【内容】
イノベーション・ネイバフッド
知識交流を促す5つの仕掛け
第一回はアドバイザーをお願いしている東京都立大学の山村崇氏による「知識交流の舞台としての街」についての話題提供です。
1.イノベーション・ネイバフッド
冒頭にアメリカ東海岸において、快適・便利な郊外のオフィスパークから、雑多で出会いの多いボストンの「街なか」に、企業が回帰している動向に触れられています。
さらに産業の集積動向は、「小さなエリア」に集積する傾向にあると言います。
1970年代の重厚長大産業が主流の時代には、ヨーロッパでは、北イタリアからイギリスにかけての「ブルーバナナ」と言われるエリアが産業の中心でした。我が国では東京から北九州までを「太平洋ベルト地帯」と呼んでいた時代です。
1990年代のサービス産業の時代には、欧州では都市圏単位で「グレープモデル」が生まれました。日本では首都圏をはじめとした都市圏エリアにあたります。
さらに2000年以降の ITなどの知識産業では、渋谷、六本木、丸の内などの「町単位」に集積するようになります。
「街なかのコンパクトエリア(イノベーション・ネイバフッド)」が、今後のイノベーションの中心になる傾向にあるという事です。
そして山村先生は、このイノベーション・ネイバフッドを「ぬか床」に例えます。
コミュニティを形成する「圧縮力」が必要だけれど、それだけでは「腐ってしまう」ため、外部の風を吹き込む「拡散力」も必要だという事です。
2.知識交流を促す5つの仕掛け
山村先生は「裏原宿研究」を通じて、裏原宿のクリエイティビティは、街なかや店先が出会いの場、現場知の場として機能している点を指摘されています。
これらをもとにイノベーション・ネイバフッドの5つの仕掛けを提唱されました。
多様なオフィスストック:渋谷の都市再開発と共に、五反田方面に新興企業が流出している動向を踏まえ、大規模で高賃料のオフィスばかりでなく、小規模なスタートアップの拠点となるオフィスを含めた多様なオフィスストックが必要です。
シンボリックなスタートアップ拠点:パリやニューヨークの事例を引き合いに、都市政策のシンボルとして、街の中心部に大規模なスタートアップ拠点を整備することが有効だということです。
様々な出会いのある居場所:欧米では公共側で提供されることが多いようですが、研究者と産業側、スタートアップと大企業など様々な属性の人たちが、日常的に出会える場が必要です。
異刺激を提供するオアシス:オフィスワークでの疲労からの回復を促すためには、都心の自然や美術館などの、異刺激を提供する機能が有効です。
アーバンアメニティ:多様な出会いと交流の場として、ナイトライフを含めたアーバンアメニティを求めているということです。
「知識交流の舞台」として街を検討するには、オフィス関連機能である①②だけでなく、広義の街機能として③④⑤の提供が、重要だということになります。
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