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展示スタンスの俯瞰的アップデート ライブミュージアム ⑦

【内容】

  1. 歴史・顕彰に偏重した展示

  2. 俯瞰的な展示スタンスの必要性

  3. 鑑賞者が期待する情報の提供

 

 

1.歴史・顕彰に偏重した展示

野球殿堂博物館や古賀政男音楽博物館には、野球界や大衆音楽界に功績のあった人たちを顕彰するレリーフが並んでいます。

野球の殿堂ホールには、近年の投手では、黒田博樹、山本昌広、高津臣吾、野手では、原辰徳、立浪和義、金本知憲など、往年の名選手のレリーフが並んでいます。

あと古賀政男音楽博物館や早稲田演劇博物館では、古賀政男の自邸のサロンや、新しい演劇を提唱した坪内逍遥の書斎などが、再現されています。

もちろん功績者の顕彰は良いことですし、ミュージアムの伝統を強調する意味はあると思います。

また中心となった人物の創作の場を感じさせることも、有効かもしれません。

ただ、このような「過去」の部分ばかりの展示になってしまうと、少し勿体無いのではないでしょうか。

野球や大衆音楽、演劇などの歴史を踏まえた上での、エポックや未来を見通すような展示を期待したいです。

 

2.俯瞰的な展示スタンスの必要性

以前 「灘の清酒」で有名な兵庫県西宮市の「酒ミュージアム;白鹿記念酒造博物館」に行ったことがありました。

日本有数の酒どころで、「生活文化遺産である酒造りの歴史を公正に正しく伝える」ことを目的に設立されたミュージアムです。

酒蔵をそのまま利用した博物館では、伝統的な酒造工程を模型や映像で紹介され、酒造道具に触れることもできます。

また日本酒に関する古文書・古写真などの歴史資料から、日本画や酒器など幅広く紹介されています。

一方で、新潟大学で日本酒学センターを設立された岸保行先生は、フランス・ボルドーのワイン博物館を訪れた時に、ボルドーワインの歴史だけでなく、ワインと食文化、ワインの文明ギャラリーなど、世界のワイン分化を視野に入れて、グローバルな視点で展示されていることに感銘を受けたを仰っていました。

「モノづくりの苦労話」に焦点を当てがちな日本に対して、「世界の中での位置付けや貢献を語ろう」とする欧米との展示スタンスの違いを感じます。

 

3.鑑賞者の期待する情報の提供

双方の視点が有って良いと思いますが、インバウンドを含めた鑑賞者がより関心を示すのは、地理的、歴史的な位置付けと貢献度合いなどの「文脈」ではないでしょうか。

鑑賞者に、「自分ごと」として、体験を持ち帰ってもらうためには、「展示テーマ」と自分との関係を「肚おちできる文脈」を丁寧に、紹介・説明して行く視点が重要だと考えます。

同様のことは、ライブミュージアムにも言える事で、顕彰や創作現場の再現などの、「過去と内向き」の視点だけでなく、「今及び未来と外向き」の視点での展示が重要だという事です。

自分のことだけでなく、相対的・俯瞰的な視野での評価も重要です。

日本人がよく使う表現に「三大〇〇」があります。日本三景、江戸三大夏祭り、三大花火大会、三大うどん、三代珍味。。。。。 

この表現の妙は、第1位、第2位までは比較的意見が一致するのですが、「第三位」部分に、地元や自分の推しの候補を入れ込まれる事が多いようです。

ランキング形式の表現も、様々なカテゴリーを工夫することで、ベスト3程度には位置付けることができるようです。

展示側の表現したいことではなく、ライブミュージアムに来場した鑑賞者が、どのような「話したくなるネタ」を持ち帰ることが出来るかが、重要ではないでしょうか。

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