top of page

元研究の整理と確認 日本バリュー都市 ②

  • 執筆者の写真: admin
    admin
  • 2025年12月24日
  • 読了時間: 4分

【内容】

第1章 調査内容とアプローチ

第2章 主な知見と発見

第3章 提言と政策的な示唆

 

今回の検討の元になっているのは「Japan Brand Image Research」(令和4年度 海外需要拡大事業/国際競争力強化に向けた日本ブランド力に関する調査研究事業)で、経済産業省(METI)が事業主体であり、クールジャパン政策課のもとで企画・実施されたものです。以下に要点を整理します。


第1章 調査内容とアプローチ

この調査は、海外都市における日本ブランドへの評価を「生活者の視点」から深く理解し、今後のブランド価値拡大のための知見を得ることを目的としています。

具体的には、ロンドン、ベルリン/パリ、ニューヨーク、シンガポールという世界の主要都市5拠点を対象に、専門家インタビュー(エキスパート)、ユーザーヒアリング(現地生活者)、現地施設の観察(サイトビジット)、SNS・オンライン上のビジュアル調査などを組み合わせて実施されています。

さらに、定性調査の成果を基に、将来的な量的調査(アンケート等)で測定すべき指標・調査項目も提案されており、今後の政策やマーケティング展開の設計の基盤として位置付けられています。

調査方法では、各都市での専門家へのインタビューに加えて、22名の現地ユーザーに対するヒアリング、17拠点の日本文化発信施設の現地視察が行われました。

さらにオンライン調査やSNS調査を通じて、「Kawaii(かわいい)」「Kintsugi(錆びを生かす美学)」「Japandi(和×北欧)」などのキーワードがどのように受け止められているか、視覚的イメージ・検索トレンドも分析されています。


第2章 主な知見と発見

2-1 日本ブランドの国際的評価

Ipsos 社のNation Brand Index(NBI)2023年版では、日本はこれまで2位だったランキングを上げ、初めて総合1位になりました。「信頼できる国」「他にない独自性」が多くの国際都市で評価されており、ブランド価値のコアとして確認されています。

2-2 日本ブランドから受け取られる価値の四象限

調査結果から、「癒し (Calming)」「遊び心 (Playful)」「健康的な暮らし (Healthy Living)」「丁寧な暮らし(Careful Living)」という四つの価値軸が抽出されました。

これらの価値は、日本文化を“見る・知る”入口を超えて、生活の質や体験の深さに関わるものとして海外で強く共感されていることがわかりました。

また、「入口(アニメ・マンガ等)→興味を持つ → 共体験を通じて関心深化 → ブランド理解・支持」という、いわばエンゲージメントの段階モデルも整理されています。

ここでの「共体験(co-experience)」がブランド定着の重要な契機であることが、現地ユーザーの語る体験から明らかになっています。

2-3 キーワードと視覚文化の拡散

「Kawaii」「Kintsugi」「Japandi」「Umami」「Ikigai」など、日本固有の概念が、検索トレンドやInstagram等のビジュアル投稿を通じて明確に拡散していることが、この調査で確認されました。

これらの語彙は、ただのエキセントリックなフレーズではなく、生活の中で体感・共感される文化の接点となっており、将来的なブランド価値の拡張余地を示しています。


第3章 提言と政策的な示唆

この報告書は、定性的調査の段階から、今後取るべき政策・実務対応の方向性を示しています。以下が主な提言事項です。

  1. 量的調査の設計と実施

    定性的に得られた四つの価値軸や共体験プロセスを、アンケート等で定量化することで、ターゲットセグメントごとの優先順位や政策・企業活動の効果を測定可能にすることが求められています。

  2. ブランド価値を育成するプラットフォームの強化

    現地施設、文化発信拠点、オンラインチャネルなどを通じて、「入口」と「共体験」が連続する環境を整備すべき、との指摘があります。これにより、一過性ではないブランドへの関与が可能になるからです。

  3. ビジュアル・キーワード戦略の活用

    流行しているキーワードを用いたデザイン、マーケティング、施設演出などを整合させ、視覚的にブランドが伝わる接点を増やすこと。特にInstagram等のSNSでの受け止められ方を意識した文化発信が有効とされています。

  4. 政策・企業の協調と支援の枠組みづくり

    政府(例えば経済産業省クールジャパン政策課)と民間が協力し、文化創造産業の海外展開を支えるプラットフォームや資金・制度的枠組みを整備すること。例えば日本文化発信施設の拡充、越境ECの制度整備、海外ファンとの関係性構築などが含まれます。

  5. ブランド体験の持続性と文化的深みの確保

    一時的なプロモーションにとどまらず、文化体験が日常に浸透するような施設・プログラム設計、住民との共創、地域のアイデンティティを反映したデザインなどを重視すること。ブランドの浅い理解ではなく、深い共感と忠誠を育むことが進められています。


本シリーズでは、これらの調査研究の成果をもとに、日本の都市開発への展開を検討します。

 
 
 

最新記事

すべて表示
今なぜマインドメイキングなのか マインドメイキング ①

【内容】 第1章 「機能の街」から「意味の街」へ 第2章 「共感経済」が都市を動かす時代 第3章 “心の拠点”としての商業施設へ   第1章 「機能の街」から「意味の街」へ これまでの都市開発や商業施設づくりは、主に「機能」と「収益性」によって評価されてきました。 交通の利便性、賃料効率、テナントミックス、集客イベントなど、数値で測れる成果を積み上げることが成功の証でした。 しかし、社会が成熟し、

 
 
 
日本バリュー化の効果 日本バリュー都市 ⑩

【内容】 第1章 都市の魅力の可視化と差別化効果 第2章 エンゲージメントと関係人口の拡大効果 第3章 持続的な収益化とデータ循環による進化効果   第1章 都市の魅力の可視化と差別化効果 ブランド価値化の第一に期待できる効果は、都市の魅力が多層的に可視化され、他都市との差別化が明確になる点です。 従来の都市開発では、商業施設や交通利便性といった「機能の充実」が重視されてきましたが、それだけでは長

 
 
 
方策3:“モノより体験”の事業モデル化+データ循環 日本バリュー都市 ⑨

【内容】 第1章 都市開発における「体験価値」へのシフト 第2章 事業モデルと具体施策 第3章 KPIとデータ循環による持続性   第1章 都市開発における「体験価値」へのシフト 近年の都市開発や観光戦略においては、「モノ」中心の消費から「体験」中心の価値提供へと大きく軸足が移りつつあります。 背景には、内閣官房が示した「New Cool Japan Strategy 2024」が掲げる「モノより

 
 
 

コメント


Copyright © FIACS, All Rights Reserved.

bottom of page