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第3章 街を育てる基本原則

  • 8月28日
  • 読了時間: 4分

― Mixed Use × Active Frontage が街を変える ―


【内容】

1.用途を混ぜることが街の活力を生みます

2.建物の一階が街の表情を決めます

3.街を設計する時代へ



1.用途を混ぜることが街の活力を生みます

メルボルンの街を歩いて最初に感じたのは、「時間によって街の表情が変わる」ということでした。

朝は通勤する人がコーヒーを片手に歩き、昼には近くのオフィスワーカーや観光客がカフェや広場で思い思いの時間を過ごしています。夕方になると仕事帰りの人がレストランやバーへ立ち寄り、夜になっても街には適度な賑わいが続きます。

休日になると、今度は家族連れや学生、旅行者が街の主役になります。

つまり、一日の中で街を利用する人が自然に入れ替わっているのです。

この背景にあるのが、「Mixed Use(ミクストユース)」という考え方です。

住宅、オフィス、商業施設、ホテル、文化施設などを一つのエリアに適度に混在させることで、一日を通じて人の流れを生み出しています。

日本では、住宅地、商業地、業務地を明確に分ける都市計画が中心でした。そのため、オフィス街は夜になると人がいなくなり、住宅街は昼間に静かになります。

一方、メルボルンでは、一つの街の中に多様な機能が共存しています。

用途を混ぜることは、単に建物を混在させることではありません。

異なる生活リズムを持つ人々が同じ街を共有することで、街そのものに時間的な厚みが生まれるのです。


2.建物の低層階が街の表情を決めます

もう一つ印象的だったのが、建物の低層部分のつくり方でした。

メルボルンでは、新しい建物の一階には、小さな店舗やカフェ、レストランなど、人が気軽に立ち寄れる用途が数多く配置されています。

ガラス越しに店内の様子が見え、歩道にはテラス席が並び、人々が自然に会話を楽しんでいます。

歩いているだけで、「少し寄ってみようかな」と思わせる雰囲気があります。

さらに建物のデザインでも均質なファサードにならないよう工夫が求められます。

多彩なデザインがヒューマンスケールの居心地の基盤になり、上部に超高層ビルが建っていることに気付かないこともあります。

これが「Active Frontage(アクティブフロント)」という考え方です。

建物は敷地の中だけで完結するものではありません。

歩道との境界に人の活動を生み出し、街へ賑わいをにじみ出させる役割を担っています。

対照的に、日本では大規模な公開空地や無機質な壁面が続く建物も少なくありません。

もちろん、公開空地そのものが悪いわけではありません。

しかし、人が立ち止まりたくなる仕掛けがなければ、広い空間であっても街とのつながりは生まれません。

街を豊かにするのは、建物の高さでも大きさでもありません。

人と街が出会う「低層階」のデザインなのです。


3.街を設計する時代へ

メルボルンの街づくりから学んだ最も大きなことは、「建物を設計する」のではなく、「街を設計する」という考え方でした。

建物単体が優れていても、それだけでは魅力的な街にはなりません。

人が歩きたくなる街並みがあり、小さな店をのぞきたくなり、ベンチでひと休みし、カフェで過ごしたくなる。そうした日常の行動が積み重なることで、街は少しずつ魅力を増していきます。

その意味で、Mixed UseとActive Frontageは単なる建築手法ではありません。

人々の暮らし方や過ごし方をデザインするための都市のルールだといえます。

日本でも近年、複合開発は数多く行われています。しかし、建物の用途を複合化するだけでは、メルボルンのような街にはなりません。

街全体の歩行環境を考え、低層階部分を街へ開き、人が自然に滞在したくなる空間を積み重ねていくことが重要です。

街づくりの主役は建物ではなく、人です。

だからこそ、これからの都市計画には、人の行動を中心に据えた視点が求められます。

次章では、その行動をさらに豊かにしている「レーンウェイ」という都市空間に注目します。メルボルンでは、かつて裏路地だった空間が、今では街の魅力を象徴する場所へと生まれ変わっています。その秘密を探っていきたいと思います。

 
 
 

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