【内容】
地域活性化の糸口
小さな流通革命の拠点
広域と地域との直流拠点
1.地域活性化の糸口
「道の駅」では、1991年の社会実験の時点で、地域産品の PRをしたり、地域のコミュニティが活性化されたなどの副次的な効果が報告されています。
これにより、「道の駅」には、道路利用者の利便性を向上させると言う当初の想定とは別に、地域振興や活性化の効果が期待されるようになりました。
地元産品の充実・拡大、地元農産物・海産物などの直売所の導入、レストランなどでの地元食材を利用した食事メニューの提供などが、利用者の新たなニーズを引き起こすとともに、各道の駅の魅力となり、差別化の源泉になっていきます。
今まで廃棄していた、規格外の地元名産品を活用したオリジナル商品が、ヒットの鍵になっているのです。
年間300万人が訪れ、直売所の人気が高い「あ・ら・伊達な道の駅」では、200軒以上の農家が毎朝とれたての野菜や味噌や漬物などを出品しています。
春は天然山菜、夏はトウモロコシ・枝豆、秋はキノコ類、冬は凍り豆腐といった具合で、名物の栗団子やおおくぼかりんとう、凍り豆腐かりんとう、甘辛かりんとう、ごぼうかりんとうなども人気です。
道の駅を活用することで、これまでは流通市場が求める「定型規格、大量・安定供給、安価提供」の農作物を作るしか、選択肢がなかった農家の人たちが、独自の裁量で様々な種類や品種の農作物を育て、加工して販売することが可能になっています。
2.小さな流通革命の拠点
「道の駅」は流通ネットワークに乗らない希少食材を提供する、「小さな流通革命の拠点」とも言えるのです。
「小さな流通革命の拠点」として成立しているのは、道の駅が「広域集客、行楽目的、土産消費」という特性を持っているからです。
周辺人口だけではなく広域から集まるお客様が、行楽気分の開放感の中で、日常生活での節約志向とは異なるモードで、こだわり食材を自分へのご褒美感覚あるいはお土産感覚で買ってしまうのではないでしょうか。
一種の非日常ショッピングという特性が、「せっかく来たのだから」「どうせ買うのだったら」という自分への言い訳が働かせ、ついついいろいろな農作物を「お試し」感覚で買ってしまうのだと思います。
そして「お試し」してみて、「期待以上に美味しかった」「思ったよりもコスパが良かった」と合格点がつけられると、ネットで継続購入される可能性があります。
3.広域と地域の直流拠点
道の駅の「広域集客、行楽目的、土産消費」という特性は、「作っても販路開拓ができない」という日本の生産者にとって大きなチャンスと言えます。
従来の鉄道網や流通ネットワークは、東京を頂点にして、地方中核都市、県庁所在地、拠点都市、中山間地域という順番でツリー状のヒエラルキーを形成していました、
最大の市場である東京にアプローチするには、このヒエラルキーに沿った役割で、規定された農作物を供給し、限られた流通対価を受けとるしかなかったわけです。
ところが「道の駅」では、ダイレクトに広域(東京)からの集客を見込むことが可能で、地域の人たちがこの広域客と直接つながる機会ができました。
道の駅は広域と地域との直流拠点なのです。
さらに「道の駅」という位置付けが、閉鎖的なコミュニティになりがちな地域においても、「オープンな空気感を伴った環境」を形成しています。
地域内外からの利用者の増加は、本来地域経済の衰退によって地元店舗が閉店していく中で、買い物先を失った高齢者を中心とした地元住民自身が利用すると言う状況を作り出しています。
当初は物品やサービスを提供する側であった地元住民たちが、飲食やサービスを受ける立場で利用し、内外の交流が促されるようになっています。
このように「道の駅」が持つ「広域との直流機会&オープン環境」とは、人口減少社会の新しい地位拠点の可能性を感じさせます。
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