アート街づくりを検討する上で、これまでの文化政策を整理しておくことが有効だと思います。
【内容】
時代で変わる「文化」の定義
(東京都の)文化施策の変遷
1.時代で変わる「文化」の定義
まず其々の時代の「大辞典」を起点にして、「文化」の意味の変遷について整理します。
明治〜大正:「文化とは文学・教化の進歩にして世の開明に赴くこと」とされ、文化振興は欧米諸国に追いつくため、国民をまとめ上げるためのツールであり、国威のアピールに利用されました。
戦前:「文化とは学問の進歩と市民の教化」を意味し、国家の脅威として危険視され、思想を有すると見なされた芸術作品、出版物は規制の対象になりました。
戦後:「文化とは技術が進み、生活が豊かになること」とされ、戦時中の規制の反動として、自由化が求められ、経済成長が優先されました。
平成:「集団に共通の価値観及び物心両面にわたる行動様式とその創造物」と定義されます。文化庁が発足し「文化芸術立国」が提唱され、地域や市民の自主性・主体性が重視されるようになります。
このように「文化」は、国威政策から、住民主体の方向に移行していきます。
2.(東京都の)文化施策の変遷
戦後のもう少し具体的な文化施策を東京都に例に整理します。
1960年代までは、東京への人口の集中及び住宅地の郊外化が進みました。これに対応するように、各地域の芸術文化の拠点となる美術館・博物館などの「ハコモノ建設」が求められた時代です。
1970年代以降から、「文化と地域」との関係が政策上で指摘され始め、野外彫刻さらには、パブリックアートの試みが進められます。
2000年代以降は、より文化芸術の地域性を重視して、地域コミュニティ主体のアートプロジェクトが発達しました。
このように、都市における「文化」は、語義、政策、空間が密接に連携しながら、ハコモノからアートプロジェクトへと、変遷してきたことがわかります。
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