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第10章 しなやかな社会へ 情感資本によるしなやか社会づくり ⑩

  • 8月21日
  • 読了時間: 4分

【内容】

1.効率だけでは、幸せな社会はつくれません

2.MINYOは、一人ひとりが始められる文化です

3.情感資本が、しなやかな社会を育てます

 

 

1.効率だけでは、幸せな社会はつくれません

本シリーズは、「効率が悪い」と言いたいわけではありません。

むしろ、効率はこれからも社会に欠かすことのできない基盤です。

医療も、防災も、交通も、行政も、効率があるから私たちの暮らしは支えられています。

しかし、効率には得意なことと苦手なことがあります。

効率は、物を届けることはできます。

けれど、人に生きる意味を届けることはできません。

効率は、時間を短縮できます。

けれど、人との信頼や愛着を短期間で育てることはできません。

効率は、利益を生み出せます。

けれど、人の喜びや哀しみを分かち合うことはできません。

だから成熟社会では、「効率か文化か」という二者択一ではなく、「効率と文化」という二つの豊かさが必要になります。

効率が暮らしを支え、文化が人生を支える。

この二つがそろって初めて、人は安心して未来を描くことができるのではないでしょうか。

成熟社会とは、効率を否定する社会ではありません。

効率の上に文化を重ねる社会なのです。


2.MINYOは、一人ひとりが始められる文化です

本シリーズでは、日本文化が育んできた作法を現代に編集し直したものを「MINYO」と呼びました。

ここで大切なのは、MINYOは誰か特別な人だけが行うものではないということです。

芸術家だけのものでもありません。

行政だけのものでもありません。

地域のリーダーだけのものでもありません。

毎朝あいさつを交わすこと。

お気に入りの喫茶店へ通うこと。

季節を感じながら街を歩くこと。

近所の人へ「おいしかったですよ」と店を紹介すること。

誰かの話に耳を傾けること。

そうした小さな行動の一つひとつが、人とのつながりを育て、地域への愛着を育みます。

MINYOとは、特別なイベントではありません。

暮らしを少しだけ豊かにする作法です。

だから、誰でも今日から始めることができます。

一人の小さな実践は、やがて家族へ広がり、仲間へ広がり、地域へ広がります。

文化とは、いつの時代もそのようにして育ってきました。

私は、これからの文化も同じだと思っています。


3.情感資本が、しなやかな社会を育てます

本シリーズでは、「情感資本」という新しい豊かさを提案しました。

情感資本とは、人々が暮らしの中で喜びや哀しみを分かち合い、その積み重ねによって育まれる、人と地域の豊かさです。

それは数字には表れません。

けれど、「この街が好きだ」と思える気持ちや、「この人たちと一緒に暮らしたい」と感じる安心感として、確かに存在しています。

そして、その情感資本を育てる現代の作法がMINYOです。

私は、成熟社会が目指すべき姿とは、誰もが強くなれる社会ではないと思います。

人は誰でも、悩みます。

迷います。

悲しみます。

だからこそ必要なのは、弱さを隠す社会ではなく、喜びも哀しみも自然に分かち合える社会です。

私は、そのような社会を「しなやかな社会」と呼びたいと思います。

しなやかな社会とは、人が失敗しない社会ではありません。

失敗しても支え合える社会です。

悲しまない社会ではありません。

悲しみを一人で抱え込まなくてよい社会です。

効率を競い続ける社会ではありません。

暮らしの中に情感を育み、その豊かさを次の世代へ受け継いでいく社会です。

その未来は、決して遠いところにはありません。

私たち一人ひとりが、今日、誰かと笑い合うこと。

季節の移ろいに心を寄せること。

街を少しだけ好きになること。

そんな小さなMINYOから始まります。

日本文化が長い時間をかけて育んできた知恵は、過去の遺産ではありません。

成熟社会を生きる私たちへの、大切な贈り物です。

その知恵を現代の暮らしへと編集し、情感資本を育みながら、しなやかな社会を次の世代へ手渡していくこと。

それが、本シリーズを通して私が最も伝えたかった願いです。

 
 
 

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