共感人口の参考になる関係人口の創出方策については、明治大学の小田切徳美教授によって「人」、「場」、「仕組み」の観点から整理されています。
「人」は地域の人と関係人口を結びつける役割を果たす「関係案内人」や中間支援組織等のことで、拠点の場所に関わらず都市側及び地方側の両方の視点を持ち、地域を客観的な視点でみることが可能な人であり、偶発性を装いながら必然性をデザインする場の「編集人」とされています。関係案内人が有効に機能するためには、経済的な安定性の確保を含め、モチベーションを保つ仕組みが必要です。地域において地道に活動している人を発掘し、キーパーソン同士のネットワークを構築することが有効と提言されています。「場」は地域の人と関係人口の接点が生まれ、活動の息づかいを感じることができる「関係案内所」のことで、誰もが自由に立ち寄ることが可能で、外部を含めた不特定多数の人が集まることにより接触率が高まる場所になります。カフェ、商店、ショッピングモール、駅などが関係案内所になる可能性があります。「場」については完成されている必要はなく“関わりしろ”が残っていることが重要な要素であり、既存ストックを有効活用し、地域の人と関係人口が「連携・協働して再整備する」といったプロセスも有効と言えます。「仕組み」とは地域の人と関係人口の信頼関係を醸成していく機会のことで、SNS上に形成されるオンラインコミュニティやオンラインイベント等が、地域を訪問することのハードルを下げる有効な手段となるようです。地域の個性を引き出すための情報の編集力や、行動の変容を促すためのデザイン性と物語性を持ったコンテンツが作成できるセンスが重要になります。さらに地域との関わりを継続したい理由として、「楽しい、リフレッシュできる」という声が多いことから、地域との関わりは決して義務的なモノだけでは継続されないと推測されます。 関係人口は訪問先の地域活力の維持・向上に資するとともに、地域を訪問する側にとっても「ウェルビーイング=よく生きるため」の手段として、非常に有効なものであることを認識する必要があります。
これらの知見をもとに、次項以降で都市にける「共感人口」について考察したいと思います。
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