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原始社会に学ぶ  井口 典夫(青学大教授・FIACS理事)

更新日:4月29日

 コロナ禍で不要不急の外出が制限されてから1年以上が経ちました。「人との接触を8割無くすこと」が目標とされ、出勤は週1日、友人との接触はZoomとなり、対面するのはほとんど家族のみという「新しい日常」が始まりました。その後、顧客との会議は対面じゃないとマズイとか、友人たちとの語らいはリアルじゃないと楽しくないといった意見が聞かれ、実際コロナの第一波が下火になった時はGo To 事業の話題なども盛り上がりました。しかし第三波の爆発的な感染拡大で、もう以前の日常には二度と戻れないことを思い知ったのでした。世界は完全に変わったのです。

 適応力が高く柔軟な人々は早速アタマを切り替え、「古い日常」の酷さを反芻することになります。都市は通勤地獄、劣悪な住環境、高い物価、犯罪、事故、防災など不安要素が山積みです。一方で家族の交流、自然の素晴らしさなどを再確認し、これこそ人間らしい生き方であるとの思いを一層深めることにもなりました。結局、リアルに必要なのはスーパー・コンビニ、運動のための近隣公園、病院だけなのでした。仕事やエンタメは在宅で十分。面倒くさい上司や取引先とリアルに会う必要はない。余計な公共投資はいらないので税金は安くなる。

 健康寿命80年の中でいかに楽しく生きるかがすべてです。われわれはほとんど誰にも会わなくて済むようになった人生の素晴らしさをいま噛みしめています。そこでは自宅と野山、家族と村というコミュニティのみが説得力を持つのです。仮にリアルな街について何か考えたいとする場合、そうした「原始社会」に学ぶ姿勢が不可欠と考えます。

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