top of page

次世代のアート街づくりの方向性:アートまちづくり ⑦

  • 2022年12月28日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. アートプロジェクトのゴールとして「心の基礎体力」づくり

  2. 持続性あるアートプロジェクトのための方法論



1.アート街づくりのゴールとしての「心の基礎体力」づくり

ヨコハマ・トリエンナーレや別府現代芸術フェスティバル、埼玉トリエンナーレなどのアートプロジェクトのプロデューサーを務めた芹沢高志さんは、「アートプロジェクトのゴールは、地域をアートで飾り、観光客を増やす事では無い」と仰います。

アート街づくりの有力方策であるアートプロジェクトでは、地域に愛着を感じ、アーティストが移住したり、地域の人たちの視野が広がり、意識が変わることなどの効果が現れますが、芹沢さんが想定するゴールは「心の基礎体力を向上させる事」なのです。

基礎体力は、①瞬発力:運動を力強く速く行うための能力、②持久力:運動を長く続けるための能力、③バランス力:運動を調整する能力、と説明されています。

「心」にも同様の基礎体力が必要であり、アートとの関わりを通じて、これを向上させる事が重要だという事です。日常生活のルーティンの中で、減衰しがちな、複層思考・柔軟思考・飛躍思考などを、アートを通じて取り戻す必要があるということでは無いでしょうか。


2.持続性あるアートプロジェクトのための方法論

心の基礎体力を向上させるためには、アートプロジェクトを、一過性のイベントで終わらせないことが重要です。そのための持続性あるアートプロジェクトの方向性について、東京大学出口研究室の提案では、方法論、組織論、空間論の3点で留意すべき方法論が示されています。


A方法論的方向性

  1. アートを「地域の魅力や課題を顕在化させるための表現手法」と捉え、地域のリサーチを踏まえたものとする事

  2. アーティストを「地域の新しい見方を提示する人」と捉え、アート関係者や建築・都市計画系の専門家、地域住民とのコミュニケーションの機会を整備する事

  3. アート街づくりを行う組織は、アートのクオリティコントロールに責任を持ち、ディレクターやキュレーターを中心に、アート作品・活動を地域に向けて咀嚼し、アーカイブを残し共有・発信する事

B組織論的方向性

①地域の文化芸術リテラシーを向上させるため、ディレクターやキュレーターを招聘し、アーティストのサポートと地域住民とのコミュニケーションを図る事

  1. 行政との協働を通じて、地域からの信頼を獲得しながら、適度な自律性を維持する

C空間論的方向性

  1. アーティストと地域住民との、日常的なコミュニケーション拠点空間を設ける事

  2. 地域の空間資源のプラットフォームを設け、アート活動が地域に溶け込むための小規模な機会を分散的に仕掛ける事


これらの方策を駆使することによって、アートプロジェクトに関連して、心の基礎体力が向上し、その人たちが繋がり、新しい動きを生み出す素地になっていきます。

アート街づくりのゴールは、心の基礎体力が高い人たちのコミュニティづくりと言えます。


具体的な施策の方向性として、「アート・イン施策」と「アート・アウト施策」に大別できますので、次回以降で詳細を説明します。

 
 
 

最新記事

すべて表示
第7章 社寺は情感を育てる文化基盤だった 情感資本によるしなやかな社会づくり ⑦

【内容】 1.社寺は、人生に寄り添う場所でした 2.社寺には、人々の情感を育てる作法がありました 3.現代にも、新しい社寺が必要です 1.社寺は、人生に寄り添う場所でした 神社やお寺というと、多くの人は「願い事をする場所」という印象を持っているかもしれません。 初詣では一年の健康を祈り、受験では合格を願い、お盆にはご先祖を供養します。 しかし、よく考えてみると少し不思議です。 お願い事がなくて

 
 
 
第6章 MINYOは暮らしを文化へ育てる 情感資本によるしなやかな社会づくり ⑥

【内容】 1.文化は、特別な日ではなく日常から生まれます 2.MINYOは、暮らしの情感を分かち合う作法です 3.小さな作法が、やがて地域文化になります 1.文化は、特別な日ではなく日常から生まれます 「文化」という言葉を聞くと、多くの人は伝統芸能や美術館、歴史的な祭りなどを思い浮かべます。 もちろん、それらも文化です。 しかし、本当に文化は特別な場所だけで育まれるものなのでしょうか。

 
 
 
第5章 現代のMINYOという発明 情感資本によるしなやかな社会づくり⑤

【内容】 1.私たちは、新しい作法を必要としています 2.MINYOとは、現代の作法です 3.MINYOは文化を未来へ編集する試みです 1.私たちは、新しい作法を必要としています これまで見てきたように、日本文化は長い時間をかけて、人々の情感を分かち合う作法を育ててきました。 民謡は歌を通して、人々の喜びや苦労を共有しました。 祭りは、一年の実りや願いを地域全体で祝い、共に生きる喜びを育て

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page