【内容】
技術革新による大転換
コロナ禍による大転換
次世代の都市の価値
1.技術革新による大転換
技術革新に伴う「IT 革命」は、3つの革命で構成されるといいます。
BtoC サービスの効率革命:Amazonに代表される流通革命。
検索革命:Google検索により、情報格差がなくなり、みんなプロ並み。
ソーシャル革命:SNS を活用して、誰もが個人で発信できる・
これまでは物理的に一括・集積による「規模(量)の経済圏」でしか経済性が担保できませんでした。
その前提に最も適した居住形態が「都市」だったわけです。
集まって住む、集まって働く、大量集客するから成り立つ「量の経済圏」でした。
ところが技術革新により、デジタル技術を活用することで、個別・分散しても高単価・コスト削減を通じて,企業も個人も利益を獲得できる「質の経済圏」を成立させる事が可能になりつつあります。
「量」ではなく「質」へのアップデートで、働く場、住む場、遊ぶ場が、自由度と選択の幅が広がる事が前提になろうとしています。
2.コロナ禍のよる大転換
シーズ側の要素と言える技術革新による大転換に加えて、2020年以降のコロナ禍が、ニーズ側の意識が大転換します。
コロナ禍によって、下記の3つの価値観が転換しました。
移動・交流の価値転換
リモートワークの体験を経て「オンラインでも仕事がこなせる」という認識がレガシー企業を含めて浸透しました。
その結果「移動に伴うストレスと無駄」が顕在化し、都心部の人流が減少しました。
さらに「会社への出社がイベント化」「会議はオンラインが基本でリアルな対面は特別」という認識が共有されるようになると、これまでの都市の基盤にあった「移動・交流の結節点としての価値」が大幅に減少することになりました。
都市には交通利便性だけではない求心力が求められる時代になります。
集積・集客の価値転換
コロナショック後には「大量集客=不特定多数との密接」に対する違和感が残るようになりました。
これまでのより多くの人・モノ・情報を集積させることによる規模の合理性・効率化を都市の価値としてきた都市開発の論理への根本的なアンチテーゼといえます。
人が人を呼ぶ、賑わい志向の商業施設が不安の対象になるかもしれません。
次の時代には顔の見える適度な規模のコミュニティに対する評価が高まると共に、その構成メンバーとして各自がコミュニティを支える役割と自覚が重視されるようになるのではないでしょうか。
一斉・一律の価値転換
コロナショックを経て朝夕の通勤ラッシュや昼の一斉ランチを始め、盆暮れの帰省ラッシュなどの一斉行動に対して、リスクと非合理性を痛感しているのではないでしょうか。
独自の指針と判断による行動が、快適性と優位性を持つと認識された Beyond コロナ時代には自己裁量の増大とピークの平準化が進行すると考えます。
技術革新というシーズ要素の対応と、コロナ禍を経たニーズ意識の転換が、都市の価値の見直しを迫る事になります。
3.次世代の都市の価値
技術革新とコロナ禍による大転換を経て、リモートワークで仕事をこなし Eコマースで買い物をすませる日常が一般化すれば、「都市」は必要ないのでしょうか?
「利便性」という面だけで考えれば、集まって住む必要は、無くなったかもしれません。
それでは、次世代の都市の価値は何なのでしょうか?
脳科学的には「生きる目的は(高きに向かって進んでいく努力のプロセス=)成長にある」(理化学研究所 故 松本元氏)と言われます。
「分かる=変わる」という前提に立つと、成長には日常的な情報の受発信の量と質とが大きく影響します。
情報の受発信を「可視/不可視」&「頭脳的/身体的」の2軸4象限で分類すると、オンライン環境は「可視&頭脳的」1象限に止まりますから、残りの3象限を網羅できるリアル環境の優位性が明確に浮かび上がります。
リアルの価値は、情報交流にあり、その集積馬である都市の価値は【多様な情報交流】にあると言えます。
単に「便利」だから都市で暮らすのではなく、セレンディピティを含む出会い・発見から信頼につながる、【多様な情報の交流機会】こそ、次世代の都市が共有すべき価値と言えるのではないでしょうか。
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