【内容】
1.小田急電鉄の挑戦
2.「三方よし」の必要性
3.「お客さま」から「参画者」へ
1.小田急電鉄の挑戦
小田急電鉄は、コロナ禍を経て、「社内ベンチャーの育成」に力を入れています。
「クライマー制度」という独自の社内ベンチャー制度で、社内からアイディアを募り、さまざまなプロジェクトを事業化しています。
特徴的なのは、「地域の課題解決」というスタンスで、デジタルを活用して、鉄道とは直接関係のないプロジェクトを事業化している点です。
ごみ収集支援サービスの「Wooms」や、獣害防止サービスの「ハンターバンク」、町内会などのコミュニティ支援サービスの「一丁目一番地」などが、自走しだしています。
まだまだ事業規模としては、小さいですが、「沿線課題の解決が、沿線価値の向上につながる」という「地域価値創造型企業」というビジョンに基づき展開しています。
企業としての継続性を考える時、売り上げの拡大などの「事業力」はもちろん必要ですが、これと並行して、社員のモチベーションなどの「組織力」と、地域社会との共生を通じた「社会力」とが「三位一体」になる必要があると考えます。
売り上げノルマを独り歩きさせるマネジメントが、さまざまな企業不祥事につながっている事は、周知の事実です。
鉄道会社の社員が、地域の課題解決を通じて、働き甲斐を実感していくことは、「組織力」と「社会力」の向上につながります。
小田急電鉄の試みは、鉄道会社の経営スタイルのロールモデルになるのではないでしょうか?
2.「三方よし」の必要性
駅の業務改革は、とかく「コストダウン」の文脈が強調されます。
もちろん 人手不足に対応した「合理化」は必要ですが、その皺寄せが「お客さま」に向いてしまうと、理解と協力は得られないのではないでしょうか?
「シン駅3.0の推進」には、①お客さま②鉄道会社③街の「三方よし」を実現する、「駅概念のアップデート」が必要です。
①お客さま良し
駅概念のアップデートによって、お客様にとって、単なる「交通結節点」や、「立ち寄りショッピングの場」から、プチ目的地として、通うメリットがある場所になります。
ジモティラボに通い、仲間と出会い、街の課題に対して、共同で検討・研究して、解決方法を見つけ、役割分担して、提言・発表する。
或いは、街の魅力を探索・発見し、それを相対的・体型的に表現・発信する。
このような交流の中で、地元企業での仕事が見つかるかもしれません。
また、リアルな顧客接点であれば、隙間時間を使って、企業の商品・サービスへのモニタリングに協力することで、ポイントを獲得することが可能です。
②鉄道会社良し
駅のアップデートは、もちろん鉄道会社にとってプラスになります。
まず駅係員の通常時業務に、新たな収益事業を入れ込むことによる収益の獲得になります。
駅係員にとっても、従来の「出来れば避けたい」受け身での案内・相談から、お客さまと積極的に交流・対話していくことが、収益につながるコミュニティ・マネジャーに役割が転換します。
半・公共人という駅係員への信頼を元に、どんどんコミュニケーションをとることが、働きがいにつながります。
③街も良し
駅のアップデートは、街にとってもプラスになります。
街の中心である駅周辺が常に賑わい、しかも地域に関心を持つコミュニティも育まれ、地元企業の活性化にもつながります。
3.お客さまから参画者へ
技術革新に伴い駅係員は、駅業務の省力化・負担軽減を踏まえて、「駅コミュニティのマネジャー」になれるのではないでしょうか。
駅コミュニティ・マネジャーの役割は、各街の特性・課題を踏まえながら、乗降客と企業や街にニーズとをマッチングしていく事になります。
このプロセスを通じて「ずっと居られる、お互いに出番がある、なんとなく集まれる、みんなで支える半・公共スペース」としての駅に、「育てていく事」が可能になると考えます。
駅だけではスペースに限りがあり、魅力化にも限界がありますから、駅を起点にしたエキマチに、足を伸ばしてくれるように仕掛けることも可能です。
「シン駅3.0」になると、駅と地域住民有志との関係は「お客さま」から「参画者」に、進化していくのです。
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