top of page

回遊性の研究 遊歩都市 ⑤

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2023年12月1日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. 回遊性に関する研究の沿革

  2. 回遊性の定義

  3. 回遊性の工夫


1.回遊性に関する研究の沿革

「回遊性」という言葉は、1990年代以降、街づくりにおいて、頻出するようになります。

デジタル大辞泉によると、元の意味は、「魚や鯨が、産卵などのために、定期的に移送する性質」ですが、これが転じて、「買い物客が、店内や商店街を歩き回る事」となっています。

「滞留時間と買い物単価とは、比例する」という研究報告がありますので、回遊性を高めることによって、売り上げを増やしていこうという施策になります。

日本不動産学会における「都市の回遊性の概念化に関する考察{川津昌作氏}」に、回遊性についての沿革と定義などがまとめられています。

1.日経テレコンの検索数を元にすると、1990年代以降に、「回遊性」が、市場で急増しており、その要因としては、 A: 1990年代に顕著になる「中心市街地の衰退に対する再生方策」 B: 2000年代に入ると「大都市内のエリア間競争における魅力向上策」 C: 2000年代後半には、「観光立国」を標榜する政府に対応した「広域観光の促進策」として、提示されています。

2.「回遊性」に関する研究では、「都市再生には、回遊性の向上が必要」「回遊できる歩行空間の整備」など、「回遊性が、都市の便益に有益であること」を前提として、表現しているものがほとんどです。回遊性の定義や、仕組み、効果などに関する根本的な議論が希薄だったと述べられています。


2.回遊性の定義

このような沿革を元にして、下記のように定義と構造化を図っています。

1.回遊性とは、「消費者の初動目的に、付加する回遊行動の流量」と定義されています。

従って、有効なのは、回遊行動の全流量ではなく、「エリア内の消費者行動の流量」となります。

2.消費者は、「初動目的の達成による満足以外に、さらに付加価値を求めて、サーチ・渡り歩き」ます。

これが消費者の回遊行動となります。

商業者(供給者)はこのニーズに応える為、あらゆる努力で、吸引力を高め、場の魅力化を図ります

3.回遊のための「初動目的の価値」には、「核、信頼、収束、長期」などの視点での施策が有効だとされています。

そして「付加的目的の価値」には、「吸引力、サプライズ、拡散、短期」的な施策が効果的だとされています。


3.回遊性の工夫

回遊型街づくりのモデルとされる商業モールでは、商品や店舗の組み合わせで、客の財・時間の消費の囲い込みを行います。

これにより、初動目的の満足以上に、いかに付加価値をあたえ、超過満足を得るまで、回離させないための魅力の創出努力が、図られているとされています。

また、 JR中央線沿線の商店街を対象にした回遊性研究では、行動の起点としては「商業施設などの核的施設」がマグネットとなり、そこから終点となる「個店に広がる」と報告されています。

初動目的や起点としての「マグネットの信頼性」と、付加目的・終点としての「個店のバリエーション」を計画して行く事の重要性が示されています。

また店舗数だけでなく、公園・病院・図書館などが、滞在時間の延長に効果的だともされています。

 
 
 

最新記事

すべて表示
基本的な視点と三つの戦略 AI共創オフィス ⑥

【内容】 第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 第2章 AI時代の競争力を支える「企業文化」という内的OS 第3章 AI×文化の共創拠点としての企業オフィスとサテライトオフィスの連携     第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 生成AIの進化とリモートワークの定着により、私たちの「働く場所」の概念は大きく変わりました。 業務の多くはオンラインで完結でき、駅ナカや自宅、

 
 
 
AI時代における企業オフィスの課題と方向性 AI共創オフィス ⑤

【内容】 第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 第2章 意思決定の“軽さ”がもたらす成長の喪失 第3章 “唯一無二”の判断軸を生むのは、企業文化である     第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 現代は、AIの進化とリモートワークの普及によって、私たちの意思決定のあり方が大きく変化しています。 とりわけAIは、「優秀な常識人の標準答案」とも言うべき、整合的で倫理的かつ網羅

 
 
 
オフィス研究の変遷 AI共創オフィス ④

【内容】 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の時代(1900〜1950年代) 第2章:人間中心のオフィス ― 働きがいと組織文化の時代(1960〜1980年代) 第3章:知識と多様性の時代 ― IT革命と新しい働き方(1990〜2010年代)     ここでオフィスの進化を先導してきた「オフィス研究」の変遷について、お整理しておきます。 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page