると言う事実があります。

「自社オフィス内」で完結できる労働環境であれば問題ありませんが、実際は執務空間以外にもはみ出し、場合によっては街なかに及ぶことも十分あります。

逆に言えば、「健康経営」を実践するのに相応しい街やビルディングであれば、そこに入居する企業の健康経営評価を下支えすることができる、と言うことではないでしょうか。

仮説となるステイクホルダーとして「ビル所有者や不動産ディベロッパー」が想定されます。

そして健康経営ビルディングのガイドラインに沿う「ビルスペックと共用施設」を整備することで、「入居テナントの健康経営評価を下支え」し、最終的には「入居テナントの賃料アップや、入居率の向上に繋がる」という考え方で検討したいと思います。

 

  1. 類例サービスの確認

健康経営を不動産に活用しようと言う動きは、既にあります。

  1. 三井不動産「&well」:「&well」とは、三井不動産のオフィステナントに向けた、健康経営支援サービスです。

これは専用アプリを活かして、企業の健康経営を推進するプラットフォームで、ワーカーを対象にした健康プラグラムやインセンティブ・ポイントの実施と、人事・健康担当者に向けたデータ・情報提供と健康経営「進捗度」管理及び改善コンサルティングとを提供しています。

  1. 三菱地所「丸の内ヘルスカンパニー」:三菱地所は、丸の内を舞台にして、健康的な活動に対する「ヘルスポイント」を付与する架空の会社「丸の内ヘルスカンパニー」と言う健康支援サービスを提供しています。

 

いずれも、「既存の施設を活用して健康行動を促す」と言うスタンスで、「ソフト・ハードの提供による健康経営評価を下支えする」といった部分まで踏み込んでいないのが実情です。

「健康経営ビルディング」の意義と可能性が確認されたと考えます。

 
 
 

最新記事

すべて表示
第1章 AI時代、会社とオフィスはどう変わるのか:オフィスの行動OS ①

【内容】 1.工業社会から創造社会へ 2.オフィスの役割も変わってきた 3.企業文化が競争力になる時代 1.工業社会から創造社会へ 皆さんは、会社の強みとは何だと思いますか。 少し前までは、「品質が良い」「価格が安い」「仕事が早い」といったことが会社の強みでした。 工場で良い製品をたくさんつくり、効率よく届けることが企業の使命だったからです。そのため社員には、決められた仕事を正確にこなす力

 
 
 
第10章 参加デザインが変える未来 参加デザイン ⑩

【内容】 1.集客ビジネスは、新しい時代へ向かう 2.参加デザインは、あらゆる分野へ広がる 3.人が集まる街から、人が育つ街へ 1.集客ビジネスは、新しい時代へ向かう 本シリーズでは、「参加デザイン」という新しい設計思想について考えてきました。 人口減少や価値観の多様化が進む現在、従来のように人を集めるだけでは、持続的な成長は難しくなっています。 もちろん、魅力的なイベントや施設はこれ

 
 
 
第9章 参加を広げる 参加デザイン ⑨

【内容】 1.最高の広告は「参加者」である 2.「伝えたくなる体験」を設計する 3.集客は「集める」から「育て、広げる」へ 1.最高の広告は「参加者」である これまでの集客ビジネスでは、広告や宣伝が新しいお客様を呼び込む主役でした。 新聞やテレビ、折込チラシ、インターネット広告などを通じて施設やイベントを知り、興味を持った人が来場する。この流れが一般的でした。 もちろん、広告はこれから

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page