top of page

地力づくり① ホール・劇場 シン・コンセッション⑧

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2024年3月1日
  • 読了時間: 3分

【内容】

  1. 公共ホールの課題

  2. シン・コンセッションの試算

1.公共ホールの課題

公共ホールの三重苦については、前述したとおりです。

  1. ホール料金の上限

  2. 住民利用枠の設定

  3. 自主企画の開催

これらの制約が緩和されれば、公共ホールの運営は軌道に乗るのでしょうか。

公共ホール運営の最大の課題は、「運営モチベーション」だと考えます。

ただ単に「管理するだけ」であれば、「貸し館」の申し込みが来るのを待っていれば良いのです。

稼働率が高まり、ホール収入が増えても、自分の給料には反映されませんから、出来るだけ手間をかけずに「楽に管理したい」というモチベーションしか生まれようがありません。

「ホールの収入」と「当事者の報酬」とが連動する「民間による運営」だからこそ、稼働率を高めるために、「積極的な営業」をしていくのではないでしょうか。

さらに「積極的な営業」に不可決なのが、「観客データ」です。

どんな人たちが、そのホールのお客様なのか?

もちろん公演内容によって異なるでしょうが、「集客しやすいお客様イメージ」を把握しなければ、営業のしようがありません。

ところが、各ホールは、この「お客様データ」を持っていないのが実情です。

「貸し館」のため、性別、年齢層、客単価、好みの公演ジャンル、観戦頻度などの「お客様データ」は、イベンと主催者{イベンター、プロモーター}に任せきりです。

※正確にはイベント主催者も、販売枚数までしか興味がないため、お客様データを把握している訳ではありません。

「モチベーション」や「お客様データ」も無い状況では、ホール運営のノウハウなど経費節約程度になってしまいます。


2.シン・コンセッションの試算

モチベーションとお客様データを入手出来れば、ホール運営はどのように変わるでしょうか。

  1. 積極営業段階:お客様データをもとに、イベント主催者に対して、アピールすることによって、「稼働率を向上」させる事が可能になります。

さらにお客様データをもとに、「ホール料金を上昇」させる交渉も可能になるのでは無いでしょうか?

  1. シン自主公演段階:お客様データをもとにして、「受ける」アーティストの傾向を把握できれば、アーティスト(事務所、プロダクション)と直接 企画・製作の交渉が可能になります。

多少のリスクはありますが、「本当の」自主公演を主催する事が可能になります。

このような段階での、収入試算を比較してみましょう。

2,000席のホールで、客単価8,000円の公演を実施する設定で比較します。

  1. 従来スタンス:1.8億円(360日×稼働率50%想定、ホール料金100万円想定)

  2. 積極営業スタンス:3.78億円(360日×稼働率70%に向上想定、ホール料金150万円に上昇想定)

  3. シン自主公演スタンス:16.12億円[360日×稼働率70%×(8,000円×2,000人×満席率80%×手数料50%想定)]

積極営業スタンスで、従来スタンスの約2倍、シン自主公演スタンスでは、実に9倍の収入試算になります。

もちろん机上の空論ではありますが、リスクとリターンとを見極めるには有効な数値だと考えます。

さらにお客様データを把握していれば、公演前後の飲食や物販との連動も可能になります。

これこそ「シン・コンセッション」のイメージです。

 
 
 

最新記事

すべて表示
基本的な視点と三つの戦略 AI共創オフィス ⑥

【内容】 第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 第2章 AI時代の競争力を支える「企業文化」という内的OS 第3章 AI×文化の共創拠点としての企業オフィスとサテライトオフィスの連携     第1章 AIと分散ワークがもたらす働き方の地殻変動 生成AIの進化とリモートワークの定着により、私たちの「働く場所」の概念は大きく変わりました。 業務の多くはオンラインで完結でき、駅ナカや自宅、

 
 
 
AI時代における企業オフィスの課題と方向性 AI共創オフィス ⑤

【内容】 第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 第2章 意思決定の“軽さ”がもたらす成長の喪失 第3章 “唯一無二”の判断軸を生むのは、企業文化である     第1章 AIが生む「標準答案社会」と思考の軽量化 現代は、AIの進化とリモートワークの普及によって、私たちの意思決定のあり方が大きく変化しています。 とりわけAIは、「優秀な常識人の標準答案」とも言うべき、整合的で倫理的かつ網羅

 
 
 
オフィス研究の変遷 AI共創オフィス ④

【内容】 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の時代(1900〜1950年代) 第2章:人間中心のオフィス ― 働きがいと組織文化の時代(1960〜1980年代) 第3章:知識と多様性の時代 ― IT革命と新しい働き方(1990〜2010年代)     ここでオフィスの進化を先導してきた「オフィス研究」の変遷について、お整理しておきます。 第1章:管理のためのオフィス ― 生産性と効率の

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page