【内容】
Ⅰ奈良県立文化会館
Ⅱ愛知県芸術文化センター
文化施設のコンセッションを検討するために、具体的に事例を元にケースステディを行います。まず「ホール・劇場」については、下記の2施設で検討します。
【Ⅰ 奈良県立文化会館】
概要
奈良県立文化会館は、奈良市の中心部、近鉄奈良駅から徒歩5分の好立地に立つホールです。
大規模改修の設計が終わり、2026年秋には、メインホール(1144席)小ホール(362席)練習場・スタジオ及び大小の多目的ホールからなる複合施設に生まれ変わります。
最大の特徴は、世界的なピアニスト:反田恭平氏と彼が主催するオーケストラ: Japan National Orchestra (JNO)と連携し、クラシック音楽とした音響効果を重視したホールだという事です。
加えて、次世代育成事業にも力を入れ、将来的にはJNOアカデミーの設立を視野に入れています。
現状と課題
奈良県立文化会館の事業化には、様々な制約があります。
奈良県及び日本のクラシックファンの絶対数の不足。※現状の稼働率:40―50%
奈良市の中心とはいえ、周辺人口が少ない上に。奈良公園としての指定を受けたエリアである。
近隣に磯崎新設計の「なら100年会館(第ホール:1476席)」があり、料金及び稼働上の競合になる。
既に完了した実施設計では、大通りとの高低差やホワイエの居心地などが解決されていない為、「日常的な賑わい作り」が難しい。
文化観光の中心になるために、上記の制約を踏まえると「(クラシック)音楽公演を補完する価値づくり」という課題が浮かび上がってきます。
基本方針
課題を解決するリソースが、いくつか提示可能です。
第一に「反田恭平」というクラシック音楽界のスターブランドと同氏のビジネス感覚。
将来的な JNOアカデミーにつながる次世代育成の仕組み。
交通の便もよく、興福寺、東大寺、春日大社などを含む奈良公園に立地し、国立博物館や立美術館などが徒歩圏にある。
これらのリソースを活かすためにも、「柔軟なコンテンツ・マネジメント」によって、ライトなファンを開拓してはどうでしょうか?
キャラクター・マネジメント
クラシック音楽だけでなく、反田氏を始め、個性的な演奏家をキャラ化する事によって、新日本プロレスのように多彩な商品開発が可能になりますし、演奏家同席のランチ会、アフタヌーンティーなど人気が出るかもしれません。
」クラシック音楽×〇〇」による体験拡張
クラシック音楽を聴きながら、食事をする、焚き火を楽しむ、ヨガをするなど、多彩な体験拡張イベントを開催することによって、クラシック音楽のハードルを下げることが可能です。またオーケストラによる映画音楽鑑賞も、人気プログラムです。
企業スポンサーへの「リッチな体験」の提供
共産への対価が、単なる「名称表記」だけでは物足りません。
商談・会合にも活用できるビジネスラウンジの提供や、シンボリックなサイネージ掲出やホワイエのイベント利用など、商談・福利厚生・リクルーティングなどに有効な、他にはない「リッチな体験」の提供が重要です。
人手不足に対応して、スポンサー企業合同での企業説明会を企画しても面白いと思います。
いずれの場合にも、若手演奏家のプレゼンの機会として活用すると、一層有効ではないでしょうか。
単なるクラシック音楽ホールとして、稼働率を高めるだけでなく、当該施設の最大の特徴である「コンテンツ」を多彩に活用することによって、音楽に接する機会が増え、ハードルが下がり、親しみが湧き、ライトなファンを開拓していくことが、安定して運営に結びつくのではないでしょうか。
【Ⅱ愛知芸術文化センター】
概要
愛知県芸術文化センターは、名古屋市の中心地で、テレビ塔や久屋大通に面した一等地に立地します。
フォトジェニックな「水の宇宙船」がシンボルになっている複合広場施設の「オアシス21」に隣接し、地上、地下、2階レベルで連絡しています。
センター全体は、芸術劇場の他、県立美術館や図書館までが一体になった複合文化施設です。
その内、芸術劇場は大ホール(2480席)、コンサートホール(1800席)、小ホール(330席)で構成され、立地の良さから80−90%の稼働率を誇っています。
2016年―2018年にかけて、施設を休館して大規模な改修工事を実施しました。
愛知県としては、コンセッションを通じて「名古屋の一等地立地にふさわしい より高度な収益化」を図りたいということです。
現状と課題
「高度な収益化」というゴールに向けて、現状を確認すると、下記のようになります。
コンセッション事業の中核となる大ホール及びコンサートホールについては、既に高稼働の状況ですが、周辺のホール施設の閉鎖などから、さら高いニーズが見込まれています。
劇場仕様の大ホールでは、「演劇系公演」の際の設営・仕込み日やリハーサル日などが含まれる為、さらに効率的な稼働を狙っているようです。
多様な文化施設が複合しているため、それをつなぐ共用スペースが必要で、このスペースの活用も重要です。
これらを踏まえた課題としては、多少のホール料金の値上げに加えて、「ホール稼働率だけに頼らない事業価値づくり」が重要だと考えます。
基本方針
課題解決に資するリソースは、下記のように整理できます。
まず 名古屋の一等地立地であり、周辺には商業施設や集客施設が立ち並んできます。
芸術劇場の3ホールに加えて、美術館から図書館までが揃った複合文化施設
芸術劇場は、芸術監督に国際t系にも評価の高い「勅使河原三郎」氏、を起用し、文化庁事業に採択された国内のトップ16劇場の一つになっています。
これらのリソースを活かし、イタズラに劇場利用を削減するのではなく、共用スペースを有効に活用することで、「丸ごとアート楽市」化を図り、日常的に繰り返し且つゆったりと利用される文化拠点づくりをしてはどうでしょうか。
メリハリ運営
評価の高い「大ホールでの演劇活動を文化価値」として担保した上で、「コンサートホールでは事業志向」で、料金や演目を設定していく等、運営のメリハリをつけます。
共用部の有効活用
館内各所に広がる共用スペースを舞台にして、外部では活動が難しい「自由特区」化により集客を図ります。
「アート=自由」であるという解釈をもとに、衣装や音楽など特定テーマについて「自由特区化」することで、コスプレやダンス・音楽などを、楽しみたい人たちを有料で集めます。
さらにポップアップストア形式で、関連商品を扱う飲食・物販ショップも軒を連ねます。
企業スポンサード
毎週末に通いたくなる「アート楽市」で、名古屋に活気と誇りとをもたらす活動に対する企業スポンサードを募ります。
これらの施策によって、名古屋の中心地に、日常的利用される文化拠点が実現します。
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