top of page

第2章 成熟社会は「意味」を求める時代になる 情感資本によるしなやかな社会づくり ②

  • 7月29日
  • 読了時間: 4分

【内容】

1.人は「意味」があるから生きていける

2.文化は人生に意味を与えてきました

3.成熟社会には、新しい生活規範が必要になります

 

 

1.人は「意味」があるから生きていける

私たちは、不安や悩みをできるだけなくしたいと思っています。

病気になりたくない。 失敗したくない。 孤独になりたくない。

もちろん、それは自然な気持ちです。

しかし、本当に人は「不安そのもの」に苦しんでいるのでしょうか。

例えば、子どもが初めて一人で学校へ行く朝。

親は心配になります。

受験の日には、多くの人が緊張します。

新しい仕事に挑戦するときも、不安になります。

けれども、その不安を「なくしたい」と思う人は少ないでしょう。

なぜなら、その不安には意味があるからです。

大切な子どもだから心配する。

夢があるから挑戦する。

守りたいものがあるから悩む。

私たちは、不安そのものではなく、「この不安には意味がある」と思えることで前へ進むことができます。

反対に、意味を見失ったとき、人は同じ出来事でも深く傷つきます。

仕事が評価されない。

誰にも必要とされていない気がする。

地域とのつながりが感じられない。

このような状態が続くと、人は「何のために生きているのだろう」と考え始めます。

成熟社会では、物質的な不足よりも、この「意味の不足」が大きな課題になっているのではないでしょうか。


2.文化は人生に意味を与えてきました

では、人は昔からどのように人生の意味を育ててきたのでしょうか。

私は、その答えが文化の中にあると思います。

例えば、お正月には初詣へ行きます。

春には桜を見に行きます。

秋には祭りがあります。

年末には一年を振り返ります。

どれも、生きていくために絶対必要なことではありません。

初詣へ行かなくても一年は始まります。

桜を見なくても春は来ます。

祭りに参加しなくても生活はできます。

それでも私たちは、毎年同じことを繰り返します。

それは、その出来事に意味を与えているからです。

桜を見ることで、

「今年も春が来た。」

と思います。

祭りに参加して、

「今年もみんな元気だった。」

と感じます。

お盆には亡くなった家族を思い出し、自分が多くの人につながっていることを実感します。

文化とは、便利さを生み出す仕組みではありません。

人生の出来事に意味を与え、その意味を人と分かち合うための知恵なのです。

だから文化は、長い年月を経ても受け継がれてきました。

そこには、人が幸せに生きるための知恵が詰まっているからです。


3.成熟社会には、新しい生活規範が必要になります

高度経済成長の時代には、「より速く、より多く」という価値観が社会を発展させました。

それは当時の社会にとって、とても合理的な考え方でした。

しかし成熟社会では、人々が求めるものが変わり始めています。

便利さだけでは満たされない。

効率だけでは幸福になれない。

そんな時代だからこそ、「どう生きるか」が問われるようになりました。

私は、これから必要なのは、新しい制度をつくることだけではないと思っています。

一人ひとりが、日々の暮らしの中でどのように人と関わり、どのように喜びや哀しみを分かち合い、どのように地域への愛着を育てていくのか。

そうした日常のあり方そのものを見直すことが大切なのではないでしょうか。

つまり、成熟社会には、新しい生活規範が必要なのです。

もちろん、それは昔の暮らしへ戻ることではありません。

また、日本文化をそのまま復活させることでもありません。

私たちが目指すべきなのは、日本文化が長い時間をかけて育んできた知恵を、現代の暮らしに合う形へ編集し直すことです。

その知恵は、民藝や民謡、祭りや社寺など、一見すると異なる文化の中に共通して息づいています。

次章では、その共通する本質とは何なのかを、日本文化全体を俯瞰しながら考えていきたいと思います。

 
 
 

最新記事

すべて表示
第7章 社寺は情感を育てる文化基盤だった 情感資本によるしなやかな社会づくり ⑦

【内容】 1.社寺は、人生に寄り添う場所でした 2.社寺には、人々の情感を育てる作法がありました 3.現代にも、新しい社寺が必要です 1.社寺は、人生に寄り添う場所でした 神社やお寺というと、多くの人は「願い事をする場所」という印象を持っているかもしれません。 初詣では一年の健康を祈り、受験では合格を願い、お盆にはご先祖を供養します。 しかし、よく考えてみると少し不思議です。 お願い事がなくて

 
 
 
第6章 MINYOは暮らしを文化へ育てる 情感資本によるしなやかな社会づくり ⑥

【内容】 1.文化は、特別な日ではなく日常から生まれます 2.MINYOは、暮らしの情感を分かち合う作法です 3.小さな作法が、やがて地域文化になります 1.文化は、特別な日ではなく日常から生まれます 「文化」という言葉を聞くと、多くの人は伝統芸能や美術館、歴史的な祭りなどを思い浮かべます。 もちろん、それらも文化です。 しかし、本当に文化は特別な場所だけで育まれるものなのでしょうか。

 
 
 
第5章 現代のMINYOという発明 情感資本によるしなやかな社会づくり⑤

【内容】 1.私たちは、新しい作法を必要としています 2.MINYOとは、現代の作法です 3.MINYOは文化を未来へ編集する試みです 1.私たちは、新しい作法を必要としています これまで見てきたように、日本文化は長い時間をかけて、人々の情感を分かち合う作法を育ててきました。 民謡は歌を通して、人々の喜びや苦労を共有しました。 祭りは、一年の実りや願いを地域全体で祝い、共に生きる喜びを育て

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page