【内容】
集積の利益
地域特化の経済 都市化の経済
都市のエコシステム化
1.集積の利益
会社が都市に集まる理由について、先駆的に議論したのが、経済学者のアルフレッド・マーシャルで、「集積の利益の3要素」としてまとめています。
共有:インフラ設備や、サプライヤーなどの関連産業を共同利用することで、費用低下が可能になります。さらに関係性の共有は、定量化しにくい資産ですが、立地メリットとして重要だと説いています。
マッチング:分厚い労働市場のある地域は、労働者・雇用者の双方の利益になります。同様の関係は、消費者・提供者とのマッチングにも当てはまり、多様な嗜好を持つ多数の消費者がいる地域では、多様な商品・サービスの供給が成立します。
学習:現代のような知識経済時代では、地理的な近接性が重要で、高い頻度での対面接触が、粘着性の高い知識の移転につながるとされています。
2.地域特化の経済、都市化の経済
さらに集積の利益は、「地域特化の経済」と「都市化の経済」に分類されます。
地域特化の経済:特定業種が集積して立地していることによる利益を指します。自動車産業、メガネ産業などが、例示できます。地域内にその業種の知識が蓄積され、効率的で生産性が高まる一方で、業種の枠を超えた新しい知識が入って来ないというデメリットがあります。さらに、外部環境の変化で特定業種の需要が縮小すると、一気に失業率が高まるなどのリスクがあります。
都市化の経済:多様な産業が集積することによる利益を指します。様々なインフラやサービス・消費市場を共用することによる利益があるということです。ただ全く関連のない業種では、お互いの知識を理解し、吸収できないというのが現実的だ。
結論として、全く同業種ではなく、全く異業種でもない「適度な多様性、関連ある多様性」が、会社のイノベーションという点からは有効だという事になります。
3.都市のエコシステム化
都市には集積に伴う不利益も存在します。
地価、賃金、混雑、公害などの環境汚染が挙げられ、都市が無限に拡大できるわけではありません。
都市経営を標榜する自治体は、高賃金のワーカーを抱える、成長力の強い会社を惹きつけたがっています。
そのための条件として、アメリカ起業家精神センターのイアン・ハサウェイは、①大学卒の労働者が多いこと ②ハイテク系の労働者が多いこと ③起業適齢期(35〜44歳)人口が多いこと ④創業比率が高いこと などのリソースの提供システムを挙げています。
都市の優位点は、マーケットの規模だけではなく、実効性のあるリソースの提供体制に移行しつつあります。現代で言えば、情報サービス、イノベーション産業を中心として、会社だけでなく、大学などを交えて、人材を育成・起業・雇用を促すエコシステムづくりが、求められているのです。
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