【内容】
1. 顧客接点のさらなる活用
2. ライフスタイルの共創
3. 「共創」から「競創」へ
1.顧客接点のさらなる活用
セブンイレブンジャパンの2022年年間売り上げは約5.1兆円で、その60%をオリジナル商品が占めると言われます。
同社では、1日1300万人の顧客(POS)データを元に、単品・個店・客層別の情報を、サプライヤーとも即時共有し、商品開発や製造計画、在庫管理や受発注に活用されています。
顧客データによる仮説・検証を繰り返し、商品開発や店舗オペレーションに活かして、お客様の支持を得た成果だと言えます。
これを駅に活かせないでしょうか?
もちろん駅が、販売の場所でないことは理解していますが、鉄道利用者数は、「スモールマス」というボリュームになり、駅が顧客接点になる可能性については、前述した通りです。
既存のメーカー商品を単に並べるだけでなく、駅利用客の行動データを元に、メーカーを巻き込んで、独自の商品を企画・提案していく未来を、妄想できると考えます。
安全・正確・円滑という鉄道会社の特性を生かすと、高級でもカジュアルでもない、「スタンダードなライフスタイル商品」とイメージが合致します。
さしずめ「鉄道会社版MUJI」でしょうか?
鉄道利用客と連携し沿線のスモールマスをターゲットにした商品開発です。
2.ライフスタイルの共創
さらに「沿線スタンダード」の商品開発に参画意欲を持つ鉄道利用客を巻き込めないでしょうか。
進捗の共有など手間のかかる部分もありますが、クラウドファンディングが商品開発&セールスプロモーションに活用される時代です。
沿線共創型で、販売時にはファンがついているような商品開発は、非常に有効だと考えます。
鉄道各社が、それぞれの沿線の特徴を活かして、ライフスタイル・ブランドを共創するプロジェクトを立ち上げるのです。
自分の住む沿線に興味を持つ人、愛着のある人は非常に多いと思います。
鉄道会社の体質でもある「(MUJI的?)スタンダード感」を基盤にして、そんな人達の意見を取り入れながら、「衣・食・住・遊」に関する商品・サービスを、開発・販売していくプロジェクトです。
各鉄道会社の沿線ごとに、客層・文化・風土が少しずつも変わりますから、沿線ごとに個性的なバリエーションのある商品が、開発されることが期待できます。
3.「共創」から「競創」へ
オンライン上では、時間や距離の感覚がなくなってしまう現代では、フラットな情報世界の中で存在感を持たせるために、「沿線・街とのつながり」が、有効になっていくのではないでしょうか。
沿線競争によるライフスタイル・ブランドの開発は、沿線価値の向上や回遊客・観光客の促進にもつながります。
さらに「競創プラットフォーム化」によって、話題性を集めるコンテンツが可能です。
AKB48はテレビ中心のアイドルシーンに対して、「毎日劇場で公演をして、成長の過程が見えるアイドルが、面白そう」という秋元康氏の着想から生まれました。
2005年12月に秋葉原の専用劇場がオープンし、最初の観客は7人とごく少数でしたが、3ヶ月後には劇場がいっぱいになります。
「成長するアイドルに対するシンパシー」は、ネット上の口コミ力で、一気に拡散していきます。
ファンたちは、各々が推す特定のメンバーを応援する中で、彼女たちが鎬を削り、成長する姿を、ファン自身の応援との相関関係で「物語化」したと言えます。
「AKB」とは、各メンバーが多様な成長をみせ、ファンとの関係を、競っていくための、プラットファームだったと言えます。
このプラットフォームは、ファンに対して、チーム全体を推すと同時に、メンバー一人を決めて推す、競技場の役割も担っています。
これはプロ野球や Jリーグ、Bリーグなどと、同様の仕組みだと言えます。
プロスポーツは、リーグ戦形式で試合を繰り返し、継続的なコンテンツとして認知・定着させています。
鉄道会社は将来的には、リアルな集客・旅客だけなく、人・駅・沿線の活動を編集して、オンライン上で発信するコンテンツ事業者に、なっているかも知れません。
「なりたい未来、好きな街、ライフスタイル」をお客様と一緒に作りながら、他の沿線と「競い合うプロセスを経て、磨きをかけていく」というスタンスは、ステイクホルダー資本主義の潮流に相応しいゴールではないでしょうか。
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