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企業活動への価値提供 シンコンセッション ⑫

【内容】

  1. 企業スポンサード事例

  2. スポンサードによる価値共創

  3. 企業活動への価値提供

1.企業スポンサード事例

①福岡ソフトバンクホークス

福岡ソフトバンクホークスは、2019年度に324億円を売り上げて、日本で最も稼げるプロスポーツチームになっています。

これは、スポーツビジネスのメッカである欧州サッカークラブと比べても16位に位置する売り上げ規模です。(因みに2022年の1位はマンチェスター・シティ:約1014億円)

売り上げの内訳は、下記の通りです。

①マッチデー収入:47%(約152億円)。年間265万人を動員し、チケット、グッズ、飲食収入など、平均客単価は5,700円になります。

②コマーシャル収入:44%(約142億円)。スポンサーシップやライセンシング収入など

③放映権:9%(約29億円)

142億円に上るコマーシャル収入は、ビジョン収入はもちろん、様々な特定客席ネーミングやファウルポール(地元のマルタイラーメンがスポンサーになっています)などのネーミングライツ、さらに各種PRイベントなど250種類以上の協賛・広告・看板を商品化した成果と言えます。

観客動員数では巨人や阪神に及ばず、頻繁にテレビ中継がある訳でもないのに、142億円ものコマーシャル収入を得ているPayPayドームは、年間265万人を価値化して、稼いでいるということになります。

スポンサーには、単なるロゴ掲出だけでは無い特典も用意されています。

ビジネス利用に対応したスーパーボックス、専用エントランスやラウンジが整備され、スポンサープランによっては、試合開始2時間前から利用でき、会議後に食事会やバルコニーからの試合観戦が可能になっています。

このようにPayPayドームは、ビジネスでの接待や親睦会、企業の福利厚生に活用できるtoB対応の特典を用意し、収益化を図っているのです。

②キッザニアのスポンサード

子ども達に「本物に限りなく近い職業・社会体験」の機会を提供するエディテイメント施設「キッザニア」も、スポンサー制度を活用しています。

現在国内3箇所に展開するキッザニアは、予約制のため各施設とも、年間80万人30億円程度を上限に運営されていますが、そのコンセプトの秀逸さと一業種一社の占有型協賛で、東京47社、甲子園では49社、福岡は34社のスポンサーを集めています。

当初想定された収益構造は、入場料50%、スポンサー収入30%、グッズ収入20%でした。

スポンサー企業はパビリオンの初期投資(2,000万円〜1億円)や維持コスト(毎年初期投資の60%程度)などを負担しています。

想定通りであれば、18億円程度のスポンサー収入になります。

体験シナリオや設備・ユニフォームなどは、スポンサー企業の方針を踏まえて制作し、企業ロゴを冠したファサードやユニフォームを着用してフランド訴求しています。

企業にとっては、CSRや SDGsなどによる企業価値に向上はもちろん、ブランドロイヤリティの確立や企業メッセージの訴求につながるようになっています。

文化系集客施設のtoB戦略を考える際に、メディア掲出はもちろん、様々な特典を用意できるのかが、価値化の差になるのでは無いでしょうか。

2.スポンサードによる共感価値

企業がスポンサードする狙いは、ファンとの共感価値にあります。

一般広告が一方的に発信されるのに対して、スポンサード広告は、コンテンツやチームを「自分ごと化」しているファンと共に、支援する立場で発信されるため、「共感」というアドバンテージを持っています。

先述した、PayPayドームは300万人で140億円、キッザニアは80万人で18億円のスポンサー収入が推定されます。

それぞれ1人当たりの広告単価は「1400円」、「670円」の試算になり、一般的な屋外広告想定単価「15円」の40〜90倍に相当します。(1日50万人=年間1.8億人が行き交う、渋谷スクランブル交差点の年間広告価値は21億円)

もちろん単純な比較は無理があるかもしれませんが、一般の通行人への広告露出とファンへの広告露出の訴求価値の違いを考える参考数値になるのではないでしょうか。

さらに SNS時代になり、クチコミ効果が重視されるようになると、ファンとの共感価値はさらに重要な要素になります。

口コミは「共感情報の発信率30%」&「購入影響力40%」と言われ、どんどん伝播・波及することによる好感度向上は、スポンサード企業の価値向上に非常に有効だという事です。

今後、顧客の購買行動などに関する分析手段が、一層進化すれば、このファンの心理構造と効果測定が、より詳細に解明・数値化されていくのではないでしょうか。

3.企業活動への価値提供

企業活動への価値提供機会として、文化施設に活用するには、「定番となる展覧会(コンテンツ)」で、各施設独自のファンを醸成して行く視点が必要です。

展覧会や演奏会の展示・発表会場だけでなく、「街の知縁サロン」としての自覚と活動で、ファン(知縁コミュニティ)を醸成して行くのです。

具体的には下記の3つの活動を統合することになります。

①自主発信活動:独自のコレクションを展開するだけでなく、現代社会の課題・関心事である「環境」や「教育」などを絡めたコンセプトを設定し、YouTubeなどを含めて編集・発信します。

②知のサードプレイス活動:コンセプトに関心を持つ人(特に退職したシニア層)やサークルに、共同研究などの名目で、役割と発信機会を提供することで、居場所(サードプレイス)化します。

③企業との共創活動:コンセプトに沿って、企業のCSV活動を企画推進していきます。

※「関心や共感」が重視される成熟社会では、企業との共創活動を通じたスポンサードは、単なる社会貢献ではなく、企業ブランディングやセールスマーケティング、人材獲得などの面で、非常に有効な手段になると考えます。

この活動を定常化することで、知縁コミュニティとして施設のファン(toC)を増やし、これを支える企業(toB)の輪を広げて行くのです。

文化施設のスポンサードを導入するには、BtoCtoBの事業構造を機能させる必要があります。

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