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次世代の沿線価値 ⑨ 卒・通勤志向:遊動創発プログラム

コロナ禍を踏まえた沿線価値を検討する際に重要なことは、従来のように沿線住民の快適・利便を支援する生活サービスだけでは不十分だということです。都心への通勤需要が減少する環境下で、鉄道事業の根幹となる乗降客数を維持するためには、「遊動創発」の仕組みが不可欠なのです。成熟社会においては100万人を集客する遊園地を建設するのではなく、100人が利用する体験プログラムを1万個生まれる仕組みを準備することが有効です。

沿線の街の潜在力を可視化するための視点がKADOKAWAの玉置泰紀さんたちが提唱するメタ観光的な視点「場所の複層思考」です。例えば神田の甘味処「たけむら」は東京都の文化財であるとともに、池波正太郎のエッセイに登場したり、仮面ライダーやラブライブのモデルやポケモンGOのモンスター出現ポイントにもなっています。このようにその場所が持つ歴史やコンテンツを複層的に可視化していくと、街に新しい発見が生まれこれまでにない観光資源がストックされます。さらにこのメタ思考スキルで「面白がれる人」が増えることによって、面白がれる視点が広がり、面白い場所が増え、より多くの人が面白がれる街に変わるのです。これまでツマラナイ街だと思っていた人たちのシビックプライドの醸成にも貢献します。人が変われば街も変わります。この「面白がりスパイラル」が街を活性化していくのではないでしょうか。このプロセスで派生していく様々な「場所のコンテンツ」を編集することで、多彩なツアーやワークショップ、研究会・サークルを形成したり、 AR活用や新たなアイコン設置など魅力向上策も検討されるようになり、これまで無かった集客や来街機会の創出につながるのです。さらにこのプラットフォームを活用して生み出される、郊外の街の魅力を「体系的に編集しコンテンツ化」するエリアブランディングが重要です。小田急沿線の観光情報は①新宿・代々木エリア②世田谷エリア③新百合ヶ丘・多摩エリア④町田・相模原エリア⑤湘南エリア⑥厚木・小田原エリアに分けられて紹介されています。これを一歩進めて「〇〇ミュージアム」や「〇〇大学」に見立てて、参加プログラムを体系化したり、「〇〇甲子園」や「〇〇リーグ」のように対戦仕立てに揃えて行ってはどうでしょうか。これから求められるのは「〇〇がある」という情報ではなく「〇〇というプログラムに参画しませんか」という提案です。それぞれのプログラムへの参加の仕組みと特典を含めた「サブスク・システム」が次世代の定期券サービスになるのではないでしょうか。通勤を前提にしたお蕎麦やコーヒーのサブスクではなく、ニューノーマルをいかに楽しめか「遊動創発」のサブスクが沿線価値の向上につながると考えます。


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