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今 なぜ「健康経営ビルディング」なのか? 健康経営ビル ①

【内容】

  1. 「健康づくり」を唱えるけれど。。。

  2. 健康意識の低い日本人

  3. 「健康経営」への関心を活かした都市開発

 

 

1.「健康づくり」を唱えるけれど。。。

個人的な関心だけでなく、「社会的な課題としての健康」が、意識されるようになって久しいと思います。

超高齢社会が進行し、医療・介護などの社会保障費が膨らみ続け、2025年には65兆円に及ぶと予想されています。

このまま膨張を続ければ早晩、財政が破綻する事は、火を見るよりも明らかです。

診療報酬や薬価格の見直しなどの微縫策だけでなく、保険制度の見直しなど、根本的な対策が不可避な状況です。

とはいえ、抜本的な改革には時間が掛かりますから、並行して、とにかく医療・介護費用を抑制するため、国民が「健康」を維持することが重要で、政府が強く奨励している訳です。

国民の健康に関しては、2000年から「健康日本21」という施策を元に、「一人1日あたりの歩行数を1000歩増やす」ことを目標にして、さまざまなガイドラインやその効用を示して来ましたが、20年を経て、却って1日あたりの歩行数が減少して来ているといいます。

日本人の約七割は、「健康無関心層」と言われ、健康になるための方法や効用を示しただけでは、普及が難しそうです。

医療費抑制のためには必須の、「健康づくり」なのですが、その普及方策を見直す必要があるのではないでしょうか。

 

2.健康意識の低い日本人

FIACSヘルスケア部会では、2022年度に「健康まちづくり」をテーマに検討しました。

その中で中央大学教授の真野良樹氏に指摘されたのが、「日本人は、健康への直接投資を嫌う傾向にある」ということでした。

経済協力開発機構(OECD)による調査研究において、各国の主観的健康度(自分を健康だと思うかどうか)で、日本はOECD加盟34ヵ国中で「最低レベル」という結果になっていますし、女性のがん検診(マンモグラフィー)の受診率は、4割弱とこれも先進国の中で最低です。

国民皆保険の制度が整った日本では、病気になっても軽い負担で様々な治療を受けることが可能ため、「日常的に健康に気を遣う(=投資する))よりも、「病気になってから治療すれば大丈夫」という感覚が一般的なのです。

年齢を重ねるにつれて、必要になる医療費も嵩むようになります。

「厚労省:平成30年度医療保険に関する基礎資料」によると、75〜79歳の医療費は年額77万円(月額6.4万円)であり、90〜94歳では年額113万円(月額9.4万円)にもなっています。

しかし、健康保険及び高額医療制度により、自己負担額は14.4万円(月額1.8万円)が上限で、それ以上は社会(=国・税金)が負担する仕組みになっています

ですから「効き目の弱い市販薬を薬局で自費購入するよりも、病院で診察・処方されて、効能の強い薬を手に入れた方が得になる」や、「忙しい中で健康診断や人間ドックに行くのは面倒だ」という意見が罷り通るようになるのです。

「国民皆保険に甘えている」状況で、健康無関心層と言われる七割の人たちにとって、「健康づくりは他人事」でしかないと言えます。

 

3.「健康経営」への関心を活かした都市開発

そんな中で、注目を浴びているのが「健康経営」という考え方です。

「健康経営」は、健康に対するインセンティブを、「個人」ではなく「法人」に持たせる手法で、急速に普及しています。

詳細は後述しますが、厚労省ではなく経産省と組むことで、法人にとって従業員の健康づくりを、「コスト」ではなく「投資」という視点の、企業行動にシフトすることに成功しています。

今回検討する「健康経営ビルディング」は、この視点をさらに拡張し、企業が拠点を置くビルディングを舞台にして、健康経営を下支えするソフトとハードを提供することで、「健康経営」の普及を後押ししようというものです。

「健康経営ビルディング」は、成熟ニッポンに不可欠な都市施設のガイドラインになると考えます。

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