【内容】
ステーション F
東京イノベーションベース
CIC 東京
東急不動産のスタートアップ支援施策
国内外の代表的な先行事例を整理してみます。
1.ステーションF
フランス政府は2013年に包括的なスタートアップ振興策「フレンチテック」を始動させます。
2億ユーロのアクセラレータ基金の設立や国内ハブ拠点の設定、地域分散型クラスターとネットワークの推進などの施策が実施され、10年間に31社のユニコーンを含む、2.5万社のスタートアップ、直接・間接雇用者数110万人という成果を挙げています。
2017年に開業したステーションFは、フランス政府の方針とも重なり、今や世界で最も有名なスタートアップ支援施設と言えます。
フランスの孫正義とも言われるグザヴィエ・ニール氏が、「フランスのスタートアップのハブを作る」という構想のもとに、私財を投じて、セーヌ川沿いの旧国鉄貨物駅舎をパリ市から2億5千万ユーロで購入して、ステーションFを開業しています。
総面積34,000㎡、1000社5000人ほどの起業家が在籍しています。
施設規模や1000席に及ぶフードエリア、キッズエリアなどの充実した設備が注目を浴びるステーションFですが、施設内には公的な事務手続きを相談できる行政機関の職員が常駐するとともに、常時30社ほどのベンチャーキャピタルが窓口を設け、資金調達に関するコンサルティングに対応しています。
ステーションFの特徴として、「入居方法」と「プログラム運営」が挙げられます。
「入居方法」:起業家はプログラムに選抜されることで、プログラム実施期間中の入居が可能になるという仕組みです。「大学」としてのステーションFが提供する「学部(プログラム)」に所属し、半年から2年程度のプログラムが終了すると、「卒業」するというイメージです。
「プログラム運営」:各プログラムはパートナー企業ごとに、独自のマッチング・選抜を行い推進していきます。フェムテックやサイバーセキリティ、ゲーム、フィンテックなど、様々なテーマに関する年間600以上のプログラムが用意されています。
パートナー企業としてMicrosoftやmeta社などのテック企業や LVMHグループなどが拠点を構え、そのオフィス収入と起業家のデスクあたり月額200ユーロの使用料とが、ステーションFの収益源になっています。
2.東京イノベーションベース(T I B)
TIB は、東京都が運営し、2024年5月に東京有楽町駅前に開業した5,500㎡の国内最大級のスタートアップ支援施設です。
ステーションFなどを参考にしたと考えられ、月に一度の公式ピッチイベントの開催や交流サロン、3Dプリンターやレーザーカッターなどの試作機械、テストマーケティングのためのショップが整備されて、会員登録および利用は原則無料となっています。
スタートアップ支援などを目的としたイベント・プログラムなどの企画運営を行うパートナー企業として130団体以上が名前を連ねています。
T I Bの運営及びイノベーションネットワークの構築予算として、2024年度に30億円超が計上されています。
また2025年開業予定の「ステーションAI:愛知県」も、延べ床面積23600m2と国内最大級の規模で、スタートアップ支援拠点作りを目指しています。
3.CIC(ケンブリッジ・イノベーション・キャンパス)東京
民間施設では、虎ノ門ヒルズにある日本最大級のスタートアップ集積基地CICがあります。
CICは欧米を中心に世界7都市の拠点を構えているイノベーションコミュニティで、森ビルが梅澤高明氏(ATカーニー日本法人会長)を会長に迎えて日本法人を設立しています。
ビジネスタワー15階16階の2フロア6,000㎡に及ぶ施設内には、大小様々なサイズのオフィススペースや会議室に加え、キッチン・イベントスペース、ウエルネスエリア、ゲームエリアなどが点在しています。
様々な外部企業と連携することで、毎週木曜日にイベントや各種プログラムを運営しています。
4.東急不動産のスタートアップ支援施策
東急不動産のスタートアップ支援施策も参考になります。
「シブヤの価値最大化」を目的にさまざまな施策を展開していますが、スタートアップ支援に向けて下記の4つの活動を行っています。
場の提供:世界的なベンチャーキャピタルである「Plug&Play」と連携した施設を中心に、広域渋谷圏6ヶ所でVCとスタートアップ企業とが同居する「GUILD」という施設を展開しています。
出資:VCへのLP(リミテッド・パートナー)出資15件、CVCファンド1号50億円を実施しています。
行政との連携:海外のVC誘致に向けて、渋谷区、GMO、東急、東急不動産の4社で、「シブヤ・スタートアップス株式会社」を設立しています。
グローバル化:海外VCへの出資拡大、世界目線を体験できるグローバル VCとの連携イベントの開催 MITエコシステムとの共創
上記のような先行事例から分かるのは、単に施設におけるハード・ソフトの提供だけではない、エコシステムの提供が必要だということです。
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