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知識交流の機会としてのアート 文化都心マネジメント ⑥

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2月21日
  • 読了時間: 3分

内容】

  1. アート業界の2つの潮流

  2. 関係づくりの起点としてのアート

  3. ビジネスの関係に「揺らぎ」を与えるアートの力

 

 

第二回部会は、アートプロデューサーの芹沢高志氏に「知識交流の機会としてのアート」というテーマで話題提供いただきました。

芹沢さんは、四谷・東長寺のオルタナティブスペースの開発運営を皮切りに、帯広、別府、横浜、埼玉など各地の芸術祭のプロデューサーを歴任されてきました。

 

1.アート業界の2つの潮流

知識交流の機会としてのアートの前提として、アート業界における2つの潮流を提示されました。

  1. アートからアートプロジェクトへ

現代アートの動向として、従来からアートと分類されている「絵画や彫刻」などの分野から、状況や行動そのものをアートとして提示する「アートプロジェクト」への拡張を指摘されています。

リクリット・ティラヴァーニァのように、「世界各国の美術館やギャラリーでタイカレーやパッタイを振る舞う」パフォーマンスをアートプロジェクトとして提示する例を挙げられました。

  1. ホワイトキューブから街へ

アートの発信場所についても、近代建築で普及した美術館やギャラリーの「ホワイトキューブ」から、「街」に飛び出していると言います。

ホワイトキューブ的な空間は、アート表現を邪魔するモノの無い反面、手掛かりがなく表現の限界を感じさせ、街やコミュニティーの中に入り込み、その文脈を拡張する方向になっていると言います。

 

2.関係づくりに起点としてのアート

芹沢さんが芸術祭を通じて実感したのが、「継続的なアートとの接点の力」だということです。

別府のアートプロジェクトのおける「スナック優子」は、第一回展でアート作品としてリノベーションされたスナックです。それが第二回展では、開催関係者やアーティスト、ボランティアの溜まり場になり、それを目当てに訪れる鑑賞者との接点になっていたと言います。

埼玉のアートプロジェクトでは、それを意図的に仕掛ける為に、「アートステーション」が設けられました。

この場所はプロジェクトの準備室でもあり、開催関係者とアーティストが打ち合わせする場所にもなっていました。

そこにボランティア応募者が集まり、鑑賞者の案内所としても機能しました。

単に開催期間中に、鑑賞対象としてアートと接点を持つだけでなく、準備段階から関係者やアーティストと対話し、継続的な関係を持つことによる、コミットメントや行動変容の力は、アートプロジェクトの存続に非常の効力を発揮したと言います。

アートを単に鑑賞対象として扱うのではなく、「関係づくりの起点」として捉え、アートをきっかけにした多面的&継続的な関係づくりこそが重要だということです。

まとめとして、「フリンジ(=非主流)」としてのアートの可能性と、単に発表だけではなく、制作・生産の場が持つ「現場知の重要性」を強調されていました。

 

3.ビジネスの関係に揺らぎを与えるアートの力

グループワークを経て、「アートは、分からないもの」だからこそ、これに関わる人たちの関係性を「フラット」にしてくれる。

「アートプロジェクトは、シンデレラ的な幻想性」を纏っているからこそ、「幅広い人たちを惹きつけ、巻き込むことができる」のだという認識が共有されました。

それらの議論を踏まえて、山村先生が、3原則を提示され、

  1. バウンダリー:異文化をつなぐ力

  2. ミステリアス:関係者がフラットになれる多い存在感

  3. カナリア:時代変化の予兆を示す力

これらをまとめて、「アートにはビジネスマンをリミナリティ(曖昧、揺らぎ)状態にする力がある」とコメントされました。

知識交流の機会としてのアートの作用について、朧げながら輪郭が浮かび上がってきました。

 
 
 

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