【内容】
回遊性に関する研究の沿革
回遊性の定義
回遊性の工夫
1.回遊性に関する研究の沿革
「回遊性」という言葉は、1990年代以降、街づくりにおいて、頻出するようになります。
デジタル大辞泉によると、元の意味は、「魚や鯨が、産卵などのために、定期的に移送する性質」ですが、これが転じて、「買い物客が、店内や商店街を歩き回る事」となっています。
「滞留時間と買い物単価とは、比例する」という研究報告がありますので、回遊性を高めることによって、売り上げを増やしていこうという施策になります。
日本不動産学会における「都市の回遊性の概念化に関する考察{川津昌作氏}」に、回遊性についての沿革と定義などがまとめられています。
1.日経テレコンの検索数を元にすると、1990年代以降に、「回遊性」が、市場で急増しており、その要因としては、 A: 1990年代に顕著になる「中心市街地の衰退に対する再生方策」 B: 2000年代に入ると「大都市内のエリア間競争における魅力向上策」 C: 2000年代後半には、「観光立国」を標榜する政府に対応した「広域観光の促進策」として、提示されています。
2.「回遊性」に関する研究では、「都市再生には、回遊性の向上が必要」「回遊できる歩行空間の整備」など、「回遊性が、都市の便益に有益であること」を前提として、表現しているものがほとんどです。回遊性の定義や、仕組み、効果などに関する根本的な議論が希薄だったと述べられています。
2.回遊性の定義
このような沿革を元にして、下記のように定義と構造化を図っています。
1.回遊性とは、「消費者の初動目的に、付加する回遊行動の流量」と定義されています。
従って、有効なのは、回遊行動の全流量ではなく、「エリア内の消費者行動の流量」となります。
2.消費者は、「初動目的の達成による満足以外に、さらに付加価値を求めて、サーチ・渡り歩き」ます。
これが消費者の回遊行動となります。
商業者(供給者)はこのニーズに応える為、あらゆる努力で、吸引力を高め、場の魅力化を図ります。
3.回遊のための「初動目的の価値」には、「核、信頼、収束、長期」などの視点での施策が有効だとされています。
そして「付加的目的の価値」には、「吸引力、サプライズ、拡散、短期」的な施策が効果的だとされています。
3.回遊性の工夫
回遊型街づくりのモデルとされる商業モールでは、商品や店舗の組み合わせで、客の財・時間の消費の囲い込みを行います。
これにより、初動目的の満足以上に、いかに付加価値をあたえ、超過満足を得るまで、回離させないための魅力の創出努力が、図られているとされています。
また、 JR中央線沿線の商店街を対象にした回遊性研究では、行動の起点としては「商業施設などの核的施設」がマグネットとなり、そこから終点となる「個店に広がる」と報告されています。
初動目的や起点としての「マグネットの信頼性」と、付加目的・終点としての「個店のバリエーション」を計画して行く事の重要性が示されています。
また店舗数だけでなく、公園・病院・図書館などが、滞在時間の延長に効果的だともされています。
Comments