【内容】
歴史まちづくり法
歴史に関する法制度の変遷
歴史まちづくりの効果と課題
1.歴史まちづくり法
歴史まちづくり法は2008年(平成20年)に施行されています。
「地域におけるその固有の歴史および伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる力市場価値の高い建造物およびその周辺の市街地とが一体となって掲載してきた良好な市街地を維持・向上させ、後世に継承する」ことを目的にしています。
単に歴史的価値の高い建造物というハードだけでなく、その地域の歴史と伝統を反映した人々の活動というソフトも合わせて継承するという考え方です。
ここでいうソフトとは、下記のような分野になります。
伝統的な工芸技術による生産・販売、祭り
年中行事などの風俗・慣習や民俗芸能
鍛冶や大工、郷土人形制作などの民俗技術
伝統的な特産品を主材料とする料理
地域の伝統的な技術による物品の展示・販売
国の基本方針に基づき、市町村が様々な関係者の参画を得て、「歴史的風致維持向上計画」を作成して申請します。
2023年現在90都市が申請しています。
それぞれ「重点地区」を設定して、ソフト・ハードの整備計画をし、事業補助や、振興支援を行っています。
2.歴史まちづくりに関する法制度の変遷
1919年(大正8年)都市計画法において、「風致地区」が設定されます。当初は史跡や名所などの保存が目的でした。
1960年代後半にかけて、歴史的集落や町並みが消滅していくのに対して、木曽街道や倉敷、金沢、萩などの市町村で、歴史的景観保全を目指す条例が、制定されます。
1975年(昭和50年)「伝統的建造物群保存地区(伝建制度)」を定める法律が制定されます。文化財保護法と都市計画を活用して、歴史的街並みなどの保護を行う施策です。
1996年(平成8年)登録文化財制度が生まれます。国や県指定の文化財よりも緩い規制で、所有者の創意工夫によって、店舗・レストランや事務所など、社会的経済的機能を失う事なく維持保存しやすい制度で、急速に普及しました。
このような変遷を経て、2008年の「歴史まちづくり法(歴史的風致維持向上計画)」に繋がります。
歴史的環境保全のための行政施策は、まず住民が声を挙げ、地方自治体がこれに応えて条例化し、その後から国が法制度や事業制度を整備するカタチで、進んできました。
その対象も「点から線、面へ」と広がり、「ハードだけでなくソフト」も含むようになってきました。
計画策定者も、建築関係者だけで中区、地域住民や NPOなど幅広い人たちが関わるようになってきています。
3.歴史まちづくりの効果と課題
歴史まちづくり法が施行した、2008年から約15年を経て、その効果と課題も明らかになってきています。
2021年に福島大学が88自治体を対象にしたアンケート調査によると、その効果として、下記のような項目が上位に挙げられています。
歴史的建造部との保全・活用:76%
景観の向上:71%
歴史的資産の情報発信:66%
一方で、効果としての評価の低い順では、下記の点です。
伝統産業などを支える人材の確保・育成:30%
交流人口の増加:47%
回遊性の向上:48%
これらのことから、「人材をいかに確保し育成していくか」ということが課題として浮かび上がり、今後は、既存のハード整備の支援に加えて、よりソフト事業を支援する施策が求められます。
後継者や人材の確保、育成を図る上では、歴史まちづくり法のみの支援では、限界があることから、地域活性化や観光振興に関わる他法令や他省庁との連携によって、この課題の解決に向けた取り組みが必要と言えます。
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