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文化都心マネジメントの位置付けと視点 文化都心マネジメント ④

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2月17日
  • 読了時間: 4分

【内容】

  1. 文化都心マネジメントの位置付け

  2. 先行研究などの総括

  3. 創造産業における知識交流の研究

 

 

 

これまでの検討を踏まえて、文化都心マネジメントの方向性を提示します。


1.文化都心マネジメントの位置付け

  1. 対象と目的

文化都心マネジメントは、文化施設のコンセッション事業を拡張させる活動と位置付けています。

ですからその対象は、文化施設を含む周辺街区を想定します。連携した活動ができる範囲ですから、数十ha程度が対象範囲となるでしょうか。

この対象範囲に対して、文化施設と連携したエリアマネジメント活動(イベント開催、防犯・美化、ルール、情報発信など)を行うことで、エリア全体の価値を高め、新たな都市開発を促すことを目的にします。

  1. スタンスと視点

文化施設と連携した価値向上というと、「集客・観光」が想定されます。もちろん「集客・観光」も狙いますが、それだけではホテルや観光商業施設などの立地可能性を高める程度にとどまってしまいます。

本研究ではより幅広い都市開発に繋げるために、「イノベーション・産業振興」を重視した価値向上施策を検討します。

創造都市論においてクリエイティブクラスとされた人材が、集い、働きたくなるような都市環境づくりを目指します。

 

2.先行研究などの総括

上記の位置付けと目的にそって、先行研究を振り返ってみると、以下のような現状と課題が浮かび上がってきます。

  1. 創造都市論

ジェーン・ジェイコブスに始まる創造都市論は、ハード偏重の文明としての都市論に対するアンチテーゼとしての側面が大きいと考えます。

人的なネットワークやライフスタイルなどのソフト分野・文化的領域を含めた総合的なまちづくり施策が必要になるという方向性は分かるが、「具体的に何をすれば良いのか?」まで、噛み砕かれていないため、都市開発事業者が手がかりにできるものではないのではないでしょうか。

わずかに、リチャード・フロリダが示したGCI における「3つのT」という指標は、定量計測が可能であるが、これも対応指標を改善するために、都市開発事業者が施策を展開できるものでもありません。

  1. 経産省関連の研究

近年 経産省が提示した「アートと経済社会について考える研究会」は、受容サイドの視点で、アートの必要性と課題について提言しています。

ただ結論的には、企業・産業分野では人的資本投資に有効で、地域・公共分野では、シビックプライドの醸成や域外需要の獲得など、従来の各分野で共有されていた知見がまとめられた内容にとどまっています。

「×アートのスタートアップガイドライン」も、地域におけるアートプロジェクトの意義について、シビックプライドの醸成や域外需要の獲得などの効果が、まとめられた水準です。

  1. 既存のエリアマネジメント活動

エリアマネジメント活動は、都市再生特区のプロジェクトを中心にして、都市開発における必須プロセスとして定着した感があります。

ただ内容は、イベントを中心とした賑わいづくりに留まり、独自財源の捻出も難しいことから、核となる都市開発の開業関連費用頼りになっているのが現状です。

大丸有エリアや西新宿エリアで、街路などの公共空間を活用する動きが現れ出しましたが、またイベントレベルに留まっています。

公共空間の活性化拠点となると共に、エリマネ活動の活動原資を捻出するためにも、エリマネ団体が公共空間の占有許可と便益施設の運営主体を担えるようになるべきだと考えます。

 

3.創造産業における知識交流の研究

東京都立大学准教授の山村崇氏は、知識経営研究の第一人者である野中郁次郎氏が、「知識創造に必要な暗黙知・形式知の変換には、知識交流が重要な役割を果たす」と指摘している事に基づき、「知識交流の場」を研究しました。

そして「場」が生み出されるプロセスを、「空間」とそこに関わる人間の「行為」からなる構造として把握されています。

文化都心マネジメントの方策を検討するにあたって、山村先生の知見を踏まえて、知識交流のプロセスとメカニズムを明らかにしていきたいと考えます。

 
 
 

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