クオリアとは「主観的に体験される様々な感覚」を表する哲学用語です。「〇〇らしさ」や感覚質を意味します。City Qualia Index(都市クオリア指標)は、都市の多様な主体による感性や質感を反映する FIACS が目指す次世代の都市評価指標の名称です。
1855年のパリ万博の際に皇帝ナポレオン3世は、世界中から集まる訪問客に向けて、フランスのボルドーワインの展示に格付けが必要だと考えました。そしてワイン仲買人によってシャトーの評判や市場価格に従って、51のシャトーが第1級から第5級までランク付けされ、ボルドーワインの公式格付けとなったのです。実際はボルドー全体の生産地のうち5%程度しか対象になっていませんでしたが、「格付け」は誰にでも分かりやすい評価として定着したのです。
また LEED認証は世界で広く利用されているグリーンビルディングの認証プログラムです。建築物を4段階に格付けする認証制度で、コストや資源の削減を進めながら、人々に健康に良い影響を与え得ることを配慮し、再生可能なクリーンエネルギーを促進しています。
これらの事例を踏まえてF IACSでは、毎年入れ替わり順位ばかりが話題になる相対評価の「ランキング」ではなく、当該地の着実な改善・努力を促す絶対評価としての「格付け」を志向します。「評価」ではなく「改善」を目的とし、評価対象や指標を明確にする事によって、評価向上に向けた継続的な工夫・活動を促していくことを目指します。
そして利便性や規模などの「ハードによる初期設定」だけでなく、様々なステイクホルダーを巻き込みながら実施されるイベントやコミュニティ・プログラムなどのソフト展開の効果が「幸せ実感」として計測・見える化できるように配慮します。現状ではカフェ・レストラン数やライブハウス数などが想定されていますが、もちろん幸せ実感を支える要素として、より的確な指標を模索し常に更新していく必要があります。その結果として当該地で活動する企業の生産性が高まり、商業施設の口コミ発信力も向上し、公共的なコストが低減するという「社会的な経済インパクト」になるのです。
FIACSのCity Qualia Index(都市クオリア指標)では、ソフトや文化、熱量と誇りが街づくり推進者の企業価値として反映できる仕組みを目指していきたいと考えます。
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