top of page
検索

CAMPUS2.0 ③共通一次試験の功罪

大学の入試改革として、国立大学に「共通一次試験」が導入されたのは、1979年でした。マークシート方式は入試業務の画期的な効率化につながり、何度かの改善を経て、私立大学も活用するようになり、毎年50万人以上が受験する「大学入試センター試験」として現在に至っています。共通一次試験の導入時代は日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と持て囃され、世界で最も不良品を出さない、世界一の工業国として上り詰めるタイミングといえます。マークシート方式の大学入試導入によって、ミスを少なくする訓練、ミスを見つけてすぐに直す訓練が、中高教育では徹底・強化されることになります。1989年のベルリンの壁の崩壊、インターネット時代の到来とともに、我が国の産業構造にも大きな変革が迫られているにも関わらず、必要とされる「創造型人材」とは異なる、工業最適化人材ばかりが輩出される構造が維持されてきたのです。国立情報学研究所が作り、東大入試に挑戦することで話題になった人工知能の「東ロボくん」は、センター試験模試では、偏差値57超と高得点を獲得できました。またオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授は「現在ある600の職業の49%はAI に置き換わってしまう」という研究結果を発表しています。つまりマークシート方式のセンター試験を続ける限り、AIに置き換えられる人材(失業予備軍)を大量に養成する事になるのではないでしょうか。方針転換が期待されたセンター試験(共通テスト)への論述形式の導入による入試改革は、手続きの不手際が災いし、頓挫したままになっています。一部大学での論述式試験やAO入学の導入や、早稲田大学政経学部での数学必須化など改善が見られるものの「日暮れて道遠し」という印象です。

これからの大学でどのような人材育成が求められているのか?その為にはどのような能力を図る入試が必要なのか?根本的な問いに立ち返り、目的と手段とを整理した上でロードマップを作成する、という具体的な対策を講じていく必要があるのではないでしょうか。


最新記事

すべて表示

【内容】 街歩きの「テーマ」づくり 見立てアート視点 メタ思考で街を楽しむ 1.街歩きの「テーマ」づくり 街を歩くといっても、ただ歩くだけでは、直ぐに飽きてしまいます。 体力づくりのために歩くのなら別ですが、街歩きを楽しむための「工夫」を持った方が、継続・習慣化できるのではないでしょうか。 簡単にできる街歩きの「工夫」として、「テーマ」づくりが考えられます。 「坂のある街歩き」「アニメの聖地巡礼」

【内容】 これまでの論点整理 「歩ける街」から「歩くことを楽しめる街」へ 「歩く事+αの仕掛け」が、歩いて楽しい街をつくる 1.これまでの論点整理 注目を浴びる「街歩き」ですが、誰でもが気軽に参加できる「実施率の高さ」が重要です。 健康だけでなく、コミュニティ形成や街への愛着、防災まちづくりからイノベーションまで、様々な「街づくり」の促進役として、期待されます。 街あるきの効用については、生活習慣

【内容】 回遊性に関する研究の沿革 回遊性の定義 回遊性の工夫 1.回遊性に関する研究の沿革 「回遊性」という言葉は、1990年代以降、街づくりにおいて、頻出するようになります。 デジタル大辞泉によると、元の意味は、「魚や鯨が、産卵などのために、定期的に移送する性質」ですが、これが転じて、「買い物客が、店内や商店街を歩き回る事」となっています。 「滞留時間と買い物単価とは、比例する」という研究報告

bottom of page