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第3章 日本文化は情感を育てる知恵だった 情感資本によるしなやかな社会づくり ③

  • 7月31日
  • 読了時間: 4分

【内容】

1.日本文化の本質とは何でしょうか

2.日本文化は情感を美しく分かち合ってきました

3.文化とは、情感を分かち合う生活の知恵です

   

1.日本文化の本質とは何でしょうか

「日本文化」と聞くと、多くの人は何を思い浮かべるでしょうか。

茶道や華道、能や歌舞伎、あるいは神社やお寺を思い浮かべる人もいるでしょう。

一方で、民藝や民謡、祭りや年中行事など、もっと暮らしに近いものを思い浮かべる人もいるかもしれません。

こうして並べてみると、日本文化には実にさまざまな形があります。

しかし、私は長い間、「これらに共通するものは何なのだろう」と考えてきました。

例えば、民藝は日用品です。

民謡は歌です。

祭りは行事です。

社寺は場所です。

それぞれ形も役割も違います。

にもかかわらず、私たちはどれも「日本文化」と呼んでいます。

その理由はどこにあるのでしょうか。

私は、その共通点は「人の情感」と深く関わっていることだと思います。

人は嬉しいときに祝い、悲しいときに祈ります。

季節が巡れば花を愛で、大切な人を失えば手を合わせます。

つまり、日本文化とは、暮らしの中に生まれる様々な情感と向き合い、それを人と分かち合うために育まれてきた知恵だと言えます。

文化とは、美しいものを集めたものではありません。

人がより人間らしく生きるために、長い時間をかけて磨かれてきた暮らしの知恵なのです。


2.日本文化は情感を美しく分かち合ってきました

日本には、「もののあはれ」という言葉があります。

桜は満開だから美しいだけではありません。

散っていく姿にも美しさを感じます。

紅葉も、やがて冬が来ることを知っているから心を動かします。

日本人は昔から、移ろいゆくものの中に人生を重ね合わせてきました。

それは、民謡にも表れています。

民謡には、農作業の苦労や家族への思い、旅立ちや別れなど、暮らしの中で生まれるさまざまな情感が歌われています。

歌うことで、苦労はみんなのものになり、悲しみは少しだけ軽くなります。

民藝も同じです。

日々使う器だからこそ、そこに美しさを求めました。

美しい器は、毎日の暮らしを少しだけ豊かにしてくれます。

祭りもまた、人々の願いや喜び、不安を共同体で分かち合う時間でした。

豊作を祝い、災害からの復興を願い、人々は一緒に笑い、一緒に祈ってきました。

このように見ていくと、日本文化は情感を消そうとしてきたのではありません。

悲しみも、不安も、喜びも、そのまま受け止めながら、人と分かち合える形へと育ててきたのです。

私は、このことこそが、日本文化の最も大きな特徴ではないかと思います。


3.文化とは、情感を分かち合う生活の知恵です

ここまで見てきたように、日本文化にはさまざまな形があります。

しかし、その根底には一つの共通した考え方があります。

それは、人間の情感を大切にするということです。

嬉しい出来事は祝いとして共有する。

悲しい出来事は祈りや供養として受け止める。

季節の移ろいは花見や祭りとして楽しむ。

毎日の暮らしは美しい道具によって彩る。

つまり、日本文化は、人間の情感を、誰もが分かち合える形へと育ててきたのです。

私は、本シリーズの中で文化を次のように考えています。

文化とは、人間の情感を、みんなで分かち合える形へと育てる生活の知恵である。

この定義に立つと、文化とは美術館や伝統芸能だけを指すものではありません。

日々の挨拶も、地域のお祭りも、お気に入りの喫茶店も、誰かと語り合う時間も、人の情感を分かち合い、生きる意味を育てるものであれば、すべて文化の一部になります。

そして、この知恵は決して昔だけのものではありません。

むしろ、孤独や不安が広がる成熟社会だからこそ、改めて必要になっているのではないでしょうか。

では、この日本文化が長い時間をかけて育んできた知恵を、現代の暮らしにどう生かしていけばよいのでしょうか。

次章では、その答えを探るために、日本文化に共通して受け継がれてきた「作法」という視点から考えていきたいと思います。

 
 
 

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