top of page

方策② マンガを「わかり合う前の道具」として社会に置く マンガ立国論 ⑧

  • 4月1日
  • 読了時間: 3分

―― 説明しないことで、理解が生まれる ――

 

【内容】

第1章 いまの社会には「理解の前段階」が足りていません

第2章 マンガは「説明しないから」役に立ちます

第3章 この方策が社会にもたらす変化

 

 

第1章 いまの社会には「理解の前段階」が足りていません

いまの社会では、制度やルール、政策そのものは整っています。

しかし、多くの場面で「気持ちが置き去りになっている」と感じる人が増えています。

説明はされているけれど納得できない、正しいことはわかるけれど共感できない、という状態です。

会議や討論、説明会、パブリックコメントなど、公共の場では意見や立場をはっきりさせることが求められます。

しかし、まだ気持ちが整理できていない人にとっては、そこに参加するだけで疲れてしまいます。

その結果、「わからない」「関わりたくない」と距離を取る人が増えていきます。

これは、民主主義や行政が間違っているというよりも、意見を言う前の段階が抜け落ちていることが原因です。人は、まず感じて、次に考え、最後に意見を持ちます。その最初の「感じる」段階を支える仕組みが、いまの社会には不足しています。

 

第2章 マンガは「説明しないから」役に立ちます

マンガは、何が正しいかを教えません。結論も出しません。ただ、誰かの一日や、置かれている状況、迷いの時間を描きます。

だからこそ、読む人は安心してページをめくることができます。理解しなくてもいい。意見を持たなくてもいい。ただ感じるだけでいい。

この性質を生かすために、マンガは「説明の道具」として使ってはいけません。大切なのは、社会の中にそっと置くことです。

図書館や公民館、病院や駅、役所の待合などに、静かに読めるマンガを置きます。

解説やメッセージは最小限にします。読んでも読まなくても自由です。

この「自由に放っておく」ことが、公共空間を息苦しくしないための大事な条件です。

学校でも、マンガを教材として扱いすぎないことが重要です。

答えを求めず、感想を強制せず、話したくなければ話さなくてよい時間をつくります。マンガは教えるためではなく、考えが生まれる余白をつくるために置かれます。

地域やまちでは、成功談ではなく、続いてきた日常を描いたマンガを置きます。

説明しないことで、まちは「理解させる場所」から「感じ取る場所」に変わっていきます。

 

第3章 この方策が社会にもたらす変化

この方策の効果は、すぐに数字では表れません。しかし、社会の空気は少しずつ変わっていきます。

いきなり賛成・反対に分かれにくくなる。発言しなくても、その場にいてよいと感じられる。他人の立場を、頭ではなく体感として知ることができる。

その結果、公共の場が「意見を戦わせる場所」ではなく、安心して立ち止まれる場所に近づきます。

また、制度や成功だけでなく、迷いや失敗、名もない日常が公共空間に残ります。

これは、社会が自分自身を理解し続けるための大切な記録になります。

 
 
 

最新記事

すべて表示
第7章 文化施設は街のリビングになる

― ビクトリア州立図書館に学ぶ文化サードプレイス ― 【内容】 1.図書館は「本を借りる場所」ではありませんでした 2.文化施設は人が過ごすための場所へ変わっています 3.街のリビングが都市の文化を育てます 1.図書館は「本を借りる場所」ではありませんでした メルボルンで最も驚いた施設の一つが、ビクトリア州立図書館でした。 もちろん、多くの蔵書を備えた歴史ある図書館ですが、実際に訪れて感じた印象は

 
 
 
第6章 居心地の良い広場には作法がある

― 人は広場ではなく「居心地」に集まる ― 【内容】 1.広場は「イベント会場」ではありません 2.居心地は小さな工夫の積み重ねから生まれます 3.滞在したくなる広場が街を育てます 1.広場は「イベント会場」ではありません メルボルンには大小さまざまな広場があります。 なかでも印象的だったのは、ビクトリア州立図書館前の広場やフェデレーション・スクエアです。 訪れた日も、多くの人が階段に座り、本を読

 
 
 
第5章 水辺は都市最大のサードプレイス

― ヤラ川が教えてくれた「滞在する街」のつくり方 ― 【内容】 1.ヤラ川は「眺める川」ではなく「過ごす川」でした 2.人が集まるのは、水辺ではなく「過ごし方」です 3.日本の水辺も、もっと暮らしに開くことができます 1.ヤラ川は「眺める川」ではなく「過ごす川」でした メルボルンを訪れて驚いたのは、ヤラ川が街の中心的な居場所になっていたことです。 休日になると、多くの人が川沿いを散歩し、芝生に座り

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page