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創造都市論の振り返り 文化都心マネジメント ②

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2月12日
  • 読了時間: 4分

【内容】

  1. 文明から文化へ

  2. 創造都市論の変遷

 

文化都心マネジメントを検討するにあたって、「創造都市論」などの先行研究について整理します。

 

1.文明から文化へ

創造都市論の書き出しは、いつも「文明から文化へ」から始まるようです。

失われた30年への対処、脱工業型社会への乗り遅れ、創造産業の育成、そのための創造都市づくりという流れです。

もう少し掘り下げてみると、

  1. 「失われた30年」:バブル崩壊の1990年初頭から2020年代初頭までの、約30年間を「失われた30年」と言われます。

高度経済成長を遂げた後、バブル崩壊後の不動産価格や株価の大暴落を受けて、銀行や証券会社などが倒産し、多くの企業でリストラやコストカットが行われました。その後も2008年にはリーマンショック、2011年には東日本大震災が起こり、デフレ経済は大打撃を受けます。

この30年間日本の GDP は、5兆ドル前後で推移しますが、同時期にアメリカは、24兆ドルと日本の5倍近くになり、中国は2008年に日本の追い抜いた後、15兆ドルと約3倍に達しています。

  1. 脱工業社会への乗り遅れ:日本の長期低迷の原因は、 IT産業をはじめとした脱工業社会の波への乗り遅れだとされています。

ものづくりに固執し、GAFAのような情報サービス企業が育たなかった為、生産性は向上せず、一人当たり GDPは、3,2万ドル(1992年)から3.4万ドル(2023年)とほぼ横ばいで、世界32位と先進7か国で最低水準にとどまっています。

  1. 創造産業の育成:欧米では1980年代から、音楽、舞台芸術、映像、ファッション、デザイン、メディア、広告、ゲーム、ソフトウェアなどを「創造産業」として注目し、成長を促そうとしています。

  2. 創造都市づくり:創造産業従事者は、単に住む、働くだけではなく、多様な文化的アメニティが享受できる「創造都市」を拠点にするため、「文化芸術を核にした創造都市づくりが必要だ。」といった論調になります。

 

2.創造都市論の変遷

創造都市の研究・提案について一般には、2000年のチャールズ・ランドリーから始まりますが、創造都市を「文明から文化への流れ」と捉えると、その源流として、ジェーン・ジェイコブスの文献に行き当たります。

名古屋工大准教授の伊藤孝紀氏の文献を引用します。

  1. 都市の経済学(1986年:ジェーン・ジェイコブス)

経済発展のためには、創造的な都市経済が必要であり、そのためには小規模企業のネットワークによるイノベーションを重視すべきだと指摘しています。

  1. 創造的都市(2000年:チャールズ・ランドリー)

都市基盤としての施設と人的ネットワークといった創造的環境の要因を抽出し、文化による都市問題の解決を提案しています。

  1. クリエイティブ資本論(2002年:リチャード・フロリダ)

都市の成長を促すクリエイティブ産業を定義し、これを牽引するクリエイティブクラスの台頭を指摘しています。

さらにそれらの人材が好む街区やライフスタイルに着目し、 GCI (グローバル・クリエイティビティ・インデックス)を開発し、「3つの T(タレント:才能、トレランス:寛容、テクノロジー:技術力)」による定量化を試みています。

  1. 創造都市と日本社会の再生(2004年:佐々木雅幸)

創造都市を「科学や芸術における創造性に富み、同時に技術革新に富んだ産業を備えた都市である」と定義しています。

その条件として

ⅰ自己革新能力に飛んだ都市経済システム

ⅱ教育文化施設をはじめ創造支援インフラが整う

ⅲ生産と消費のバランスがとれた発展

ⅳ都市住民の創造力と感性を高める都市景観

ⅴ狭域自治と広域行政の両立

などを提示しています。

イタリアにおけるボローニャ、日本では金沢を創造都市として高く評価し、知識や情報が中心の都市経済における、芸術や文化による都市再生を提唱しています。

  1. 文化と都市の公共政策(2005年:後藤和子)

クリエイティブ産業の創造と流通の側面に、都市政策や産業組織に着目しました。

契約と産業組織から見る想像と流通の関係性や、産業組織と都市空間の関係性及び、税制による都市政策などを提示しています。」

 

都市開発関係者に強い影響を与えたのは、リチャード・フロリダによるクリエイティブ都市論ではないでしょうか。

 
 
 

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