内容】
アート業界の2つの潮流
関係づくりの起点としてのアート
ビジネスの関係に「揺らぎ」を与えるアートの力
第二回部会は、アートプロデューサーの芹沢高志氏に「知識交流の機会としてのアート」というテーマで話題提供いただきました。
芹沢さんは、四谷・東長寺のオルタナティブスペースの開発運営を皮切りに、帯広、別府、横浜、埼玉など各地の芸術祭のプロデューサーを歴任されてきました。
1.アート業界の2つの潮流
知識交流の機会としてのアートの前提として、アート業界における2つの潮流を提示されました。
アートからアートプロジェクトへ
現代アートの動向として、従来からアートと分類されている「絵画や彫刻」などの分野から、状況や行動そのものをアートとして提示する「アートプロジェクト」への拡張を指摘されています。
リクリット・ティラヴァーニァのように、「世界各国の美術館やギャラリーでタイカレーやパッタイを振る舞う」パフォーマンスをアートプロジェクトとして提示する例を挙げられました。
ホワイトキューブから街へ
アートの発信場所についても、近代建築で普及した美術館やギャラリーの「ホワイトキューブ」から、「街」に飛び出していると言います。
ホワイトキューブ的な空間は、アート表現を邪魔するモノの無い反面、手掛かりがなく表現の限界を感じさせ、街やコミュニティーの中に入り込み、その文脈を拡張する方向になっていると言います。
2.関係づくりに起点としてのアート
芹沢さんが芸術祭を通じて実感したのが、「継続的なアートとの接点の力」だということです。
別府のアートプロジェクトのおける「スナック優子」は、第一回展でアート作品としてリノベーションされたスナックです。それが第二回展では、開催関係者やアーティスト、ボランティアの溜まり場になり、それを目当てに訪れる鑑賞者との接点になっていたと言います。
埼玉のアートプロジェクトでは、それを意図的に仕掛ける為に、「アートステーション」が設けられました。
この場所はプロジェクトの準備室でもあり、開催関係者とアーティストが打ち合わせする場所にもなっていました。
そこにボランティア応募者が集まり、鑑賞者の案内所としても機能しました。
単に開催期間中に、鑑賞対象としてアートと接点を持つだけでなく、準備段階から関係者やアーティストと対話し、継続的な関係を持つことによる、コミットメントや行動変容の力は、アートプロジェクトの存続に非常の効力を発揮したと言います。
アートを単に鑑賞対象として扱うのではなく、「関係づくりの起点」として捉え、アートをきっかけにした多面的&継続的な関係づくりこそが重要だということです。
まとめとして、「フリンジ(=非主流)」としてのアートの可能性と、単に発表だけではなく、制作・生産の場が持つ「現場知の重要性」を強調されていました。
3.ビジネスの関係に揺らぎを与えるアートの力
グループワークを経て、「アートは、分からないもの」だからこそ、これに関わる人たちの関係性を「フラット」にしてくれる。
「アートプロジェクトは、シンデレラ的な幻想性」を纏っているからこそ、「幅広い人たちを惹きつけ、巻き込むことができる」のだという認識が共有されました。
それらの議論を踏まえて、山村先生が、3原則を提示され、
バウンダリー:異文化をつなぐ力
ミステリアス:関係者がフラットになれる多い存在感
カナリア:時代変化の予兆を示す力
これらをまとめて、「アートにはビジネスマンをリミナリティ(曖昧、揺らぎ)状態にする力がある」とコメントされました。
知識交流の機会としてのアートの作用について、朧げながら輪郭が浮かび上がってきました。
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