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観光産業3.0⑤ 観光の本質と次世代への期待

2020年秋にコロナ禍の沈静時期を狙って GO TOトラベル事業が推進され、日帰り旅行の「旅行経験率」が14.05%(2019年)から21.27%に跳ね上がりました。抑制された観光欲求に加えて、自粛生活のストレスからの解放が重なった結果だと推察されます。「日常のストレスから解放されるため」或いは「気分転換のため」といった間接的に表現されながらも、実は旅をする最も根本的な動機として「日常とは違う場所に足を踏み入れる」ことによって「いつもとは違う視線で自分を顧みる機会」が求められているのではないでしょうか。それまで鬱積した心の中の澱みを一掃しようという願いがあるのではないでしょうか。

大前研一氏の「人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える、この三つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは『決意を新たにする』ことだ」という言葉にあるように、自分を顧みる最も身近な機会が旅行なのです。

ここで旅行と観光の定義を確認すると、旅行とは非日常な場所への移動と定義され、観光とは非日常な場所における娯楽、飲食行動全般を指すと言われます。ツーリズムとは旅行と観光双方を合わせた定義という事になるのでしょう。

観光の要は日常とは異なる場所での、新しい発見や共感を伴う体験、人との交流という「リアル体験」と言えます。多くの人々の観光行動の蓄積が、空間的な距離を超えた人と人、人と自然とのリアルな関係の再構築を促します。市場経済の浸透と情報技術の進展によって、モノ(商品)の先にある人、自然の存在が見えにくくなった現代において、観光を通じた新しい関係、いわゆる顔の見える関係が切り結ばれつつあります。観光産業の関係者はそろそろモノやサービスの提供だけでなく、それを通じた関係者や来訪者との交流や関係づくりを軸に、何を目的にすべきかを考える必要があるのではないでしょうか。観光産業は観光行動を支援する個別サービスの質を競うスタンスから、観光行動を通して得られる「価値や意味の向上」を目指して深掘り・発信していく段階にあるのです。

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