【内容】
アート街づくりが「持て囃される」背景
アート街づくりにおける「ゴール」の必要性
1.アート街づくりが「持て囃される」背景
「アートを生かした街づくり」が標榜されて久しいのではないでしょうか?
国レベルでは、文化庁は2009年に「文化芸術立国」を日本の文化面での目標として掲げました。高度経済成長期における工業の発展から、成熟した日本が、国際社会において存在感を示すための方策として、文化芸術の活用・発信が求められています。
自治体レベルでは、文化芸術活動に、人々の交流を深め、価値観が多様化した都市や地域の連帯感を育む効果が期待されています。
企業活動においては、既存事業の延長だけでは成長が難しく、常に新規事業の開発が求められ、イノベーション機会としてのアートの活用が模索されます。
生活者においても、ワーク&ライフスタイルのバランスが求められ、物質的だけでなく、精神的な豊かさが求められています。さらに、 SNS を通じた一億総情報発信時代も、アートに対する関心が高まる背景になっています。
そしてアーティストにとっては、アート市場が十分に育っていない日本において、アートプロジェクトが、重要な活動原資になっていることも事実です。
このように様々なレベルの背景が有って、街づくり手法としてアートに期待を寄せ、都市部や地方を問わず、様々なアートプロジェクトが開催されています。(2016年から2018年の間で、開催期間が1ヶ月を超えるものを抽出しただけで、23カ所あり、1ヶ月未満のものを加えると相当数に登ると推察されます。跡見女子大・磯貝政弘教授)
全国的にアートを用いた街づくりが展開されているのです。
2.アート街づくりにおける「ゴールと方法論」の必要性
芸術祭、ビエンナーレ・トリエンナーレなどの呼称で、アートプロジェクトが、まちづくりの有効な手法として、行政や地域コミュニティに受け入れられるようになってきました。
しかし、その目的は地方創生、観光振興、空き家対策、地域活性化など様々です。
近年 各地で展開されているアートプロジェクトの多くは、単なるイベントの域を出ない、一過性のものや、地域独自の文脈とは関係の薄い金太郎飴的なものがほとんどで、地域に根付き、次の活動・創造、文化レベルの向上に寄与しているとは言い難い状況です。
昨今のアートプロジェクトを、「単に賢そうなイベントに終始している」と懸念するアート関係の有識者もいます。
アートプロジェクトの「ゴールと方法論」について、議論・整理されていないのでは無いでしょうか?
もう街の表層を飾るだけのアートでは、公共予算の継続が認められない状況です。民間にもバブル期の CSRや社会貢献のように、協賛する余裕は無くなっているのです。
街づくりには20年必要といわれる中で、一過性のイベントではなく、アート街づくりの方法論の整理が必要です。
このような認識をもとに、今シリーズでは「アート街づくり」を検討します。
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